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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第16章 不完全感覚Drummer
239/572

レコ、ベーシストは奥が深い


「ありがとうございました!」


 時間になり、ドラムのレコが終了した。7分前までの彼女は切羽詰まっていて真っ直ぐに自分の演奏と向き合っていたけど、最後の演奏で満足したのか笑顔だった。確かに一番最後に録った音は今日一番のものだったしプレッシャーに押し勝てていたけど、まだ本気の半分も出せてないように私は感じた。


「音源は最後のでいいですか?」

「はい、それでお願いします!」


 録った音源をそのまま取り込み、不備がないことがわかったら完了。この音源はあとの2人のレコに使用することになっている。

 それにしてもドラムの彼女、初めて見る演奏ではあったけど、不安定なところも多かったし、何よりその場の空気に押されがちになっていた。勿論私も人のこと言えるような立場ではないんだけど、聴く側としての考えはあった。

 思ったことがあっても、それをスタッフが相手に伝えるのはNG。だから精一杯頑張ったドラムの彼女に励ましの言葉を掛けることにした。


「お疲れ様でした、これからも頑張ってね」

「は、はい!ありがとうございます!」


 うっすらと制服から汗が滲んでいて、いかに彼女が緊張していたかがわかった。こんなに頑張った人のことを指摘しようなんて思わない。さっきよりもずっと良い演奏が出来ることを私は期待しているし、これから出来上がる一つの曲がどんなものになるのか楽しみだな。


「そしたら、次はベースの準備お願いね」

「はい!」


 洋美さんがドラムマイクの電源を切り、私に指示を出す。


「よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

「えっと、私、自分で出来ますので、準備にヘルプは要らないです」

「え、そう...、なんだ」


 ヘルプは要らない、そう言われたから思わず戸惑ったけど、相手はお客様だ。要望通りのことをしないと接客以前の話になってしまう。

 仕方なく、私はベースの彼女を見守ることにする。器用な手先でエフェクターを設置、今回はライン録りでやるみたいだからDIも使ってより良い音にしようって思ってるんだね。

 エレキベースのシールドからDIに繋ぎ、DIのシールドからベースアンプに繋げる。DIの背面の端子はミキサーに直接信号を送る仕組みになってるから、少し長めのシールドを用意。流石にそれは私がやった。


「これは自分の演奏です。弾くことだけが演奏の全てではないので、準備も片付けも全部一人でやりますから」

「か、かしこまりました...」


 シールドちょっと繋げるだけでこんなこと言われるなんて思ってなかったけど、なんだろう...、結羽歌といい琴実といい、ベース弾いてる人ってちょっと変わってるへんたいべーしすとさんが多いような気もする。


「準備できました、よろしくお願いします」


 合図が出たからさっきのドラム音源が入ったパソコンを渡し、ヘッドホンを装着させる。最初にスティックを叩く音が入っているから始めるタイミングを間違うことはないし大丈夫、あとは時間内に良い演奏が出来ることを願うしかない。


「......」


 にしても、本当にFender使ってる人多いな...。私の周りだけなのかはわからないけど、この形状はよく見る。デザインかっこいいし、いい音出るし、そりゃ人気あるよね...。

 右腕を僅かに曲げ、お腹より少し下の位置にベースを構え、演奏が始まる。機材トラブルがあったときのためにステージから一歩手前の位置で私は彼女の演奏を眺め、指や全身の動きを観察していた。てか、流石に機材トラブルあったら私がやるからね、私物ならまだしもアンプとかシールドのほとんどはここのものなんだし。

 すると、特に大きなミスもなく、てかほぼ完璧に弾けてたのに演奏が突如止まり、私に視線を向けて彼女はこう言った。


「すみません、見つめられると集中できないので後ろ下がってもらえますか?」

「......」


 なんかもう、このこ怖い...。てかさっきから色々言ってるけど、他のメンバーとか顧問の先生は何も思わないの?

 そう思ったから後ろで並んでいる3人を見ると、『また始まったよ』みたいな表情をしながら私達を見つめていた。きっと普段もこんな感じだから、今更注意したって直んないんだろうな...。でも、拘りが強い人って伸びしろあるって聞くし、これはこれで...?

 とにかく、今は演奏の妨げになることはしない方がいいのかな。でも何かが起こってからだと遅いからちょっとしか下がんないからね!

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