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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第16章 不完全感覚Drummer
236/572

音源、僅かな違いでも

 9月1日


 季節の変わり目には少し早いが、これからどんどん涼しくなっていくのだろう。それでも今日の最高気温は27℃の予報だし、数年前と比べて明らかに気温が高くなっている。愚かな人間が環境を破壊していったがための結果なのだ。

 夏休みが終わるまで丁度3週間となった今日、午後2時。俺は音琶と昨日録音したセッションの演奏を聴いていた。あれからまた追加で幾つかデータを取り、本当に全く同じ音だったのか分析をしていた。耳で聞くだけじゃ僅かな違いには気づきにくいし、周波や波長のデータを見ることで何かがわかるかもしれないと思ったからだ。


「それじゃ、再生するよ。ドラムとギターでデータ分けたから」

「そしたら、行くか」


 スマホで新たに取り入れた音声解析アプリを使い、何個もあるデータを同時に再生させる。するとタイマーが動くと共に周波のグラフが右から左へとスクロールされていき、それぞれの音の形が画面にどんどん表されていった。


「「......」」


 4、5分ほどの短い時間で何かがわかる。演奏が始まってから終わるまで二人とも無言で、いかに自分の演奏に向き合えてるかがわかる。そしてわかったことは...、


「なんか、信じられないくらい同じだったね。本当にこれ全部違うデータなんだよね?」

「質問しなくても、これは紛れもなく全部違うデータだ」

「うーん...」


 音琶が複雑そうに首を傾げるのも無理はない。音琶のギターのグラフは強弱がしっかりしていて、特にサビの部分の数字が大きく上昇していたし、幾つもあるデータで全く同じ演奏にはなってなかった。それに比べて俺は、どうしたらこんなデータが取れるのだろうと思わんばかりにほとんど全く同じデータが取られていた。勿論強弱はつけられてるし、タイミングも音感も間違ってない。だが、人間だから音琶みたいにもっとばらつきがあってもいいのではないか。俺だって人間だ、機械ではない。

 いくら上手くても、プロのバンドマンだって全く同じ演奏が出来るわけではない。ライブでレコ通りの演奏ができるバンドマンなんてそうそういないし、求められるべき演奏は感情のこもった演奏だ。この結果を見ると聞いてて気分が悪くなりそうだし、俺自身が納得できるわけがない。


「逆にここまで同じ演奏できるの凄いと思うけど...、どうなんだろ」

「わかってると思うけど、俺はロボットでもサイボーグでもないからな」

「そんなこと言わなくてもわかってるよ!」

「ならいいけど、解決策はねえのかよ...」


 それから再び沈黙。音源をもう一度再生し、今度は一時停止するなどして細部まで僅かでも違う箇所がないか探したが、今のグラフィックでは見つからなかった。スクロールを拡大すればもしかしたら見つかるのかもしれないが、小数点第何位になるかもわからない範囲まで拡大しないといけないだろうし、それだとどこの部分なのかも曖昧になりそうだから諦める。てか、最初からそんなことしようとは思ってない。


「これが解決策になるかはわかんないけど...」


 スマホから手を離し、畏まって話し出す音琶。俺の演奏を心配するのはいいのだが、少しは自分の演奏に満足してもいい出来ではあると思う。何せ前聴いたときよりもずっと良くなっていたんだからな。


「今日のバイトで、レコの仕事するんだ。高校生のバンドだから、始まる時間は遅いんだけどね」

「......」

「あんまやったことない仕事だけど、もしかしたら何か分かるんじゃないかなって...」


 鳴フェスから8月一杯はバイトを休んでいた音琶だったが、9月の間は大学が始まるまでバイトを頑張るとか言ってたよな。でもまさか、久しぶりのバイトがレコの仕事なんて、こいつも運がいいのか悪いのかよくわからん。

 てかあそこ、こんなことも出来るんだな。と思ったけども、あれだけ機材が揃っていているのだから不思議ではないな。


「些細なことでも良いから、何か分かったら教えてくれ」

「うん!」


 高校生のバンドともなれば、どこかの軽音部だったりするのだろうか。それとも、学校とか関係なく本格的に活動しているのだろうか。スタートは放課後だろうから大体16時から18時の間として、5時間ほどかかることを想定すると終わりは早くても21時にはなるよな。

 あとは金だが、曲数と時間で色々変わってくるものの、安くて5万と言った所だろう。そんな大金高校生がどうやって稼いだんだと言いたいが、バンドメンバーがそれぞれ協力してバイトしてレコを迎えたとなれば、顔も知らない奴らでも頑張って欲しいと思う。勿論音琶もそいつらがどうやってここまで来たのかはわからずとも、レコに対する意欲が半端なものではないということを理解しているだろう。


「まだちょっと時間あるから、それまでもう一回確認しよっか」

「そうだな、今度はギター重点的に見るか」


 これ以上ドラムの部分を見ても何も得られるものが無いと思い、少しでも音琶のギターとどう調律させるかを考えた方が賢明だと判断した。

 どこまで上手くやれるかなんて俺も音琶もまだ分かってなかったが、欠点が分かった以上それをどう利点に変えていくか考えることは出来た。今後やるべきことが見つかるまでの時間は決して長くはないだろう。

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