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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第15章 Trouble Killing Party
230/572

大切、誰かと居れること

 ***


 なぜかスマホのあみだくじのアプリで決まった席順。本当は音琶と同じ席に座りたかったのに、結羽歌と琴実と座る羽目になってしまった。いくらなんでもくじ運が悪くないか俺...。結羽歌となら別に問題ないが、琴実と飯なんて嫌な予感しかない。


「どうしてそんなに嫌そうな顔するのかしら」

「お前だってさっきまでずっと嫌な顔してただろうが」

「そりゃ、根暗で笑わない奴と一緒にご飯なんて嫌に決まってるじゃない」

「だったら俺もそんなこと思ってる奴と飯なんて御免だな」

「もう、二人とも、落ち着こうよ...」

「「......」」


 この場に結羽歌が居なかったらもっと大ごとになっていただろうな。結羽歌が居ようが居まいが琴実とは上手くやれないに超したことはないが。こいつの性格は色々と問題があるし、俺としてはもっとお淑やかな人を求めているのだが、こいつにはその欠片も無いからな。


「琴実ちゃんも、夏音君も、折角同じサークルにいるんだから、もっと仲良くしようよ?私も、二人と仲良くしたいんだもん...」

「......」


 結羽歌がそう言うなら、言うこと聞いてやってもいいかもしれないけど、琴実にはもう少し自分の性格というものを見直す機会を与えてやってもいい気がする。


「仕方ねえな...」

「結羽歌がそう言うなら...」


 俺も琴実も渋々結羽歌の言葉を受け入れたが、まだ納得はいってない。少なくとも今は空気を読まないといけない。


「そんなに音琶と同じ席に座りたかったのかしら」

「あぁ?」

「あら、図星だった?」

「夏音君、なんだかんだ音琶ちゃんのこと大好きだもんね」

「うるせえな...」


 注文したラーメンを口に運びながら二人の馬鹿な質問に答えようとする俺。何だかんだ下らない質問でもちゃんと答えるんだから、それくらい感謝してほしいものだ。それなのに何も理解してくれないのが俺としては大問題だ。特に琴実、お前に関してはだ。

 何かさっきから音琶と実羽歌が姉妹がどうとかいう話をしているが、正直俺もあの場に入った方が楽しかったかもしれない。いや、実羽歌は結羽歌と違ってなかなか問題児だから俺を実羽歌と交換してくれればいいのだ。結羽歌と実羽歌は姉妹仲は良い感じだし、琴実がいないとなると俺が音琶との時間を独占できる。それなら...、


「夏音、さっきからずっと音琶のことばっか見てるけど、どうしたのよ」


 琴実が嫌らしい顔で質問している。何を考えているのだか。


「付き合っている彼女のことを心配しない彼氏がどこにいる。一応結羽歌の妹と関わっていることに心配しているのだが」

「あんた、結羽歌がそんな危ない人に見える?こんな良いこの妹なら、何も心配することないと思うけど」

「さあどうだかな」

「私の代わりに、結羽歌が夏音に聞きたいことあるみたいだけど、聞きたい?」

「は?」


 いや、何が何だか。琴実が聞くのもわかるが、結羽歌からも聞きたいことがあるってのか?


「琴実ちゃん...?」

「この前疑問に思ってたことあるって言ってたじゃない」

「あ、そっか」


 密かに結羽歌に耳打ちする琴実だったが、この二人が何かしょうもないことを企んでいるってことはわかった。高校の同級生、恐るべし。


「えっと...、夏音君って、音琶ちゃんのどういうとこ好きなのかなって思って...」

「それを俺に聞いてどうする」

「え、えっと、それは...」


 恋愛話に関しては疎い俺だが、こいつらが言いたいことは大体わかった。あくまで俺をからかうために用意された質問であって、こいつらにとっては自己満足でしかないものなのだ。


「結羽歌、こういうのはテンパったらどうしようもないじゃない」

「あ、うん。そうだね...」

「しっかりしなさいよ」


 少し顔を赤らめながら質問してくる結羽歌。まさかだけどこいつにも好きな奴がいたりなんて...、それはないか?


「そう!夏音君が音琶ちゃんのこと好きな理由!ずっと前から気になってたんだ」

「はあ...」

「二人が付き合うことになった理由っていうのかな...、それを知りたいって思ってて...」

「別に大したことじゃねえよ」

「え?」


 大したことじゃない。俺が音琶のことを好きな理由。ていうか、人を好きになるのに理由なんて必要だろうか。ただ単に可愛いからとか、優しくしてもらったからとか、自分の好みに合うからとかでいいだろう。音琶だって可愛いし、無性に守りたいと思いたくなることがある。胸だって大きいし、意識しなくても視線が向かってしまう。


「俺が音琶と付き合いたいって思うようになったのは、ただ単に音琶が可愛くて、ずっと隣に居たいって思うようになったからだ。あいつは俺のことを求め続けて、必要としてくれたんだ。それが俺は嬉しかったってのもあるし、どこかしら不安定で壊れてしまいそうなあいつを守り抜きたいって思うようになったから、今もこうして一緒に居るんだよ」

「......」


 二人して無表情で俺を見つめている。そんなに今の言葉が気持ち悪かったか?それなら言ってくれ。別に俺はそう思わないけどな、むしろ音琶を好きで入れることを誇りに思っている。


「そっか、なんか私、夏音君のこと、甘くみてたよ...」

「私も、あんたのことだから音琶に流されて無理矢理付き合わされてるのかと思ってた...」

「...は?」


 こいつら、俺が長い間苦しんでやっと見つけた音琶への想いを何だと思ってたんだ?俺からしたら苦労の連続だったのだが?


「ごめん、夏音がここまで感情的だなんて思ってなかったから...!」

「でも、夏音君は音琶ちゃんのことが大好きだってことは薄々わかってたからね」

「ちょっと夏音を試そうと思って。あんたなかなかやるわよ。ちょっと面白かったわよ」

「...別に、俺はお前らを笑わせるために今の質問に答えたわけじゃない」

「わかってるわよ。でもね、夏音がそれだけ音琶のことを思っているか、それを知ることができてよかったと思っているのよ」

「......」

「今までの夏音の印象が変わったわよ。私は、あんたが本当は優しい心の持ち主だってことくらい、知っているんだから」


 正直、今の琴実の言葉には疑いしか生まれない。それでも、俺は少しでも受け入れたいという気持ちはある。だが...、


「すまんな、これ以上お前らと話していると麺が伸びる。だからせめて食い終わってからにしてくれ」

「む...」

「夏音君...、仕方ないな...」


 呆れながらも俺の話を聞く二人。少しは、俺も音琶以外の奴らを大切にする権利が与えられているのだろう。だから、こいつらのことも、苦手な琴実のことも...。


「馬鹿ね、相変わらず夏音は面白いんだから」


 俺のことをからかっているつもりなのだろう。でも、これに関しては悪くない。

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