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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第15章 Trouble Killing Party
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相席、友達の妹と

「なんであんたらが...。別に音琶はいいけど、このバカもいるなんて...」

「何回も言うけども、お前よりはバカではない」

「もう、二人とも、こんなとこ来てまでやめてよ...」


 暫くしないうちに琴実が現れて並ぶことになったんだけど、夏音を見た途端不機嫌になっていた。この二人、あんまり仲良くないもんね。でもこんな所で言い争いなんてみっともないって次元じゃない。結羽歌も二人を何とかして宥めてるし...。


「琴実ちゃんと夏音くんって、仲悪いんだね」


 未だに言い争っている二人に実羽歌ちゃんが水を差す。見てればわかるのにわざわざ確かめようとするなんて、このこもなかなか空気が読めてないような気がする。


「みう、そういうことは聞かない方がいいんだよ」

「うん、わかってるけど、琴実ちゃんも相変わらずだなって思ってさ」

「......」


 琴実って結羽歌と高校同じだったから、実羽歌ちゃんとも長い付き合いなんだね。帰省して久しぶりの姉妹の再会の邪魔しちゃったかな?大体は夏音が悪いんだけどさ。


「琴実、こんなとこで会うなんてね。その水着、似合ってるよ」

「え?あ、ほんとに?ちょっと気合い入れたから嬉しいかも!もっと褒めなさいよ!」


 二人は私の言葉で言い争いをやめ、水着を褒められた琴実は一瞬で上機嫌になった。でも、私の言ったことは嘘じゃない。琴実の水着は黒のビキニで、結羽歌ほどじゃないけど低めの身長からそれなりに大きい胸とスレンダーな体型が可愛さを引き立てていた。ちょっと難のあるこだけど、目が吊り上がってて可愛い顔してるし、何だかんだ根が優しくて私や結羽歌の良き理解者、だと思っている。だから今日こうして一緒に遊べるのは楽しみだったりする。


「...何ジロジロ見つめてるのかしら、胸の大きさで勝ってるからって愉悦に浸ってるのかしら?」

「え!?別にそんなこと思ってないよ!?」

「へえ...。でも、音琶の大きさだと肩凝りとか大変じゃない?」


 嫌味かぁ...。確かに重いって感じることも何回かあるけど...。


「そうだよ音琶ちゃん、私は軽すぎるから音琶ちゃんが味わっている肩凝りっていうの、一度だけでも体験してみたいかな」


 結羽歌、あんたはいったい何言ってるの...?これも嫌味だったりするのかな?


「自分の胸にミニアンプ巻き付けたらわかるんじゃない?」


 なんかよくわからない雰囲気になってたから適当なこと言って済ませようとした。すると結羽歌と琴実は、二人かがんで何かひそひそと話し出した。


「...何やってんだこいつら」


 呆れ顔の夏音となぜか興味津々の実羽歌ちゃん。ほんとうに何なんだろう...?


「ごめん音琶、流石にあんたに勝つのは無理よ。今までずっと嫉妬してたのよ。でも、今日をもって諦めることにするわ!」

「えっと、だから何を...」

「私の今の大きさからだとあと一年で追いつけるわけないって実感したのよ!いくら栄養つけても音琶みたいにはなれないってね!」

「......」

「人間の成長は二十歳で止まるって言われてるしね。結羽歌はもう少し大きくなれるように頑張るみたいだけど!」

「そ、そうなんだ」


 やっぱり、女の子って胸を大きくしたいって思うんだね。私に関しては特に気にも留めてなかった、ってか高校なんてほとんど通ってないからみんながどれくらいの大きさなのかなんて知らないし、どれくらいで成長するのかとかもよくわかってない。

 着ている水着が胸の目立つものだから、余計に琴実や結羽歌が気にしちゃうんだろうね。そんな中実羽歌ちゃんは...、


「じゃあ、私はお姉ちゃん達よりもチャンスはずっとあるってことだよね、まだまだ成長中だし、背も伸びてるんだもん!」

「そうよ、実羽歌は成長期真っ只中だものね!だから私達が叶えれなかったことを受け継ぎなさい!」

「うん!琴実お姉ちゃん!」

「もう、本当に可愛いんだから」


 そう言って実羽歌ちゃんに抱きつく琴実。何かいつの間にか事が解決したみたいになってたけど、これでよかったのかな?結局よくわからないままなんだけど...。


 それからちょっともしないうちに私達の番になって、みんなそれぞれ食べたいものを注文して空いてる席に着く。席決めはくじ引きになって、私は実羽歌ちゃんと向かい合って。夏音は結羽歌と琴実と三人で食べることになった。海を見ながらご飯食べるのって憧れてたから、また一つ願いが叶っちゃった。


「音琶ちゃん、いっぱい食べるんだね」

「え?うん。食べないと元気になれないからね」


 焼きそばにイカ焼き、そして渦巻き型のソーセージ、食後にはかき氷、他の四人は一人一品って感じだったけど、端から見ても明らかに私の注文した量は多かった。それを見た実羽歌ちゃんが興味深そうに聞いてきた。まさかだと思うけど、さっきの話の参考にしようなんて思ってないよね?


「ちょっとだけ、もらってもいい?」

「えっ?」

「お願い!一口だけでいいから!」


 両手を合わせてお願いしてくる実羽歌ちゃん。実羽歌ちゃんは白身魚のフライを選んだみたいだけど、これも美味しそう。そしたら...、


「実羽歌ちゃんのと一口交換しよっか」

「うんっ!」


 満面の笑顔で実羽歌ちゃんは返事をした。この笑顔も、結羽歌にそっくりだった。ちょっと生意気だけど、素直で可愛い実羽歌ちゃんと喋っていると心の奥がじんわりと暖かくなっていた。

 妹がいる人の気持ちってこんな感じなのかな、和兄も私の事、こんな風に見ていたのかな?私がいることで、幸せだったのかな?


「......」

「音琶ちゃん、どうしたの?」

「うん?実羽歌ちゃんみたいな妹欲しいなって思ってたんだよ」

「へえ~、私そんなに可愛い?」

「うん、可愛いよ」

「......」


 僅かに頬を紅く染め、照れる実羽歌ちゃん。さっきまであんなに元気に喋っていたのに、可愛いって言われた途端恥ずかしがるなんて、そういうところも結羽歌にそっくりだった。


「そ、そういえば、音琶ちゃんって兄弟いるの?」

「えっ...」


 恥ずかしさからか咄嗟に話題を変えた実羽歌ちゃんだったけど、正直この質問はなんて答えればいいのかな...。本当のこと言ってもどんな人か聞かれるかもしれないし、それだったらいっそ...、


「いないよ、一人っ子なんだ。だから結羽歌が羨ましいな」

「そうなんだ。そしたら、お姉ちゃんに相談して音琶ちゃんの妹になってあげようか?」

「それはダメだよ。実羽歌ちゃんは結羽歌の妹なんだから、そんなことしたら結羽歌が悲しむよ」

「もう、冗談のつもりだったのにぃ...」


 何気ない日常の下らなくて楽しい会話をしているつもりだった。

 でも、私は嘘を吐いた。本当は大切な大切な家族が居たっていうのに...。

 何かを察したのか、そう遠くない席から夏音が私に視線を送っていた。今の会話、聞かれてたかな...?

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