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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第15章 Trouble Killing Party
228/572

海の家、何を食べるか

 ***


「夏音のバカ、おっぱい星人...」


 夏音が着替えに行って私は一人取り残され、シートの上で体育座りしながら愚痴をこぼしていた。折角こんなに可愛い水着買って、夏音に見てもらいたいって思ってたのに、私の胸に夢中になってまともに感想言ってくれないんだもん...。

 たまにだけど夏音に誘惑して、もっと触れて欲しいって思ってるのに、目を逸らすだけで全然見てくれないし、そんなことされるから後々私が恥ずかしい想いしているってのに、それにすら気づかないなんて、ほんとに夏音はバカなんだから...!

 そりゃ出会って間もない頃から私の大きい胸に夢中になってるのは嫌じゃないし、むしろ嬉しいくらいだし...、それなのに、見てるだけで全然触ってくれないし、本当は一線くらい越えたっていいと思ってるのに、誘ってすらくれないし...!

 この水着だって、本当はこんなに露出度の高いのは抵抗あったけど、頑張って身体を張って買ったんだもん!気に入ったやつだったからこっそり買いたいって思ってたのに...。


 本当なら、私の身体は海にすら行けないくらい弱ってるはずなのに、夏音に会えたからここまで元気になれたんだもん。だから、もう二度と行けないかもしれない場所に行けることがどれくらい幸せなことなのか、私はよくわかっていて、夏音は何もわかってない。

 お父さんも、そのことは分かっていて、私のためにバンド活動に力を入れて頑張ってくれている。お父さんがあそこまで有名なバンドのメンバーになれたのも、私のために頑張ったからなんだもん...。

 思い出すだけで辛い気持ちになっちゃったから、夏音が戻ってくるまで何とか元気な私に戻らないとね。今日は夏音と一緒に遊ぶためにここに来たんだから...!


 10分くらい経ったかな、チャックの開いたパーカーを羽織った夏音が現れた。流石男の子ってとこかな、身体はがっしりしていて無駄な肉が無いように見える。私みたいに脂肪があるようなことはなく、引き締まった身体は格好良く見えた。


「待たせたな」

「うん、大丈夫だよ」

「ならいい」


 夏音って12年間ドラムやってたみたいだけど、その長いキャリアがここまでさせたのかな?ドラムって腕も足も使うから、演奏している内に身体に負担がかかって筋肉になったりするのかな?


「そしたら...」


 私はリュックから水鉄砲を二つ取り出して、片方を夏音にあげた。


「お前な...」

「海に来たらまずはこれだよね!」

「子供じゃあるまいし」

「あれ?私達はまだ学生なんだよ?まさか夏音、自分のこと大人だと思ってた?」

「......」


 私の発言に呆れ顔になっていたけど渋々ながら水鉄砲を受け取り、海水をポンプに溜め出した。それに負けじと私も出来るだけ多くの海水を溜めるべく、海に足を入れる。すると、気温の暑さとは裏腹に冷たい感触が足一杯に拡がった。


「きゃっ!冷たい!」

「そりゃそうだろ、水なんだから」

「もう、夏音!これはただの水じゃないんだよ!」


 そう言って、手で掬った海水を夏音目掛けて弾かせる。


「ちょ...!お前それは反則だろ」

「まだ勝負は始まってないんだよ!反則なんてないんだよ!」

「だったらこっちも反則技でだな!」

「わっ!」


 そう言って夏音も大きな掌で海水を掬って私にかけた。目が染みるくらいに海水が入ったけど、私もそれに負けじと夏音に海水をかけまくった。いつのまにか夏音も楽しそうにしていたし、もう勝負どころじゃなくなっていた。


 ・・・・・・・・・


 楽しい時間を過ごしているとお腹は空くもので、気がつけば正午を過ぎていた。


「ねえ、そろそろお昼ご飯食べに行かない?」

「そうだな」


 2時間半くらい遊び通していたから我を忘れていたけど、お腹が鳴るとスイッチが入ってしまうみたい。やっぱり美味しい物食べないと私は元気になれないんだな...。

 出来るだけ一番近いところでやってるお店を目指して、私と夏音は歩き出す。何があるのかな?


「食べ過ぎには注意な。ただでさえ腹が出てるのにこんな姿で食べ過ぎたらデブの彼氏だと思われるかもしれないだろ」

「なっ...!」

「どうした?突然涙目になって」

「もう、バカ!」


 これが照れ隠しなのはわかってたけど、もう少し褒めてくれてもいいじゃん...。たまらず私は素足で夏音のサンダル越しの足を何度か踏みつけた。確かに私は痩せてるわけじゃないけど、太ってるわけでもないんだもん。ちょっとだけ、他のこより柔らかいだけなんだもん!本当は触りたくて、抱きしめたくて仕方ないはずなのに、夏音は本当にバカなんだから!

 そんなやり取りをしている間にも海の家に着いていて、正午過ぎということもあってか割と賑わっていた。これはちょっとだけ並ばないといけないかな?


「鳴フェスの時よりはすぐに食べれるだろ」

「そうだね」

「何食いたい?」

「うーん、焼きそばとイカ焼きに、デザートはかき氷かな?」

「はいはい」


 聞いてくるってことは、夏音も同じの食べるのかな?だとしたら味比べできないけど...。


「あ!さっきぶつかってきたお兄ちゃん!」


 と、その時、中学生くらいの女の子が夏音を指さして何かを叫んでいた。そのこは黒髪ボブで、水玉のワンピース型の水着を着ている。ぶつかってきたって、何かあったのかな?


「こらみう、だめでしょ」

「だって~」


 すると聞き慣れた声が聞こえてきて、その声はさっきの女の子に向けられていた。


「結羽歌?」

「あ、あれ?音琶ちゃん?」

「は?」


 聞き慣れた声は結羽歌のものだった。結羽歌は薄桃色のフリル付ワンピース型の水着を着ている。ってことは、この女の子は...。よく見ると目元が結羽歌にそっくりだよね。夏音もちょっとだけ驚いていた。


「まさかこんなとこでも会っちゃうなんてね、結羽歌も遊びにきたんだ」

「うん。てか、西吹市は私の実家あるとこだし」

「え、そうなの?」

「そっか、言ってなかったもんね。丁度今帰省中なんだ。琴実ちゃんもいるんだよ」

「そうだったんだ、ってことはこのこは...」

「うん、妹の実羽歌だよ」


 どことなく結羽歌に似た雰囲気を放つ女の子は、結羽歌の妹みたいだった。ぱっと見活発な感じに見えて、目が大きくて可愛いこだった。


「へえ、結羽歌の妹さんか~。私はね、音琶って言うんだよ」

「こんにちは。実羽歌っていいます。高一で...、えっと、いつもお姉ちゃんがお世話になってます。よろしくね」

「うん、よろしくね」


 高校生だったんだ、身長は結羽歌より少し低いくらいだったから、中学生かな?って思ってたけど...。でも結羽歌も私より頭一つ分くらい低いから、ぱっと見じゃ大学生だって思わないよね?

 私と実羽歌ちゃんが挨拶している間、夏音は知らない振りをしていたけど、ぶつかったって言ってたから無理矢理にでも夏音を実羽歌ちゃんの方に向かせる。


「夏音、何知らん顔してるの?」

「知らない人だしな」

「このこは、結羽歌の妹なの!知らない人なわけないでしょ!」

「...わかったよ」


 嫌そうな顔をしていたけど、夏音は実羽歌ちゃんに挨拶をした。その間実羽歌ちゃんもちょっとだけ嫌そうな顔をしていた。何となくだけど、この二人は合わなさそうな感じはする。


「夏音くんかぁ、女の子みたいな名前してるんだね。夏音くんは、音琶ちゃんの彼氏なの?」

「......」


 このこ、初対面なのに結構言うんだね。でも、夏音が苦しんでいるのを見るのはちょっと楽しいから、実羽歌ちゃんとのやり取りを観察することにしようかな。


「みう、失礼でしょ」

「え~、お姉ちゃんの友達なんでしょ?」

「そうだけど、言っちゃだめなことってあるんじゃない?」


 結羽歌が何とかして宥めたから夏音と実羽歌ちゃんの対立は終幕したけど、このこ結羽歌と違って結構積極的にいく感じなんだね。


「ごめんね、音琶ちゃん、夏音君」

「......」

「ううん、別にいいんだよ。夏音だってさっきから私に失礼なことばっかりしてるし」

「そうなの?」

「してねえよ」


 機嫌損ねちゃった...。でも、私のこと色々言ってたから天罰が下ったんだよ。それはわかるよね?


「大丈夫だよ結羽歌、夏音は些細なこと気にするような人じゃないって信じてるからね。結羽歌も実羽歌ちゃんも、一緒にご飯食べよっか」

「やったー!」


 私の誘いに実羽歌ちゃんは喜んでいた。可愛いのは結羽歌と一緒かな。琴実も居るみたいだし、5人で一緒に食べたいな。

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