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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第14章 TRUSTiNG ME
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あと一つ、もうすぐで始まる

「そいえば、RefLectはどうだったのよ。生でみるのは初めてだよね?」

「う、うん!真ん前で見れて楽しかったよ!見たかったバンドが見れるのって、こんなに幸せなことなんだね」

「良かったわね、願いが叶って」


 LoMまであと1時間弱、私と琴実ちゃんはEAST STAGEの近くにある屋台のベンチに座りながら歓談していた。片手にはプラカップ一杯に入れられたカンパリソーダが握られていて、琴実ちゃんと一緒に飲むことの楽しさとお酒の美味しさを噛みしめていた。


「琴実ちゃんは、楽しかった?」

「そりゃ楽しいわよ。まだ終わってないのに過去形は使わないの」

「そっか...。そうだよね」

「てか、実羽歌にお土産とか買ったの?」

「うん、RefLectの限定Tシャツをね。きっと喜んでくれると思う」

「そっかー、あんたら姉妹揃って同じバンド好きだものね」

「一杯自慢話しよっかなって思ってるよ」

「妹いるっていいわよね。なんで私は一人っ子なんだか」


 そっか、琴実ちゃん一人っ子だもんね。家に居ても一人のこと多かったから、私の家に遊びに行ったことも数え切れないくらいあったし、寂しかったんだよね。


「私とみうのこと妹だと思って接してもいいよ」

「いや、それはいいわよ。実羽歌はともかく」


 ***


 今ステージに立っているバンドが終われば、LoMの出番になる。前から5列目、正直最前列に辿り着くのは難しい。だが、今までずっと見たかったバンドともなれば、周りの人に迷惑をかけようとも前に進むことを心がけないといけない。それに、もし最初から諦めてたら騒ぐ奴が出てくるわけだし、何が何でも実行しないといけないのだ。

 もう何度もあの日を思い返しただろう。隣の少女、上川音琶と初めて出会い、俺の日常が崩れ去ったあの日をだ。

 何が起こっているのかもわからないまま音琶に巻き込まれ、追いかけられ、逃げ場も無くなった。嫌々付き合っていたはずなのに、いつの間にか隣に居てくれることをありがたく思うようになり、俺にとってかけがえのない人になっている。

 何が起こっているのかもわからないのは、今も同じだったな。

 これから徐々に明らかになる音琶の正体。もうだいたいは俺もわかりつつある。はっきりわかる事と言えば、音琶は生まれも育ちも鳴成市だということだ。決して俺と同じ高校の生徒なんかではない。

 そして音琶は今一人暮らしをしている。その理由はわからないが、大学生になったということで帰りが遅くなったり、自分の時間が欲しいから等、考えるならいくらでもできる。第一、俺と夏休みの間だけでも同居するとなると親に連絡しないわけにはいかないだろうし。その親が何をしているのかはわからないが、一人暮らしを許すという時点で仕事が忙しいのだろう。

 音琶のことだから、鳴成市にある数多の高校の中のどこかで軽音部に入り、ギターを掻き鳴らして楽しい高校生活を送っていたのだろうな。入学式の日には新しいギターを買ったって言ってたわけだし、きっともう一つ使い古したギターが奴の部屋には置かれているのだろう。

 それから、音琶と初めて会ったあの日のことだが、何故鳴成市に住んでいる音琶が、距離の離れた緑宴市にいたのかについて説明しようと思う。

 簡潔に言うと、音琶はあの日、もう一つライブを見に行っていたのだ。それも俺と出会った直後に、だ。そのライブとは、俺と音琶がこれから見ようとしているバンドのライブだ。取ることが非常に困難なバンドのチケットを奴は勝ち取っていたのだ。


「......」


 何故あのライブハウスに入ってきたのかとか、俺に執着する理由とか、家族関係とか、部屋に入れてくれない理由とかはわからないものの、俺と出会った経緯は今考えたことが確実だろう。

 全く、そんなことくらい隠さなくっていいだろう。俺に対して遠慮無く我儘言ってくるくせに、こういう所だけは変に真面目だよな。

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