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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第14章 TRUSTiNG ME
209/572

薄暗、これから何を見るか

 ◈◈◈


「だいぶ暗くなってきたわね」

「うん」


 もうすぐ夜の7時、太陽は沈んで西の辺りが薄くオレンジ色に染まっている。綺麗な光景だけど、上を見れば見るほど空は紫から紺色に変わっていって、もうすぐこのフェスも終わってしまうんだな、という寂しさもあった。

 サークルのLINEは誰がどこのステージに行くだとかと言ったありきたりな会話しかなくて、鈴乃先輩と茉弓先輩の件については一切触れられてなかった。


「ねえ、結羽歌は最後に何見たいか決めてる?」

「えっと...、この中からだったら...」


 琴実ちゃんとパンフレットを広げ、タイムテーブルのページを見ながら簡単な相談をする。トリのバンドともなれば、誰もが知っているような昔から居るバンドしかいなくて、曲は知らなくても名前ならよく聞くものがほとんどだった。

 でも、この中でまともに聴いたことあるバンドって言ったら、LoMしかないかな...。テレビ出演も何回もしていて、ワンマンライブやフェス関係なく毎回とてつもないレベルで盛り上がるって話を聞いたことがある。

 そこまで詳しくないはずなのにそれを知ってるのは、朝のニュースで特集やってるのを見たからなんだけどね。


「LoMくらいしか、知ってるのないかな...」


 これで琴実ちゃんが他に見たいのがあるとか言ってたらどうしよう、って思ったけど...、


「良かった~。私もLoMくらいしかまともに聴いたことあるのなくてさ。結羽歌のことだから結構マニアックなの見たいって言うと思ったけど安心した」

「それってどういうこと?」

「深いことは考えなくていいのよ、どうせ混むでしょうから早めに会場行っちゃおうかしら?」

「後ろの方でも、いいかな」

「そうね、LoMともなればどんな輩が湧いてくるかもわからないし、怪我でもしたら大変よ」


 琴実ちゃんもLoMほど有名なバンドだったら聴いたことあるよね、そしたらこのフェスの最後はLoMを見て締め括ろうかな。まだ時間あるから、何か飲み物買いに行こうかな。


「そいえばさ、あの二人はどうなってるのかしらね」

「二人...?」

「何キョトンとしてるのよ、音琶と夏音に決まってるじゃない」

「あ...」


 二人の名前が出てきて思わず夕方の出来事を思い出す。昨日音琶ちゃんに会ってから心配の気持ちが芽生えて、LINEのトークは変化があまり無いから大丈夫だとは思うけど、茉弓先輩が音琶ちゃんか夏音君に昨日と今日の話題を持ちかけるかもしれないし、明日以降私の立場がどうなるのかが分からない。

 少なくとも、茉弓先輩が何かしらの権力を持ちかけて私達はまた大幅に減点になるかもしれない。鈴乃先輩に関しては幹部の座を降ろされることになったみたいだし、きっと私は幹部に就くことは一生ないのかも...。

 きっと、これから鈴乃先輩が私達に警告を促すことも無くなると思うし、これからはずっと先輩達の理不尽な命令に従わなきゃいけないんだよね...。生き残る為にも、もうそうするしか...。


「確か夏音君、LoM好きだったはずだから、もうEAST STAGE行ってるんじゃないかな...?」

「へえ、あいつ音楽なんて興味ない、みたいな顔してるくせにちゃんと好きなバンドあるのね」

「うん、でも12年もドラムやってたって言ってたし、バンドのこととかもきっと誰よりも詳しいと思うよ?」

「自己紹介の時そんなこと言ってたわね。それなのになんであんなにつまんなさそうに演奏するのかしら、理解が出来ないわよ」

「きっと...、色々あったんだよ...。12年もやってたら、色々あるよ...」

「私もベース続けていったらあいつの考えがわかるのかしらね」

「わかんないけど...、いつかは、わかるんじゃないかな...」


 私と琴実ちゃんはまだ始めて4ヶ月。それと比べると12年なんて途方も無い数だよね...。きっとその間にも楽しいことも辛いことも色々経験して、今に至るのかな。

 私がどれくらいベースを続けていけるかはまだわからないけど、演奏することは大好きだし、もっと上手くなりたいって練習する度に思っている。だから、できるだけ長く続けられたらいいな。


「そういえば、音琶ちゃんって何のバンドが好きか知ってたりする?」

「え?音琶の好きなバンドでしょ?それだったら...」


 私の質問に琴実は何とか答えようとするけど、途中で黙り込んでしまった。


「あいつ、何好きだったっけ?」


 不思議そうに首を傾げ、私に問い返す琴実ちゃん。ギターの技術は先輩達も顔負けレベルで、どんな難しいフレーズも完璧にこなしてしまう音琶ちゃん。なのに、音琶ちゃんが何のバンドが好きなのかという話を聞いたことがない。

 音琶ちゃんのことだから色んなバンド聴いてそうだし、沢山の曲をコピーして練習してきたからあそこまで上手くなったんだと思う。なのに、音琶ちゃんからバンドの話が出てきたことない。


「...まあいいわ。陰で他人の心配するのはあまり趣味じゃないし、LoMの時間まで適当に暇潰してましょ」

「う、うん...」


 よくよく考えたら私、音琶ちゃんのこと良く知らない...。一緒にバンド組んで、一緒に遊びに行ったり、一緒に飲んでくれたり、一緒に過ごした時間は短くないはずなのに、全然知らない...。

 今度、二人きりになる時間があったら、音琶ちゃんの昔話とか聞いてみたいな...。私だって、今と昔で沢山変われたってこと、音琶ちゃんに教えたいもん。

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