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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第14章 TRUSTiNG ME
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見た目、変わったこと

「にしても...」

「うん?」


 夜ご飯を食べるために屋台を廻る私と琴実ちゃん。時間も時間だし、一緒にビールやサワーも飲んで乾杯なんかもしている。何か、いつも飲むのと違って美味しく感じるな...。


「実羽歌って今の結羽歌見て別人だと思わないかしらね?」

「えっ...!そんなこと.........。あっ!」

「もう慣れちゃったから気づくのも遅れるわよね」


 そう、今こそ明るい茶髪に内巻きショートで当たり前みたいになってるけど、高校生までは長い黒髪だったんだ。切ったのも染めたのもこっちに来てからだったし、実羽歌にそのことは言ってない。

 何も言わずに帰省したら、実羽歌は勿論、お父さんやお母さんもびっくりするよね...。


「何か、今になって恥ずかしくなってきたよぅ...」

「突然こんな綺麗な女の子が訪問してきたら実羽歌、なんて言うでしょうね」

「うーん...」

「内緒にしときなよ、私も着いてくからさ。実羽歌にサプライズだよサプライズ」

「そ、そうだね...!ちょっと楽しみかも...!」


 もう大学生なのに、妹に悪戯か...。実羽歌が驚いている姿を想像すると可笑しくて思わず身体が震えてしまっていた。



 <3年前>


 4月11日


 高校に入学して丁度1週間。身だしなみを整えたブレザーにスカート、纏めていない長い黒髪。昼休みだというのに誰とも話さず一人で教科書を開いていた私、池田結羽歌は一人のクラスメイトに突然話しかけられた。


「あなた、昼休みだというのに勉強だなんて面白いことするのね」

「えっと...」


 つり上がった目に、僅かに茶色掛かったポニーテール、私よりも少し丈の短いスカートとブレザー。入学して早々友達を作るタイミングを間違った私に何の用、なのかな...?


「これだけ勉強してたら私と互角に張り合えるんじゃないかな?って思って。だから来週の模試で私と勝負しなさい!」

「え.........?」


 高校で先生以外との始めての会話だった。それにしても、どうしていきなりこんなことに...。


「あと、あなたまだ誰とも話してないわよね?そんなんじゃ楽しくないじゃない」

「......」

「だから、これから私があんたを楽しませてあげるから!」


 最初は訳がわからなかったけど、実は琴実ちゃんも上手く友達を作ることが出来てなくて、私に思い切って話しかけてきたという。

 今なら琴実ちゃんがあの時何を考えていたのか良く分かる。不器用なりに、私と仲良くなりたかったんだなって。それに、私も嬉しかったんだ...。理由はどうあれやっと話しかけてくれる人が出来たことが...。



 4月22日


「模試の自己採点、どうだった?」


 下校中、琴実ちゃんにそう聞かれた。この時辺りから私は琴実ちゃんと下校するようになって、いつもより家に着くのが早く感じていた。


「えっと...、合計で、718点」

「嘘!?どうしたらそんな高い点取れるのよ!?」

「それは...、ちゃんと毎日勉強してるからで...」

「いや私だって毎日してるわよ。てかしないわけないでしょ!?」


 琴実ちゃんは本気で驚いていた。私としては足りないくらいなんだけど、勉強してたらこれ位は当たり前に取れると思うけどな...。


「そう言う琴実ちゃんは、何点だったの?」

「...622点」

「......」


 確かに、今の段階だと平均以上は取れている。でも、私がこんな点数だったら悔しくて死んでしまいそうになる。


「何よその顔」

「え...、いやこれは...」

「もう!わかったわよ!」

「何、が...」


 心の声が漏れちゃったわけじゃないけど、全部顔に出てたのかな...?嫌だな、こんなことで琴実ちゃんに嫌われちゃったら...。


「私に勉強教えてよ!次こそは勝つんだから!」

「えっ...?」


 ・・・・・・・・・


「あ、お姉ちゃんお帰り~。って、この人は!?」

「うん、同じクラスの高島さん。ちゃんと挨拶するんだよ」

「あっ...!初めまして、お姉ちゃんの妹の実羽歌です。よろしくお願いします!」

「高島琴実です、こっちこそよろしくね。これから暫くお邪魔するかも」


 本当に勉強会なんてするんだ...。しかも暫くって...。今まで誰かを家に入れた事なんてなかったのに...。

 それから2階の部屋に琴実ちゃんを入れて、学生鞄から教科書と筆記用具を取り出す。実羽歌との共同部屋だから机と椅子は二つずつあるけど、どうしようかな...。


「ごめんね高島さん、ちょっと待っててね」


 そう言って私は1階に降りて、リビングで録画したテレビ番組を見てる実羽歌に話しかけた。


「みうー、高島さんにみうの椅子貸してもいい?」

「うん、いいよ」


 リモコンの一時停止ボタンを押して実羽歌はそう答えた。そして私に顔を近づけて...。


「にしても、お姉ちゃんが友達連れてくるなんて始めてだよね」

「う、うん...。でも今日はたまたまで...」

「みうはお姉ちゃんに友達が出来て嬉しいな。みうも琴実ちゃんとお友達になりたいから、勉強会一緒にやってもいいよね?」

「ダーメ。みうに高校の勉強なんてわからないでしょ?難しいんだから」

「ちぇー、今日はお姉ちゃん遊んでくれないんだね。今日はお父さん帰ってこないし、お母さんもパートだから留守番みたいでつまんないんだよ」

「勉強は遊びじゃないでしょ?高島さん帰ったら遊んであげるから我慢するの」

「はーい」


 中学生になったばかりの実羽歌は私と正反対の性格をしているからか、入学早々一緒に遊ぶ友達が出来て楽しそうだった。今日はたまたま家に居たけど、土日はよくどこかに遊びに行っていた。だから私と違って一人の時間がつまらなくて仕方がないんだよね...。


「ごめんね、あとでアイス買ってあげるから」

「ほんと!?」

「ほんとだよ」


 アイス、という言葉を聞いた途端目を輝かせる実羽歌だった。それから私は元の部屋に戻り、実羽歌の椅子を琴実ちゃんに貸して勉強を教えたのだった。


「まずはこの前の模試の復習からかな」

「やっぱりそうよね。頭の良い奴ってこういう勉強するものね。私もしてるけど」

「するだけじゃなくて、どこが出来てなかったとかも分析しないとね」

「そうね。ってか、あんた勉強のことになると饒舌になるのね。いつもの感じはどこに行ったのよ」

「え...?いつも通りだと思うけど...」

「まあいいわ...。私の間違ったところから重点的にやろうかしら...」


 こうして、私と琴実ちゃんの不思議な関係が始まったのである。この後のことは...、また今度かな。




 <そして現在>


「そうそう、帰省したら一緒に海行こう?」

「う、海!?」

「うん、実羽歌とは行ったことあるけどあんたとは1回も行ってないじゃない」

「でも...、私、身体に自信ないし...」

「別に気にすることないわよ。胸は実羽歌の方が大きいかもしれないけど」

「琴実ちゃん!」


 もう、本当にあの頃と変わってないんだから...!

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