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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第14章 TRUSTiNG ME
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表裏、どっちを信じるか

「そっか...」


 頑張って全部話した。私の抱えていること、話すことで全てが解決するとは限らない。でも、黙っているよりはずっと楽になれた。それが例え二人を裏切る結果になったとしても。

 いや、裏切っちゃダメだよね...。秘密を守ることのできるほどのメンタルがなかった私が全部悪いんだ...。でも、辛いことを抱えたままなのは私には耐えられない。だから、ごめんね、音琶ちゃん、夏音君...。


「あの...、誰にも言わないでくれます、よね?」


 全てを納得したのかはわからないけど、鈴乃先輩は私の話をちゃんと聞いてくれてたし、何度も相づちを打っていた。


「言わないよ、そんな大事なこと言うわけないよ」

「そう、ですよね...」


 安心したけど、鈴乃先輩の表情はどこか遠くを見つめているようで、私の悩みから一筋の光が差す気配は感じられなかった。なんというか、何をしても解決ができないんじゃないか、って感じるようになってしまって、楽になれても言葉に出来ない蟠りが私の中で蠢いているような感触がした。


「結羽歌はさ、自分のしていることが悪いことだと思ってるから私に相談したの?」

「えっ...?」


 今まで見たことの無いような表情を鈴乃先輩がしていた。怒っているわけじゃないけど、私の身体を硬直させて、次に出すべき言葉を選ばせるような、そんな表情。

 怖い、怖いよ...。やっぱり言わない方が良かったかな...。どうしよう...。


「......」

「......」


 暫く二人見つめ合い、怯える私は鈴乃先輩の表情を読み取ろうと必死になることしかできなかった。


「はぁー....」


 数秒置いて、鈴乃先輩は大きく溜息をついた。


「どうせこんなことだと思ってたよ」

「こんな、こと...。ですか?」

「まず一つ、夏音と音琶のことね。うん、二人からは直接聞いてないけど、なんとなく想像はついてたよ」

「そんな...」


 一気に力が抜けた気がする。鈴乃先輩、全部お見通しだったんだ...。昨日から私の様子がおかしかったのも、二人がいなかったのも、何かを感じ取っていたからで...。


「結羽歌とあの二人との付き合い長いんだから、大体何考えてるのか検討つくよ。結羽歌の性格とか考えると尚更ね」

「......!」


 恥ずかしさで顔が赤くなっているのが自分でもわかった。確かに嘘をつけない性格なのは承知だったけど、こんなこと言われると余計に恥ずかしくなっていた。


「そもそも、普段はちゃんとイベントに参加している二人がこんな大きなイベントに参加しない方がおかしいでしょ?」

「でも、他に外せない用事だって...。それに、それだと他の先輩達も二人が何しているか気づくんじゃ...!」

「二人が今何してるかなんて結羽歌が言わないと誰もわからないと思うよ。鳴フェス以外にも遊びに行く所なんてこの大都市には沢山あると思うし、折角の夏休みなんだし」

「まさか...、私があそこまで不安になってなかったら、気づかれなかったってことですか?」

「悪く言えばそうなるかな?結羽歌が普段通りに振る舞っていれば私が勘付くこともなかったかもしれないし...」

「結局は...、私のせい...」


 二人を守るつもりだったのに、私がこんなんだから...。気づかれたのが鈴乃先輩だったからよかったけど、もし他の先輩だったらって思うと...!


「あぁ、もうそうやってすぐに自分を責めないの!確かに今回は上手くいかなかったかもしれないけど、二人のこと守ろうと頑張ったんだから、自信持って良いと思うよ!」

「......」

「それにね、私が勘付いたのは結羽歌だけが原因じゃないんだよ」

「他に、何があるんですか...?」

「これ見てよ」


 鈴乃先輩はスマホを取り出し、Twitterのアイコンをタップして私に見せつけた。画面上には音琶ちゃんのプロフィールが映し出されていた。


「音琶のツイート、一昨日の昼から全然更新されてないの。いいねもリツイートも返信も無し。毎日ツイートするような音琶がTwitterに全く触れてないなんて不自然だし。部員のツイート見てれば誰がどの頻度で使ってるか把握できるし」

「あの...、まさか...」

「まさかって?」

「部員のツイート、監視とか...」


 琴実ちゃんや鳴香ちゃんも音琶ちゃんのツイートに関しては色々言っていた。でも、それはあくまで音琶ちゃんのことを理解しているから言えることだよね...?確かに鈴乃先輩も理解しているとは思うけど、どの頻度なのかなんておかしいような...。

 私の顔は恐怖に怯えていた。もう誰を信じればいいのか...。誰か、助けてよ...。


「はっ...!」


 私の質問に鈴乃先輩が我に返ったような表情をした。この優しい先輩も、もしかしたら恐ろしいこと考えてたり、なんてないよね...?だって私と音琶ちゃん、夏音君を呼び出して何度も警告してきた鈴乃先輩だもん...。


「ごめんね、副部長って部長の代わりに部員が何してるのかとか把握しとかないといけないから...。誤解を招くようなこと言っちゃったかもしれないけど、別に今までのことが嘘だったとかじゃないから、信じて欲しいかな」

「......」

「私だってこんなやり方間違ってるって分かってるよ。だから変えたいんだよ、このサークルを」

「......」

「とにかく、私は三人の味方だよ。それは絶対に変わったりしない」

「本当、ですよね?」

「本当だよ!」


 鈴乃先輩、嘘はついてないよね?それとも、私と違って嘘が得意とか...。そうじゃないって私は思いたい。思いたいから、少し不安でも、誰かを信じることだってできる。だから...、


「もっと、鈴乃先輩のこと頼ってもいいですよね?」

「そんなこと、聞くまでもないよ」

「...そしたら、迷惑掛けちゃいます」

「うん、どんどん掛けてよ!結羽歌の悩み事、全部解決させて見せるからさ!」


 何が嘘で何が本当なのか、私にはわからない。でも、私の味方をしてくれる人を頼ることはできる。頼ることが恥ずかしいなんてのは間違いだよね、弱いくせに何勝手に意地張ってたのかな、私。

 まだまだ子供の私は、誰かを頼って強くなっていきたい。そう思って一人の先輩に寄り添っていくことにしたい。

 きっと、大丈夫だよ...。悪いことばかりじゃないって、信じてるから...。


 他にも悩みがあったはずだけど、よくよく考えたら私が悩むまでのことじゃなかったかな?


 ・・・・・・・・・


 ###


「へぇ~、私の知らないとこで面白いことになってんじゃん」


 後を付けてみれば一人の先輩と一人の後輩が向き合って話している光景が目に浮かんだ。会話に夢中で私が聞いてるのなんて気がついてないみたいだし。


「ま、誰かにチクってもすぐ終わっちゃうから、もうちょっと様子見ておこっかな~。こういうのって、少しずつ楽しむもんだしね」


 その時、スマホの振動がLINEの通知を知らせた。


 浩矢:トイレ混んでるのか?

 戸井茉弓:ちょっと混んでます!もうすぐ戻るので


 本当は二人の動向が気になってトイレなんて行ってないけど、いいもの見れちゃった...。

 鈴乃、結羽歌、音琶、そして夏音、か。怪しいと思ってたけど、大体想像通りだったね~。

 さてと、これから楽しいゲームが始まるんだね~。

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