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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第14章 TRUSTiNG ME
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家族、思わぬ着信

 ◈◈◈


「結羽歌~、起きた?」


 外から聞こえる鈴乃先輩の声で目が覚めた。昨日、というより今日だけど、まともに寝た時間が3時近くだったから寝不足気味だった。

 でも最終日なんだし、昨日よりも見たいバンドは多い。だからちゃんと起きないと...。


「お、起きました」

「よかった、準備できたら行くよ」

「は、はい!」


 テントの中は他に誰も居なかった。時間を見ると午前10時過ぎ、一番早いバンドの時間より1時間以上は早く起きれた。

 最終日は一番最後のバンドまで基本自由時間となっている。最悪一日中寝ていても問題ない...、わけではない。ちゃんとライブを見るという条件を果たしているものだけに与えられる時間って言ったらいいのかな。

 誰も居ないから人目も気にせず着替えを済ませ、最低限の荷物を用意できたから外に出る。鈴乃先輩はドアのすぐ目の前に居て、鍔付の紺色の帽子を被っていた。黒い半袖に膝までの長さのジーパンを着ていて、しっかり暑さ対策はできている感じだった。何より大人っぽくて格好良い...。


「お、結羽歌の服可愛いね」

「そう、ですか?」

「うん、実はもう1個帽子持ってるから被ってきなよ。少しは涼しくなるよ」

「そしたら...、ありがとうございます」


 私の今日の服装はというと、鈴乃先輩と同じ半袖で色は薄桃色、袖の部分だけ色が少し濃くなっていて、丈の部分は黒のショーパンの中に入れている。足が細いのには自信あるから、人前で出してもあんまり恥ずかしくなかった。


「結羽歌足細いよね、モデルみたいで羨ましいな」

「本当ですか?ちょっと嬉しいかも、です...」

「そこは素直に嬉しいっていいなさい!」

「はい...」


 キャンプ場からライブ会場まで歩いている途中、ずっとコーデの話をしていたけど、1本の着信によって中断されることになった。

 このタイミングで音琶ちゃんか夏音君からだったらどうしよう...。大丈夫だとは思うけど鈴乃先輩には話してないし...。


「すみません、ちょっと電話来て...」


 念のために鈴乃先輩と距離を置いて適当な物陰に向かう。まだ鳴り続けている画面を見ると、思いも寄らない人からのものであることがわかった。


「も、もしもしっ?」

『あー、お姉ちゃんやっと出たー』

「なんだみうだったんだ、びっくりしちゃったよ」

『なんでびっくりなんかするのさ』


 電話の相手は妹の実羽歌(みうか)だった。3つ年下の高校1年生で、人懐っこい性格をしている。そんな可愛い妹が私に何の用なのかな?


「ううん、ちょっとね」

『もしかしてお姉ちゃん忙しかった?さっきから全然出てくれなかったから』

「そんなことないよ、ただちょっと...、寝てたから...」

『あー、遅起きなんて悪いお姉ちゃんだー』

「昨日は夜遅かったからだよ、それに今フェスだから」

『え?フェスって鳴フェスのことだよね!?いいなー、みうも行きたかったなー』

「大学生になったらきっと行けるよ。それまで我慢だね」

『ちぇー』

「それで、何か大事な用事とかあったの?」


 最近、というよりサークル入ってからずっと忙しかったから、実羽歌と電話する時間全然なかったな...。と言っても、実羽歌も鳴成行きたいって言ってたから、夏休みは勉強漬けだったと思うけど...。


『お姉ちゃん、いつ頃こっち帰ってくるの?早く会いたいな~』


 私の実家はここから高速バスで1時間半ほどの所にある。海がすぐ近くにあって、小さい頃はよく実羽歌と一緒に海水浴なんかしてたっけ...。

 帰省の予定なんて考えてなかったな...。サークルだけじゃなくて自動車学校にバイトもあるし、これ以上予定を埋めるつもりはなかったんだけど、実羽歌からのお願いともなると聞かないわけにもいかないし...。

 でも、サークルのイベントは来月の20日まで何も無いし、帰省するなら今のうちだよね...。バイトも自学も断ればいいんだし、思い切って帰ろうっかな。


「実は私も、早くみうに会いたいって思ってた所だから、28日頃に帰るつもりだったよ」


 折角のお願いだから、たった今思いついたことを口に出していた。これくらいの猶予があればバイトも自学も断れる。1週間くらい帰って、それからまた戻ることにしよう。


『やったー!お姉ちゃんに会えるの楽しみにしてるよ!』

「うん、私も楽しみだよ」

『帰ってきたら一緒に海行こうね!』

「え...?うん、そうだね」


 海、という言葉が出てきてちょっとだけ驚いた。最後に行ったのなんて小学生の時くらいだし、別に泳げないってわけじゃないけど、身体のちょっとした変化と共に恥ずかしくなって自然と避けるようになっていたし...。

 これから水着も買わなきゃいけないけど、あんまり露出の多いのはやめておこう...。


 ・・・・・・・・・


「すみません、お待たせしました」

「いいのいいの、きっと大事な連絡だったんでしょ?」

「はい、妹からでした」

「へえー、結羽歌って妹居たんだ」

「はい、今高一で鳴成目指してるんです」

「そっか、きっと結羽歌のこと大好きなんだね」

「鈴乃先輩は兄弟居るんですか?」

「うん、二つ下の妹と、四つ下の弟。妹の方は受験生だからね、お姉ちゃんと同じ大学行くんだって言ってて勉強頑張ってるみたいだよ」

「弟さんも、いるんですね」

「うん、丁度反抗期で大変だってこの前お母さんから連絡来てた」


 こうして鈴乃先輩とお互いの家族の話をしていると自然と笑顔が込み上げてきた。どうして家族の話をするのって、こんなに楽しいのかな。


「あれ、結羽歌今笑った?」

「あ、えっと...、そうかも、しれないです」

「よかった、元気になったみたいで。電話出る前と後で別人みたいだったよ」

「そんな...、でも、妹の声聞けて良かったのは、あります...」

「そしたら、盛り上がる準備は出来たかな?」

「はい...!」

「もうすぐ始まるから、行こっか」


 時間をみると11時過ぎ、あと30分もしないうちに最初のライブが始まろうとしていた。鈴乃先輩の後を追いながら、私もステージに向かっていた。

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