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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第14章 TRUSTiNG ME
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最終日、来たる日の幕開け

 ***


 8月24日


 この日も早起き。昨日は帰ってからシャワー浴びて、そのまま就寝。私も夏音も疲れ切ってすぐに深い眠りの世界に引きずり込まれていた。

 それでも時間は待ってくれない。目覚ましの音で目が覚め、今日という日が幕を開ける。私にとっての大事な日、絶対に逃すことのできない時間。どう思われたって構わない、覚悟を決めてるんだから。


「おはよ、夏音」


 ベッドから起き上がり、隣で寝ている夏音を起こそうとする。声を掛けてもなかなか起きないな...。

 こうしてじっくり夏音の寝顔を見ていると、結構可愛い顔してるんだなって思ってしまった。普段は全然笑わないし、目つきだって悪い。でも、今の夏音は幸せそうに眠っていて、いつもと違って見える。実を言うと夏音は結構整った顔立ちだし、笑えば普通に好青年だと思う。まだ一度も夏音が笑ったとこ見たことないから、いつか私が笑わせてあげれたらいいな。

 当の夏音は未だに起きる気配がない。いつも早起きの夏音だけど、昨日何だかんだで凄い楽しんでたし、疲れてるよね...。今度は私が起こしてあげる番なのかな。

 どうやって起こそう、と考えたけど、いつも私の頭を撫でてくれてるから、今度は私が夏音の頭を撫でてあげることにした。それで起きてくれるかな。


「......」


 ダメだ、全然起きない...。どうしたら起きてくれるんだろう...。えっと、寝てるんだし、バレないようにキス、とか...。

 そう思うと唐突に全身が熱くなった。付き合って1ヶ月経つけど、キスなんて1回もしたことないし、ましてやまともに手を繫いだこともない。

 どうしよう、でも夏音が起きてくれないと外出れないし、何が何でも一緒に行きたいし、だとしたらどんな手段を使ってでも起こさないと...!


「よし!」


 意を決して私はベッドから降り、夏音の寝顔に顔を近づける。無防備な唇に狙いを定めて私も唇を近づけ、もうすぐ触れそうになったとき...、


「...は?」


 唐突に夏音の瞼が開いた。それに気づいた私は咄嗟に立ち上がろうとしたが手遅れだった。


「なんつー格好してんだお前は」

「...え?」


 顔が近いことには触れず、想いもしなかったことを聞かれていた。よくよく見れば私はパジャマを上しか着ていなくて、下のボタンが2つほど外れていたからパンツとおへそが丸見えだった。

 疲れてたからシャワー浴びてすぐに寝たから自分の格好なんて気にも留めず、今になって恥ずかしさに苛まれる結果になってしまった。こんなもろに下着なんて見られたこと無かったのに...。全裸は見られたけど。

 早朝からハプニングの連続で頭の中がパンクしてしまいそうだ。そんな私に夏音はこう言ってくれた。


「すまんな、想像以上に疲れたから起きれなかったのは許してくれ。起こそうとしてくれたんだろ?」

「え、うん...」

「ありがとな」


 夏音にこうしてお礼を言われたのは初めてだった。こんな素直に言われるなんて拍子抜けしてしまいそうだけど、嬉しかった。

 私も急いで着替えてフェスの最終日に望まないと...!


 ・・・・・・・・・


「相変わらずいい服持ってるよな、お前」

「そう?夏音に可愛いって言われたいから頑張ってるんだよ」


 バスを待っている間、夏音が私の服装について言及してきた。こうして良い服持ってるなんて言われると嬉しいな。

 今日の私の服装は、昨日とは一転して動きやすい格好になっていた。やっぱりオーバーオールだと肩に負担がかかることが分かったから、今日は半袖に短パンと涼しげな服を用意した。流石に2日連続でへそ出しにはしてないけど、あれは見えてないから出したことにもならない...?うーん、それはどっちなのかわかんないかな。

 でもやっぱり腕も足も出すからには虫除けスプレーが必須だし、こんなに暑いと軽装がぴったりだった。


「まあ、太い足を堂々と出せるその度胸にも感服だけどな」

「なっ...!長ズボンだと暑いんだもん!それにそんなに太くない!」

「くれぐれも俺以外の男に見せつけるんじゃねえぞ」

「見せるわけないじゃん!」


 頬を膨らませ、上目遣いで夏音に言葉を投げる私。昨日の疲れを感じさせないかのように、いつも通りの会話に花を咲かせる二人の姿がそこにはあった。


「今日のLoM、楽しみだね!」

「まあな、俺としても最後に見たのがいつなのか思い出せないくらいだし」

「そっか、そうだよね...」


 あの日、私はライブに行っていた。それは確認するまでもなかったかもしれない。今ここでそれを言ってしまったら、あの時何故私が夏音の前に現れたのかが分かってしまう。

 それを言うのは、まだ早い。言うなら、今日のLoMが終わった後。今この瞬間でも緊張して手が震えそうになっている。何とか抑えようとして、夏音と他愛のない話を繰り返す。


 私が夏音と初めて会ったあの日のこと。何故あそこで巡り会えたのか、それはこれから見るバンドと無関係ではないのである。

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