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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第13章 サマーフェスティバル!
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遭遇、思わぬ所で

 ◈◈◈


 時間は夕方17時、あと1時間もすればテントに戻らないといけない。幸い、この後みたいバンドはなかったから特に嫌味も言われる心配はないはず。


「さっきの良かったわよね!」

「うん、ベース、凄かったな...」


 あれから鳴香ちゃんとは別れ、今までずっと琴実ちゃんと二人で廻っていた。鳴香ちゃんは一人なのかな...?私があんな余計なこと言わなかったら、今頃三人で廻ってたのかな...?


「琴実ちゃん、鳴香ちゃんと、何があったの?」

「......」


 私の問いかけに、琴実ちゃんが黙り込んだ。反応を見て私は後悔する。いつもそうだ、気になったことを遠慮なく言っちゃって、誰かを傷つける、私の悪い癖。

 鳴香ちゃんと途中で別行動になったのも私が原因なのに、学習せずに同じようなことを琴実ちゃんに聞いてしまった。


「あっ...、琴実ちゃん、ごめんね」

「...別に謝ることじゃないわよ」

「でも...」

「いいのよ、大体あいつから私達の間に入ってきたんだし、結羽歌が気にすることなんかじゃないわよ」

「......」


 琴実ちゃんの今の言葉から、二人の間が想像以上に複雑であることが窺えた。


「結羽歌が私の事心配してくれてるのはすっごい嬉しいよ。でもね、私の問題だし、結羽歌は私の心配する前にもっとやるべき事あると思う」

「う、うん。新しいバンド、組みたいから...」

「大丈夫よ、別に私は鳴香が嫌いってわけじゃないんだから。先輩達にも相談してみるわよ」

「......」

「もう、そんな顔しないの。牛タン奢ってあげるから元気出してよ」

「あっ...!」


 私が言葉を出すよりも早く、琴実ちゃんは牛タンの売っている屋台の方へ走って行ってしまった。確かにお腹は空いてるけど、琴実ちゃんに奢らせることになっちゃって、さっきよりも申し訳ない気持ちが大きくなっていた。私、本当にダメなこだな...。

 琴実ちゃんが並び終わるまで列の後ろの方で待つことにしよう...。明日はこんな気持ちにならないことを願いながら、今日一日の反省をして...。


「ゆ、結羽歌!?」

「えっ?」


 ふいに名前を呼ばれて思わず顔を上げると、そこには音琶ちゃんが立っていた。まさかこんな場面で遭遇しちゃうなんて、これは不幸中の幸いなのかな...?

 それにしても音琶ちゃんの服装、大胆だな...。オーバーオールだから前が隠れているとは言え、流石にお腹周りは外では出せない。前一緒にお風呂入ったときはあんなに恥ずかしがってたのに...、これくらいの露出だったら大丈夫なのかな?それとも...、


「音琶ちゃん...」

「いや~、こんなところで会っちゃうなんて...、人多いから誰とも会わずにいけると思ったんだけど...」

「うん、会ったのが私で良かったね」

「ほんとだよ~、これが先輩達だったら大目玉だよね~。結羽歌だったから思わず話しかけちゃった」


 音琶ちゃん、楽しそうだな。私とは正反対だよ...。


「夏音君は?」

「あー、あいつとは今別行動」

「そうなの?」

「うん、見たいバンドの時間がね...。本当はずっと一緒に居たかったんだけど」

「そうだったんだ」

「結羽歌は一人?」

「ううん、琴実ちゃんと。今屋台行ってて、私は待ってる状態」

「へえ、楽しそうでよかった」

「......」


 音琶ちゃんには、私が楽しそうに見えたのかな...。音琶ちゃんは大好きな人と一緒にライブ見て、美味しいもの食べて、きっと幸せなんだろうな...。


「勿論だけど、今ここで話したこと部員には内緒だからね」

「うん、大丈夫だよ」

「そしたら私はそろそろ戻るね!何か困ってることあったらお互い連絡しあおうね!」

「う、うん!」


 音琶ちゃんはそう言ってその場を離れようとしたんだけど...、


「へ、音琶?なんであんたがここに居るのよ?」


 思いの外早く、牛タンを片手に2本持った琴実ちゃんが戻ってきていた。タイミングが...。


「げっ」

「琴実ちゃん...」


 罰の悪そうな顔になる音琶ちゃん。私は私で背筋が凍る感触に襲われる。別に琴実ちゃんのことを信用してないってわけじゃないけど、隠していることがバレると頭の中が真っ白になってしまう。


「てか何その格好、あんた痴女?」

「え、そこから!?って、違う!!」


 思わぬ質問からの突っ込みと、恥ずかしさから顔を紅くする音琶ちゃん。私も言葉にはしなかったけど、音琶ちゃんと思ってることは一緒だよ、琴実ちゃん...。


「ま、まあいいわ。あんたがどんな服着ようが勝手だし...。それよりも!どうしてここに居るのよ、欠席してるんじゃなかったの?」

「あー、まあ色々とね」

「誤魔化さない!本当のこと言わないと先輩にチクるわよ!」


 それだけはやめてほしいな、だって音琶ちゃんがこうなったの私が原因なんだもん...。無関係じゃないもん...。


「琴実ちゃん、一旦落ち着いて。音琶ちゃんもこの際本当のこと言っちゃおう...?」

「むむ...、本当のこと言ったらチクらないって約束できるんなら...」

「言わないわよ、私がそんな薄情者に見えるかしら?」

「あ、ごめん。それにしか見えない」

「音琶!!」

「もう!言い争ってる場合じゃないよ!」

「「!!」」

「あ...」


 思わず大きな声で言っちゃった...。いくら我慢の限界だからってこんなのはダメだよ...。こんな大きな声出したことなかったから、2人とも驚いていた。


「ご、ごめん」

「悪かったわよ」


 上手くいかない人間関係にうんざりしていたのかもしれない。まともに喧嘩なんてしたことなかった私からしたら、誰かが争っている所なんて見たくないのかもしれない。誰よりも優しくなりたい私だけど、私が居ることで誰かを不幸にしているようにしか思えなくて、辛い。

 それから音琶ちゃんは正気を取り戻して、琴実ちゃんに全てを話した。


「ふーん、なるほどね。確かに先輩にチクったら結羽歌にまで火花が飛んでくるわね」

「だからあいつらには黙ってたんだよ、結羽歌にも負担掛けたくなかったんだけどな。誰かに見つかるリスクはあるけどさ」

「なかなかの度胸じゃない、私は黙ってあげるけど、他の部員に見つかったところで責任は取れないわよ」

「別に良い。あと...、ありがと、黙ってくれるみたいで」

「こう見えて私は口堅い方よ?よっぽど嫌いな相手じゃない限り秘密は守る人だから!」

「へえー」

「何よその顔、丸っきり信用してないわね」

「別に~」


 大丈夫、琴実ちゃんは約束は守る人だよ。私が良く知っている。だから音琶ちゃん、琴実ちゃんのこと信じてあげてね。


「今日はこの後何するの?」

「サークルの方、だよね?」

「うん」


 音琶ちゃんは私に視線を移して聞いてきた。


「18時に一旦集合して、バーベキューだよ。そのあとは何するか特に言われてないけど...」

「そっか、飲み過ぎには気をつけてね」

「うん...」


 もう既にビール三杯飲んでる、なんてこと言えるわけがなかった。音琶ちゃん、ごめんね。

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