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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第13章 サマーフェスティバル!
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解散後、二人に何があったか

 ◈◈◈


 午前中は特に見たいバンドが無かったから3人で適当に会場内を歩き回ることにした。沢山の出店から漂う美味しそうな匂いに釣られる私達だったけど、物販も見ておきたいな。そろそろいくつかのステージではライブが始まっていると思うし、早く並ばないとすぐに売り切れちゃうよね。


「琴実、あなたこれで何本目?いくら美味しいからって食べ過ぎだと思わない?」

「何言ってるのよ、こういった所でしか食べれないから今のうちに沢山食べておくのよ!」

「太っても知らないわよ」

「ぐっ...!」


 牛タン串を頬張る琴実ちゃんを鳴香ちゃんが呆れ顔で眺めていたけど、そんな私は...。


「...って、結羽歌もこんな早い時間からビールって...」

「えっと、暑いから喉渇いちゃって...」

「ジュースでいいじゃない、お酒は夜に飲むからこそ美味しいってのに」

「車の中では飲まなかったの?」

「はあ!?あなた車の中でも飲んでたってこと?」

「いや...、先輩達が飲んでたから、つい...」

「普段から飲んでるとは思ってたけどここまでとはね...」


 食べる琴実ちゃんと飲む私、そしてまだ何も口にしてない鳴香ちゃん。3人ともやってることがバラバラで協調性がなかった。多分、この3人ではバンド組んでもすぐに解散になりそう...。ベーシストが2人居る時点で組むことはできないけどね。

 遠くから見える大きなステージからは微かに演奏の音が聞こえていた。音琶ちゃん達はあそこに居るのかな...?

 この距離からだと観客の雰囲気が良く見える。右手を上げながら掛け声をして、胴上げしたりぶつかり合ったり、中には天高く何かを投げている人も居た。

 初めてとは言え、もうちょっとその場の雰囲気を予習していた方が良かったかな...?酔っていたら楽しそうだから今のうちにお酒のペース上げておこう、かな?


「ごめん2人とも!出店並ぶから待ってもらえる、かな?」

「え?いいけど」

「いってらっしゃーい」



 数分後


「だから、あなたって人は...」


 右手には紙皿に盛られたカレーライス、左手にはビールが並々に入ったプラカップ。それを見た鳴香ちゃんは呆れ顔を暫く崩すことがなかった。


 ・・・・・・・・・


「ライブの方見ないで飲み食いばっかりしてるとこ先輩に見られたりしたら怒られたりしないかしらね?」

「間違いなく怒られると思うけど」

「自由行動なんだから怒る理由がわからないかなー」

「だったらなんでそんなこと私に聞いたのよ...」


 やっぱり琴実ちゃんと鳴香ちゃんって仲悪いよね...。こうして2人が話しているとこあんまり見たこと無かったし、最初のバンドの見学させて貰ったときも意見交換はしていたけど、お互いに納得出来ていたのか、と問われると微妙だな...。


「ね、ねえ。この際だから、聞いてもいい、かな?」

「「何よ」」

「ひっ!?」


 私の問いかけに2人が鋭い眼光で睨みつけてきた。聞かなきゃよかったかな...。


「どうして、琴実ちゃんと、鳴香ちゃんは、仲悪いのかな...?って...」


 それから暫くの沈黙が私達の間でだけ続いた。周りはこんなにも賑やかな空気を醸し出しているのに、私を取り囲む空間だけが異様だった。


「そうね、ただ単に性格が正反対なだけだと思うけど」


 最初に口を開いたの鳴香ちゃんだった。確かにその通りだとは思う。琴実ちゃんを一言で表すなら破天荒、鳴香ちゃんは冷静沈着、って感じだよね?まさに対義語として認識しても違和感はないかな。


「ふん、私はただバンド解散の話をこいつが持ちかけてきたのが気にくわなかっただけよ」

「だから、それは...!」


 琴実ちゃんが言った所で鳴香ちゃんがそれを制するように慌てだした。


「何よ、メンバーが一人抜けた所で誰か誘えばよかったのに、まだ伸びしろだってあったはずなのに」

「確かに、新入生が組んだバンドの中では一番出来ていたって自信はある。でも、私はもっと実力のある人と組みたかったのよ。別に琴実が下手だからとか言っているわけじゃない、私は私のためになるバンドを組みたかったのよ」

「それって、私達とのバンドが退屈だったって言いたいわけ!?」


 琴実ちゃんが声を荒げて言ったせいで、周りの人達が私達に視線を向けていた。どうしよう、折角のフェスなのに...。

 元はと言えば私が二人の抱えていることに踏み込んじゃったのが原因なんだし、ここは何とかしないと...!


「ダメだよ、こんなとこで言い合っても、何にもならないよ...。こういうことって、先輩達に聞いてみるのも手じゃないかな...?」

「「はあ!?」」

「い、いや、だって、先輩達ってあれだけのことしてるのに辞めずに続けているってことでしょ...?もしかしたら、過去にあったこととか、教えてくれるかもしれないよ?」

「「......」」


 先輩達だって、私達に酷いこと言ったりしてきたけど、きっと今まで辛いことがあったからあんなことになっちゃったんだよね?先輩達が全部悪いわけじゃないって思いたいよ...。

 きっと、二人が抱えているのと似たような悩みだってあったはず...、今日の夜には話を聞けるかもしれない、とにかく私達は先輩達のことを知らなすぎなんだ、きっと悪いことばっかりじゃないはずだよ...。

 私の提案が必ずしも二人を納得させる結果になるとは思えないけど、それでも、やっぱり同じ部員だから、仲良くしていたいかな。


「...悪かったわよ、一応あんたの意見も後で聞いてあげようじゃない」

「そうね...、私も言葉足らずだったかもね」


 一応二人が落ち着いて私は胸をなで下ろした。この後二人がどうなるのか、それはまだ誰も知らないことだけど、あんなことになっちゃったのは私が原因なのは変わりなかった。

 このフェス、ライブを見るのが全てじゃないって思い知らされることになるなんて、この時の私は考えもしていなかった。

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