表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第13章 サマーフェスティバル!
188/572

寒気、寒くはないけど

 ***


「へくしっ!!」


 特に風邪引いたわけでもないのにくしゃみが出た。誰か噂でもしてるのかな?


「風邪か?」

「ううん、大丈夫だよ」

「流石にその格好は寒かったか」

「そんなことない!むしろ暑いよ!」


 そう言ってガラ空きの背中に手を触れる。さっきまで歩き回ってたからじんわりと汗が滲んでいて、自分の身体が暑さを物語っている。


「...寒くなったら上着着ろよ」

「うん、そうする」


 私の身体を心配してくれる夏音はいつも、私と目を合わせようとしない。まるで何かを察しているかのように儚げで、すごく寂しそうにしている。表には出してないつもりなのかもしれないけど、私にはわかる。

 夏音が私のこと心配してライブ楽しめてなかったら困るな、だから何とか元気づけて、私は平気だってとこ見せつけなきゃ!


「ねえ夏音」

「今リハ見てんだ、静かにしてろ」

「えぇ...」


 さっきまで私の事心配していたんだよね...?真面目に音楽と向き合おうとしているのは大事だけど、私の気遣いに気づいてよ!もう!

 仕方ないかな、私もリハの様子見て色々学ぼう。こういったライブって、ワンマンとは違うから本番までの過程が見れるのいいよね。流石にPAや照明はよく見えないけど、それぞれの楽器の音作りやチューニングが細かく見れるから参考になる。

 ライブに行ってまで自分の音楽活動の勉強をしているのは変かもしれないけど、上手くなりたい分折角の機会を逃すわけには行かない。

 これから見るバンドはトップバッターということもあってかそれなりのキャリアがあるものだ。多分サークルの人達で知らない人は居ないんじゃないかな?シングルはまだ3枚しか出してないけど、ベースの荒振り具合やギターソロの巧みな技術が沢山の人に受け入れられて、数ヶ月後には大きくメディアに取り上げられるのではないかと思われているそうだ。

 少なくともラジオ番組とかでリクエストされているのは何度か聞いたことがある。あのギターソロ、一応私も弾けるけど、音作りがそこまで得意じゃないせいであまり格好良く演奏出来ないんだよな...。それに3ピースとなると私の場合歌いながらになるから今の練習量では到底足りない。それ以前に男性ボーカルだし。

 てかあのFenderのギター、いくらするんだろう...。ぱっと見20万は超えてそうだけど...。


「音琶」

「えっ?」


 唐突に夏音が話しかけてきた。さっきまで静かにしろって言ってたのに...。


「あのギター、鈴乃先輩が持ってたのと同じやつ」

「えっと...、あっ!」


 水色のFenderのテレキャスタータイプ、前まで鳴香が借りていてやつだ。あれと同じ種類のギターがステージ上に置かれているのだ。

 やっぱり、鈴乃先輩のあのギターはとんでもなく高いのかもしれない。一度も値段は聞いたことなかったけど、鳴香は知っていて借りたのかな?そうでなかったとしても凄い羨ましい。

 鈴乃先輩も、本当はギターを楽しみたくてサークルに入ったんだよね...。あんな高そうなギターを買ってまで、どうしてもやりたかったんだ...。


「あれ、安くても20万はいくだろ。あの人あんな高いの買う金、どうやって稼いだんだ?」

「きっとそれは.........、ギターに対する愛情が深かったんだよ!」

「...はあ?質問の答えになってねえぞ」

「愛情が深いから頑張ったんだよきっと、バイトだけじゃないよ、親にもきっと相談したんだと思う」

「親...、ね」

「?」


 親、という言葉を聞いた瞬間、夏音の表情が険しくなったように見えた。それが見間違いじゃなかったら、夏音も親に関して複雑な事情を抱えているのかな?って思っちゃうかな。私がそうだから、どうしても見比べてしまう。


「もうすぐ始まるぞ」

「あ...、そうだね!楽しみだな」


 たまたま開始時間まで残り3分になっていたから夏音はそう言ったんだと思うけど、そうじゃなかったら何て返していたんだろう。

 気になったけど、ライブ始まるから今はやめておこう。


「へくしっ!」


 またくしゃみが出た。寒くないどころがすごい暑いのに、どうしちゃったんだろう?寒気までしてきた...。やっぱり誰かが噂しているとしか思えないかな。


「大丈夫かよ本当に」

「う、うん。体調は万全ですっ!」


 敢えて強がるような仕草を取ったけど、噂となるとあんまり安心できなかった。次の瞬間、アナウンスとともにステージの照明が明るく光り出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ