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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第13章 サマーフェスティバル!
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噂、居ないからこそ話せること

 ◈◈◈


「さっきから誰とLINEしてるのよ」

「あっ...、いや、ちょっとね」

「へえ~、怪しい」

「そ、そんなことないよ...」


 夏音君に連絡を取り終わって、琴実ちゃんと一緒に会場を廻る。この前のお祭りとは比べものにならないくらいの広さで、大きなステージがいくつも、それに沢山の屋台からは美味しそうな匂いが漂っている。

 大学に入るまでインドア派だった私にとってこんなに人のいる場所に行くのは抵抗あったけど、今となっては色んなバンドがこれからステージに立つんだな、ってことを考えるだけでわくわくしていた。


「なんかさ、結羽歌って変わったよね」

「え?私、そんなに変かな...」

「いや、そういう意味で言ってるんじゃなくて...。えっとね、私以外の人ともちゃんと話せてるっていうか、私としてはちょっと寂しいのよね」

「そんな...、何とかみんなについてこうとしているだけだよ」

「高校まではそうしようと思ってなかったでしょ?私が言うのもなんだけど、あんたは本当によく頑張ってるわよ」

「......」


 琴実ちゃんとはもう、こうして肩を並べて話せないんじゃないかって思った時期もあったから、入学したばかりの時は頑張って他の人にも話しかけようって思ったかな...。日高君にも音琶ちゃんにも、話しかけられた側だけどね。


「二人共、私を置き去りにしてどこに行こうとしてるの?」

「げっ、鳴香...」


 やや棘のある声が背後から聞こえてきて、振り返った琴実ちゃんは気まずそうな表情になった。


「どうしてそんなに嫌そうな顔をするの?私とあなたはバンドメンバーだったでしょ」

「それはそうだけど、なんかあんたは変なオーラがあるのよ!」

「琴実みたいな変人には言われたくないわね」

「二人とも、落ち着こうよ...」


 お互い睨み合う二人を宥め、何とか落ち着かせる。


「少なくとも、仲間はずれにだけはされたくない。折角こうして集まれる機会があるって言うのにね」

「ぐぬぬ、本来ならダメと言うとこだけど、今日だけは特別に許してあげるわ!」

「そう、光栄ね」


 この二人、仲悪いのかな...?一緒にバンド組んでたけど、ギタボが辞めちゃったから解散になって、それまでに何かあったのかな。

 私は鳴香ちゃんが加わって嫌だとは思わないけど、琴実ちゃんがやり辛そうにしてるのを見ると何か緊張する...。鳴香ちゃんとは話した回数は少ない方だからこの機会で仲良くなれたらいいな。


「それはそうと、音琶と夏音は今頃二人して何してるのかしらね」

「えっ...?」


 会場を歩き回っていると鳴香ちゃんが唐突に、さっきまでLINEしていた人の名前を出してきたから思わず飛び上がりそうになった。


「あの2人、付き合っているのでしょう?だとしたらこんな休日に、サークルの予定があるのにも関わらず、二人して欠席するなんて、変だと思わない?」

「えっと...、そうかな...?」


 淡々と、冷静な口調で話す鳴香ちゃんは感情が読みにくいな...。怒っているのかな?って思っちゃうけど、それは私の思い過ごしだよね?

 少なくとも二人が欠席した一番の原因は私なんだよね...。


「それに、昨日から音琶のTwitterが動いてないのよ。あんな毎日何個もツイートするようなこが、不自然よねどう考えても」

「......」


 やっぱり鳴香ちゃんちょっと怖い...。これでもし二人の居場所がバレたら鳴香ちゃんはどうするつもりなんだろう...。その時は私も責任取って一緒に怒られる覚悟は出来てるけどね。


「きっとあれよ、音琶の奴、夏音とくっついてるのよ。それはもうツイートも出来ないくらい何時間もね!」

「「!!」」


 琴実ちゃん...、確かにそうかもしれないけど、ここは外だよ?沢山の人が居るんだよ?ちょっとは躊躇って欲しいかな...。

 その度胸、私にも少しだけ分けて欲しいかも。


「あんまり、陰で噂するのはよくないよ。私が同じ立場だったら、ちょっと嫌かも...」

「へえ、そんなこと言うってことは、結羽歌には好きな人が居るのね」

「!!」

「あ、あれ?まさか図星だった...?」


 戸惑った私を見て、さっきまで冷静だった鳴香ちゃんが焦り始めた。鳴香ちゃん、焦ると声のトーン高くなるんだね...。


「いや...、ちょっとだけ、音琶ちゃんが羨ましいって思っただけだよ」

「えっと...、悪かったわね。でもあの二人はちょっといちゃつき過ぎでもあると思うよ、だから節度は守ってね、それで...」


 鳴香ちゃん、話の軸がどんどんズレてるよ...。琴実ちゃんもなんとも言えない表情してるし...。


「鳴香、結羽歌が困ってるでしょ。少し落ち着きなさいよ」

「あっ...。ごめんなさい、私としたことが...」

「何そんなに考え込んでるのよ、まさかあんたも好きな人いるの?」

「琴実ちゃん、私はまだ好きな人がいるなんて言ってないよ...」

「あら結羽歌、まだってことはこれから言う予定でもあるのかしら?」

「いや、えっと...、そんなわけじゃ...」

「へえ~」


 鳴香ちゃんが恋バナ(?)を始めてから3人の会話が賑やかになって、ちょっと恥ずかしいけど楽しい。今日と明日、ちゃんと楽しめる自信出てきたかな。


「にしても、音琶って色々反則な所多いと思わない?」

「そうね、あのこギター凄い上手いし、盛り上げ上手だし、きっと誰も音琶の代わりなんて出来ないと思う」

「ほんとそれ!しかも反則的におっぱい大きいし!反則的に!」

「私だって...、まだまだ大きくなるはず...」

「きっと追いついてやるんだから!」


 2人の言葉を聞いて、私は無意識に両手を自分の胸に当てていた。音琶ちゃんは殿堂入りとして、琴実ちゃんもそれなりに大きいと思うし、鳴香ちゃんだって、服の上からでも膨らみがわかる。それに比べて私は...。

 音琶ちゃんの胸が大きいのは初めて会ったときから分かってたけど、一緒にお風呂入った私なら二人が知らないことも知っている。実は音琶ちゃん、ちょっとだけだけどお腹出てるんだよね...。太ってるとまではいかないけど、ぽっちゃり体系、なのかな?特におへその下辺りがぷにぷにしてて可愛いかったのをよく覚えている。

 きっと、体脂肪率は私がサークルの女子の中で一番低い、はず。だから自信持とう、体重だって低いんだし...!


「てか結局、結羽歌って好きな人いるの?」


 琴実ちゃん、話を元に戻さないでよ...。恥ずかしいよ...。

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