表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第13章 サマーフェスティバル!
182/572

決事、部屋でのルール

 ***


 きっと、夏音は私について色々推測しているだろうな。夏音の前であんな姿見せちゃったら、誤魔化しようがない気もするけど、まだまだ話せないことが沢山ある。短くても夏音との出会いのきっかけを詳しく話すのは4ヶ月はかかる。それまで確信を突かれるようなことは言えないし、出来ない。


「ただいま~!二日ぶりの夏音の部屋~!」


 部屋に入るなり私はベッドにダイブした。すると後ろから夏音が私の頭を軽く小突いてこう言った。


「先に手洗えよ、一応病人なんだからよ」

「もう病人じゃないもん」

「いいから早く」

「はーい」


 戻ってきて早々夏音にお説教をされたから、言われたとおりのことをする。ちょっとはしゃぎすぎたかな。


「手洗い終わったら話があるからな」

「え?うん」


 何だろう...?じゃないか。どう考えても私の身に起こったことは普通じゃないし、誰だって心配はしてくれるよね?夏音なりに気に掛けてくれてるなら嬉しい。後はちゃんと貧血だってことを証明出来る言葉を上手く探すしかない。

 手を洗い終わり、テーブルの前に座っている夏音が正面に座るように促してきた。一応大事な話になると思うから正座しよう。


「何畏まってんだよ」

「そう、かな?」

「足崩せよ。どうせお前のことだから足痺れたとか言って話止めるんだろ」

「あー...、そうかもね」


 足が痺れるくらい長話になるのかな...?だとしたら何て言おう。ちょっと、いや、かなり緊張してきた。


「俺が何言いたいかってのはな、夏休みの間同居する分最低限のルール決めようと思ってたんだよ」

「.........えっ?」

「何そんなに驚いてんだよ。あんまり好き勝手にされても困るからな、こういうのは大事だと思ってたのだが」

「そ、そうだよね!私は泊まらせてもらってる側だもんね!」


 てっきり私の病気のこと詳しく聞いてくるのかと思った...。さっき貧血じゃないだろって言ってきたし、夏音鋭いとこあるから勘付かれてるのかと思ったけど、心配しすぎたかな?


「俺も貧乏人だからな、水とか電気は無駄遣いしたくない主義なんだよ。それに、洗濯とかは...、纏めてするわけにもいかないからな...」

「洗濯...?はっ!」


 そうだよね、私の衣類も夏音の衣類と一緒に洗濯したら...。乾かすとき夏音に私の下着を取り出させるのは申し訳ない、てか私も夏音も理性が保てなくなってしまう。

 きっとお風呂も...、この部屋はシャワーだけど、時間決めとかないとダメだよね。


「理解したよな...、だから色々決めないとまずいんだよ」

「わ、わかった!うん、早速決めちゃおう!」


 お互い顔が真っ赤だったけど、仕方ないよね。過去にあった事件(?)を思い出しちゃった...。

 それから小一時間、この部屋でのルールをお互いに紙に書いて決めていった。夏音のこうして話し合いながら計画立てるのってなんか楽しいな。本当はずっと一緒に住んでいたいんだけど、私にも帰る場所があるから無理なのが辛いな。

 夏音と話し合って決まったことは、洗濯は個人の衣類しかしない、そして1週間に1回限定。シャワーは順番は気にしなくていいけど1日に1回だけ、勿論一人ずつ浴びる。なるべく外食しない、お腹が空いても間食は控える。合鍵を持つのは禁止されているからできるだけ単独行動は控える、出かけるときは二人で出かける(←最高すぎて昇天しそうだったのは内緒)。バイトの日はどっちかが部屋に居るようにする、シフトもお互いに調整して決める。掃除は1日ずつ交代で、積極的にやる。電気代節約のために夜更かしはなるべくしない、日付が変わる頃には寝るようにする。お金は夏音が全部払ってくれる。って言ったとこかな。

 こうしてルール決めていると、私一人が住み込むってだけで今まで以上にお金が掛かっちゃうから、ちゃんとお手伝いしないとな...。


「ぐーたらしてたら一瞬で追い出すからな」

「もう、わかってるよ」

「ならいい」


 こうして正式に、私は夏音と同居することになった。ちゃんとルール守って、楽しい夏休みにしよう。


「本当に鳴フェス行っても大丈夫なのか?」

「え?大丈夫だけど...」

「流石にライブ中に倒れる、なんてことはないよな?まあ仮に倒れたとしても俺がどうにかするけど」

「大丈夫、多分。ちゃんと規則正しい生活してれば大丈夫だよ」

「......」


 思わず夏音から目を逸らしてしまった。黙り込むってことは、きっと目逸らしたとこ見逃してないよね。


「気をつけろよ」


 そう言うと夏音はテーブルの上に置いてあった鍵を持って玄関に向かっていった。


「どこ行くの?」

「夕飯の食材買いに行くんだよ。お前も行くんだからな」

「う、うん!早くしないと売り切れちゃうもんね!」

「別にそこまで焦る必要ねえよ。こうして一緒に住む以上、多めに買っとかないと余裕なくなるんだよ」

「ありがと!早く行こうよ!」

「だから焦るなって」


 焦っちゃうよ...、だって時間は限られてるんだもん。楽しい時間も、辛い時間も、どれも大切なことなんだから...。

 大切な人と一緒に居れるだけでこの上ない幸せだし、生きてて良かったって思うことができる。


 2日前、私は鳴成大学の大学病院に入院した。ライブ中に倒れて、救急搬送。意識はあったけど全身が冷たくなって、運ばれるまでの時間は長く感じたし、何より苦しかった。夏音に何か言った気がするけど、よく覚えてない。

 本当はあと一週間は居なきゃいけなかったんだけど、それだと鳴フェスに行けなくなっちゃうから、先生には何度も何度も懇願した。そしたら、検査結果次第では二日で退院してもいいという許可が出た。

 流石に長い付き合いのある病院だから先生も私のことよく分かってるし、特に今回はまだ軽い方だったから特別に許してくれたのが嬉しかった。呆れられているのは百も承知だけど、私だってやりたいことまだまだいっぱいあるんだから、それくらいは分かってよね。

 大学病院に通い続けてもうすぐ1年半か...。夏音に出会ってから倒れるなんてこと今までなかったけど、流石に限界だったかな...。もう、大丈夫だと思ってたのに、やっぱりダメだったかな...。

 どっちみち夏音に心配掛けるような素振りは見せないようにいないといけないし、病気のこともバレちゃダメだ。これだけは、何がなんでも隠し通さなきゃいけない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ