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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第12章 19才の夏休み
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人ごみ、そこで見つけたモノ

 リハまでの時間、どこ行こうかなって思っても昨日と屋台の種類が変わるわけでもないし、適当に目に入ったものから食べていこうかな。

 結羽歌と琴実は昨日廻れなかった屋台を探そうとしていたから、私もそれに合わせることにした。


「それにしても...」

「ん?」


 結羽歌は何かを欲しがるような目で私を見つめていた。何か嫌な予感...。


「音琶ちゃん、昨日はいっぱい食べたんだね。いつも以上にお腹がぽよんぽよんだよ」

「え、うん」

「私の目は誤魔化せないよ」

「触るのと摘まむのだけは勘弁してください...」

「え~、仕方ないな~」


 この変態ベーシストには私の身体の多少の変化もお見通しらしい。昨日の夜から少しは戻ったのに、まだちょっとだけお腹が張っている。これは本番まで抑えた方がいいかな...。

 てかそんなにお腹が目立たない服選んだのに、意味なかったみたい。


「...結羽歌と音琶ってできてんの?」

「「え?」」


 琴実は私達の奇妙な会話を聞いて変に捉えたようだ。なんか事態がややこしい方向に進んでる気がするんだけど...。


「2人共よくいちゃいちゃしてるし、音琶って夏音だけじゃなくて女の子も落としたりするのね、そりゃこんな可愛いツインテールに可愛いリボン、それに加えてこんな豊満な胸があれば誰だって寄ってくるか」

「別にいちゃいちゃしてるってわけじゃ...。てか、それだったら琴実はなんで寄ってこないのかな?」

「ふん、私はそんな下道な連中とは違うのよ。もっと節度を守って生きているからね」


 節度を守って...?自信満々に答えてるけど、私は琴実がそんなしっかりした人には見えないかな。私達の間で色々トラブル起こしているし。


「琴実ちゃん、私のことそんな風に思っていたなんて...」

「いや違うわよ、別に結羽歌に対して言ったわけじゃなくてね...」


 余計なことを言った琴実はすかさず結羽歌に言い訳をしていたけど、時既に遅し。言ってしまったことを取り消すのは最早不可能だった。どうせまた強がっているだけなんだろうけどね。

 呆れつつも適当にどの屋台に行こうか迷っていた時、見覚えのある人影を見つけた。


「あれ、日高君?」

 

 思わず声を掛けてしまったけど、人違いではなかったから安心する。


「お、上川か。今日出るんだってな」

「うん、夏音から聞いたの?」

「いや、結羽歌から」

「そうだったんだ、一人で来たの?」

「いや、千弦と」

 

 日高君がそう言って間もなく、瓶のラムネを持った千弦が現れた。もしかしてデートだったりするのかな?


「あ、音琶久しぶり~、またライブ来ちゃったよ」

「こいつ、祭りが心待ち過ぎて予定より2時間早く来てんだよな。振り回されて大変だったんだぞ」

「もう~、恥ずかしいから言わないでよ~。何回も謝ったんだし」

「悪い子は何回でも謝ってもらわないと反省しないからなー」


 日高君と千弦の会話を聞いて、2人共仲良いんだな、と思った。この二人に囲まれて授業受けている夏音がちょっと羨ましい。


「日高くんに...、千弦ちゃんも。来てくれたんだね」

「おう、誘ってくれてありがとな」

「楽しみにしててね、前より上手くなってるから」

「だよな、お前何だかんだ真面目に頑張ってるからな。期待してるぜ」

「ありがと...!」


 結羽歌は恥ずかしそうにそう答え、その後日高君と千弦は人混みの中へと消えていった。そこで私は気づく。結羽歌が日高君に話しかけた時、千弦が居ることに動揺しているように見えた。きっと誘っていないであろう相手が居ることに驚いたわけではないはずだ。

 そして、日高君と話している時の結羽歌の表情。人見知りな結羽歌だから恥ずかしそうにしていることを不思議には思わなかったけど、さっきのは明らかにいつもと違っていた。

 もしかして結羽歌の好きな人って...。


「......」


 思わず結羽歌の表情を窺うと、私の視線に気づいたのか顔を赤らめて俯いてしまった。琴実は何も気づいていない感じで人混みをキョロキョロしていたけど、今の見て何とも思わなかったのかな?最初から何も見ていなかったりして。


「ねえ結羽歌。ちょっといい?」

「えっ!?う、うん」


 琴実にはトイレに行くと言っておいて私と結羽歌は人通りの少ない場所に移動していった。


「音琶ちゃん...」

「恥ずかしがってちゃダメでしょ?」

「う、うん...」


 私だって夏音に初めて会ってから大学で再会するときは恥ずかしくて話しかけるのが怖かったのもある。でも、恥ずかしがってちゃダメなんだ。思い切って何度も話しかけるしかない。そう思って行動し続けていた。


「バレちゃった...、かな?」

「見てたら、そんなのわかるよ」

「そっか...」


 どうやら日高君で確定らしい。でもこの場合千弦はどうなんだろう?結羽歌が日高君しか誘ってないとしたら、日高君は千弦を誘ったことになるのだろう。もしそうだとしたら、結羽歌にとっては辛い事実が隠されている可能性もある。


「千弦は...?」

「誘ってないよ」

「そっか...」


 まだ確定したわけじゃないけど、日高君と千弦のあの楽しそうな感じを見ると...。付き合ってないにしても、いつどのタイミングでくっついてもおかしくないだろう。


「私、どうしたらいいんだろう...」

「結羽歌...」

「日高君に私の成長したベース、見てもらいたかったし、二人だけで話したかったな...」

「もう、まだ本番前なんだから落ち込んでちゃだめだよ。日高君言ってたでしょ、楽しみにしてるって」

「言ってないよ...、期待してるとは言ってたけど、楽しみにしてるとは言ってないよ...」

「あ...」


 やってしまった。励ますつもりだったのに逆に結羽歌を不安にさせるようなこと言っちゃったかも...。ここは同じバンドメンバーとして何とかしないと!


「大丈夫だよ!期待してると楽しみにしてるって同じ意味だから!大体、楽しみにしてなかったら日高君来てないよ!」


 これで良かったかな...?結羽歌は今にも泣きそうな顔しているけど、これでさらに悪い方向行っちゃったらもう後戻りは出来ないだろうけど。


「う、うん。きっと、そうだよね...」

「そうだよ!だから一緒に、頑張ろ?」

「うん...」


 何とか結羽歌は頷いてくれた。後は演奏に支障が出なきゃいいんだけど...。次の瞬間、スマホが鳴ったから確認するとLINEが来ていて...、


 高島琴実:随分とトイレ長いわね、もうすぐ休憩終わっちゃうわよ?結羽歌とレズ××××でもしているのかしら?


「......」


 少々恐怖さえ感じる文章がそこには並んでいたけど、リハに遅刻してしまっては先輩達から大目玉を食らいかねない。私達は急いでステージまで向かうことにした。

 ベーシストって変態しかいないのかな...?

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