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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第12章 19才の夏休み
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二日酔い、自分の立場

 8月15日


 目が覚めると外は明るくて、私は何故かベッドから転げ落ちるような体勢になっていた。


「んん...」


 僅かに痛む頭を押さえて辺りを見渡すと、丁度窓側の壁の端っこで琴実ちゃんが寝転がっていた。どうしてかわかんないけどズボン履いてなくて、薄桃色のパンツが丸見えだった。

 えっと...、昨日は二人で飲み屋行って、その後私の部屋で二次会する流れになったんだっけ。途中で眠くなったのは何となく覚えてるんだけど、それまでに私何してたっけ...。シャワーも浴びてないから、早くこの状況を何とかしないと...。


「琴実ちゃん、起きて」

 

 身体を揺すって何とか起こそうとして数分、ようやく琴実ちゃんは目を覚ましてこう言った。


「結羽歌~、一緒にシャワー入ろお~」

「え...」


 第一声がこれ...?いやでも待って、まだ酔いが抜けてないって可能性もある。こうして琴実ちゃんとまともに飲んだことなかったから、酔っ払った後に何をしてくるとかよく分かってなかったけど、まさかこんなこと言ってくるなんて予想外にも程がある気がする。

 確かに、シャワー浴びてないからそんなこと言っちゃうのもわからなくはないけど...、せめて自分の部屋で浴びてもらいたいかな...。


「もう、何言ってるの?早く帰るよ。あとズボン履こうよ」

「やだ~」

「どうして?」

「だってシャワー浴びてないんだもん」

「うーん...」


 琴実ちゃんの部屋って確か私の部屋よりも割と歩く距離にあったよね、その間誰かに会ったらってこと考えて言ってるのかな...?それなら一緒に入ってあげても...、一応今浴びたい理由は聞いておこうかな。


「今浴びないとダメ?」

「うん、だって今まで結羽歌と一緒に浴びたことなかったでしょ?」

「えっと...」


 仰向けになって、遅めの口調で琴実ちゃんはそう言った。


「私と一緒に浴びたいって理由だけ?」

「さっきからそう言ってるじゃない...。今逃したら次いつチャンスが来るかわからないでしょ?」

「......」

「それに、お風呂入ったら酔いも覚めるって言うじゃない?一石二鳥だと思わない?」

「......」


 えっと、お酒飲んだ後とかにお風呂入るのって健康に良くないんじゃなかったっけ...、ある程度落ち着いて、しっかり休んでから入るべきって話聞いたことがあるんだけどな...。


「もう、ダメだよ、今は安静にしてないと。私部屋まで送るから、それでいいでしょ?」

「だめーー!!」


 私の説得も虚しく、琴実ちゃんが無理矢理とばかりに身体を起こして何とか立ち上がった。その後すぐに座り込んじゃったけど。

 二日酔い患者を間近で見るのは初めてだったからびっくりしたけど、音琶ちゃんは毎回酔った私のこと介護してくれたんだな...。同じ事されてやっと責任の重さに気づけた気がする。いつもなら私が二日酔いになっていたんだし...。


「だって、結羽歌までこのままの状態で外出ちゃったら、通りすがりのおじさんに何言われるかわかんないんだよ!?」

「人目避ければ大丈夫だよ...」


 琴実ちゃんの例えがよくわからなかったけど、私も何とかして説得を続ける。


「人間なんて神出鬼没、どこで何が起こるかわからないのよ!私と結羽歌が一緒にお風呂入れば何も起こらないで済むんだから!」


 流石に今の琴実ちゃんの状態だと、一人で帰すわけにはいかなそうだし、万が一のことだって起こらないとも限らない。このまま言い合う時間も勿体ないし、流されてあげてもいいかな...。


「...もう、仕方ないなー」

「やっと折れてくれたわね!」

「今回だけだよ、それに私だって飲み過ぎたし、責任あるもん」

「やったー!」


 よっぽど私と浴びたかったのかな、琴実ちゃんはフラフラなのに凄い喜んでいた。多分私が身体洗ってあげることになるんだろうな...。明日ライブだから出来ればゆっくりしたかったんだけど、無理みたい。

 時計を見ると午後の1時を過ぎてて、勿論昨日の夜中から何も食べてないからお腹が空いている。琴実ちゃんを説得している間もずっとお腹鳴ってたし、上がったら何か食べに行こうかな。とても自炊できる体力もないし。

 脱衣所に行っても琴実ちゃんは支えがないと立つことができてなかったから私が色々してあげることになった。1つに結ばれた長い髪を解いてヘアゴムを洗面所の棚に、予め用意しておいた替えの服をカゴに入れておいて、洗濯する服も分けた。琴実ちゃんには申し訳ないけど、服は洗濯して乾いたらすぐに返そう。それはいいとして、服のサイズ大丈夫かな?

 その後何があったか...、琴実ちゃんは何に欲情したのかわからないけど、酔った勢いで私の胸とかお腹をさすってくるし、洗ってあげようとしたらタオルを奪い取って自分が洗うみたいなこと言ってくるしで今まで以上に面倒くさかった。胸の大きさとか比べられたり、『胸よりもお腹の方が柔らかい』とか言ってきたし...。

 私だってまだ小さいだけで全く無いわけじゃないし、ハタチになるまでには絶対に大きくなるし、背だって伸びてくれるって信じてるんだもん...。確かに琴実ちゃんは、音琶ちゃんに叶わなくとも胸も大きい方だけど、身長は私と5センチくらいしか変わらないんだよ?いつ抜かしてもおかしくないと思うな。

 誕生日が11月だから、あと1年と3ヶ月あればいつ成長期が来ても不思議じゃないもん!


「ねえ結羽歌、この服きつくなかしら...?」

「これくらいのサイズしかないんだし、借りてる身分なんだから、贅沢はダメだよ」

「でも、これだと胸が苦しいんだけど...」


 私の服だと琴実ちゃんと胸の大きさが合わないのは仕方ないことだよ。それが嫌だったら自分の部屋でシャワー浴びれば良かったんだもんね。


「お家帰ったら着替えればいいんだし、この格好が嫌だったらさっさと帰ればよかったんじゃないの?」

「うぅ...、悪かったわよ...」

 

 流石に自覚はあったのか、琴実ちゃんは申し訳なさそうな表情になった。私がちょっとむくれてるのに気づいてくれたのかな?


「...もう酔いは覚めたの?」

「大丈夫よ、迷惑掛けてごめん...」

「もう、いいよ」


 落ち込んでいる琴実ちゃんをこれ以上責めるのは申し訳ないかな、許してあげることにした。明日はライブなんだし、嫌な空気のままではやりたくないよね?


「ちゃんと、部会来るのよ。きっと大事な話が沢山待ってるに違いないのよ!」

「そういう琴実ちゃんも、寝坊しないようにね」

「さっきまでいっぱい寝たから大丈夫よ」


 自信ありげな顔で琴実ちゃんはそう言って帰って行った。それにしても、あの格好で帰るの本当に恥ずかしくないのかな...?

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