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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第11章 放課後のStudy
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テスト、そして訪れる夏休み

 7月28日


 昨日は少し遅くまで勉強して、朝早くに起きる。普通に考えて不健康なのは承知だけどこれから数週間、長い戦いが始まるのだ。そう考えたら時間が惜しくて仕方がない。


「おはよ、音琶」

「おはよー、昨日寝れた?」

「うん、一応ね」


 教室に着くと、机に突っ伏した悠来が朝の挨拶をしてきた。どうやら悠来も遅くまで起きていたみたいで、疲れが溜っているように見えた。


「悠来はもうテストばっちり?」

「うーん、過去問何回もやったからきっと大丈夫。その分覚える問題結構多くて睡眠不足だけど...」

「何回もやったんなら大丈夫だよ、きっと満点」

「それは大袈裟だよー、秀は取りたいけどね」

「一緒に頑張ろう!」

「うん、試験は団体戦っていうしね!」


 17歳の時に大学受験を決意してから2年、あれほど自分の人生で頑張ったときはないかもしれない。あのような経験をしちゃったから、今後どんな試練があっても乗り越えて行けそうな錯覚に陥ってるかも知れないけど、今回だって自信を持って大丈夫と言えるくらいは勉強した。

 1週間前は不安だったけどそれはもう過去の話だ。あとは自分の努力を信じて頑張ろう。


 ・・・・・・・・・


 テスト中、考えたことは沢山ある。勿論勉強は欠かしていない。


 テストが終われば夏休み、夏休みはやりたいことがいっぱい、好きな人といる時間が増える。だから頑張った分うんと遊びたい、遊んでやる。

 自分の夏休みの予定はもう立てていて、サークルも勿論、集中講義や鳴フェス、あとは夏音の予定聞かなきゃいけないけど、2人共空いている日があれば毎日会いたいくらいだ。部室で適当にセッションしたり、どこか遠い所に出かけたり、部屋に入ってご飯食べたり、何だっていい。

 

 身体が弱かった私は、昔から思うように遊ぶことも、外に出ることもできないでいた。

 学校に行けなかったのは、体調のいい日と悪い日に左右されていて、保健室が私にとっての教室のようになっていたからだ。私の事情を知らないクラスメイトから向けられる白い目、それが怖くて、どうしようもなくて、学校に行くことが怖くなっていた。


 空っぽだった私の心、それを救ったのは一本のギター。今だって部屋にある。忘れるわけがない。それからも辛いことがあって、私にとっても良くないことがあったけど、新しい出会いがあって、私は生きる意味を見つけることが出来た。

 音楽に触れてから、不思議なことに身体が思うように動くようにもなっていた。

 

 これからまた何が起こるかは誰にも分からないけど、目の前の青春をじっくり味わいたい。まだ、私の知らない何かが待ち受けているかもしれないから。


 


 それに、いつ、その日が来るのかも、わからないから。



 ・・・・・・・・・


 8月12日


 あれから2週間ほど経った。テストは全て終わり、夏休みに突入した。夏音はまだあと2日あるみたいだけど、順調に進んでいるらしい。全教科満点目指すとか言ってたけど、夏音なら本当にやってしまいそうだ。

 教科によっては掲示板で合格者の張り紙がされているけど、今のところ落としている教科はない。何とか上手くいったようで、紙の前で私は胸をなで下ろす。

 

「ねえ音琶...、私物理再試だよー」

「過去問貰ったんじゃなかったっけ?」

「それが、去年の問題半分しか出てなくて勉強してないとこばっかりだったんだよー...」


 悠来が肩を落としながらそう言ったけど、やっぱり過去問に頼るのはよくないな、って改めて感じた。ちゃんと板書取ってたのに、結局は過去問に全部任せちゃったんだね...。


「だ、大丈夫だよ、きっと再試は本試と同じ問題出るはずだから...」

「そうだといいんだけど...」


 上手くフォローしたけど、あまり効果なかったかな?


「てかさ、悠来は夏休みにジャズ研のライブあるよね?」

「うん、あるよ。結局XYLOは集客きついかもって話になってまた体育館ですることになるけどね」

「そ、そうなんだ。ちょっと残念」

「でも楽しみにしててね、あの時より上手くなってるから」

「うん、楽しみにしてるよ」


 何となく、悠来が再試になった理由が分かった気がした。

 部屋に戻ったらテストの疲れを癒やすためにシャワーでも浴びようかな、そう思いながら帰り道を歩いていると、スマホが振動した。

 画面を見ると結羽歌からのLINEだった。なんかアイコンがベースの画像に変わってる。


 池田結羽歌:音琶ちゃん、大変だよ!


 私はその文面を見て、何が起こっているのか理解出来なかった。でもそれは、後で私に訪れる夏休みは平和なものにならない、という事を思い知らされる引き金でもあったのだ。

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