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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第11章 放課後のStudy
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過去問、先輩から

 7月25日


 あれから毎日、夜になったら奴らを俺の部屋に集めてテスト勉強をする日々が続いていた。継続的に勉強を重ねていけば嫌でも授業でやったところは身につくわけで、最初は苦戦していた日高も結羽歌も段々とペンの進み具合が速くなっていた。

 そして今日も同じ事をしていこうと思ったのだが...。


「何で3日後にはテストが始まるのにこんなことになってるんですか?」

「ごめんね、こればかりは私もどうにもできなかったんだ...」


 金曜日の夜、部会では特に話すことがなく、鳴フェスに行く人がなぜか新たにLINEグループを作られていたくらいのものであった。嫌な予感しかしなかったから俺と音琶は敢えて何も言わずにやり過ごしたが、もし当日誰かと出くわしたら何か言われそうだな、そこは気をつけた方が良さそうだ。1年生は俺と音琶以外全員グループに入っているみたいだし。

 そこまではまだいい。俺が問題視してるのは何故このような大事な時期になっても飲み会をしているのかということだ。部会なら手短に済ませることは出来るだろうからそこに関しては文句を言うつもりはない。毎週18時半から数十分、長くても1時間は掛からない、飲み会がなければ遅くても20時には勉強が出来るだろう。

 そんなことも気に留められず、当たり前の様に飲み会は始まってしまう。もうこの際やりたい奴だけがやれば良いと思うのだが。今こうしている内にも貴重な時間がどんどん奪われていくというのに。


「そういう鈴乃先輩は単位とか大丈夫なんですか?」

「うん、副部長なりに上手く時間使ってるから。特にテスト期間は先輩達を上手く言いくるめてサークル活動サボったりもしてるし」

「てことは余裕ってことですね」

「うん、何だかんだでまだ単位落としたことないし」

「...もしかして、クラスに友達いないんじゃ」

「まあそうだね」

「......」


 鈴乃先輩もある意味賢いということなのだろうか。サークルに費やす時間が長いから、何かを犠牲にしなければいけないと感じているのだろう。勿論勉強を犠牲にするなど以ての外だから、人間関係を構築せずにここまで来たというわけだろう。

 俺だって高校時代までは勉強とドラムに時間を使いまくってたから、今の鈴乃先輩と似たような状況だったのだろう。他人を見ていれば自分と比較して色々分かってくるな。


「そういう夏音はどうなのさ?まあ私に勉強の話してくるってことは大分ピンチなんだろうけど」

「別に、単位くらい馬鹿でも取れますよ。ただ問題はGPAじゃないですか」

「ああ..」

「別にどこに就職するとかは考えてすら居ないですけど、高い学費払ってる分にはそれに相当する成績くらいは収めておくべきだと思いませんか?単位取っただけで満足するような馬鹿にはならないんで俺は」

「夏音...、酔ってる?」


 長々と話したせいで鈴乃先輩が心配するように聞いてきたが酔ってるわけがない。あくまで正論かましただけだったのだが逆に心配されてしまった。


「そう言えば、テストの過去問とかって貰えたりしますかね」

「夏音学科どこだっけ?」


 鈴乃先輩に聞かれ、自分の学部と学科を答える。


「あー、そこなら杏兵に聞いたら?」

「はあ...」


 大野杏兵(おおのきょうへい)先輩、2年生で鈴乃先輩達と同じバンドを組んでいるギターボーカルの先輩だ。耳にいくつかピアス付けてる割にはそこまでいかつくなく、酒さえ飲まなければまだ会話できる程度の人だとは思いたい。新歓の時に音程外し気味のボーカルを披露していたわけだが、あれから少しは上手くなったのだろうか。

 今はそんなことはどうでもいいな、日高に頼まれてるわけだし、聞くだけ聞いてみるとするか。


「ありがとうございます、聞いてみますね」

「はいよ」


 杏兵先輩とはそこまで関わったことがない...、というよりかは俺自身鈴乃先輩以外の先輩とは極力関わらないようにしてるから、特に誰がというわけでもないな。取りあえずまずは過去問が確保できるかの問題だけども。

 丁度榴次先輩と飲み会っている杏兵先輩を見つけ、そこに入っていく。


「いきなりですけど、テストの過去問持ってたりしますか?」

「ん?」


 いきなりの俺の登場に驚いたのか、逆に聞き返してくる杏兵先輩。そして...、


「あれ?確か同じ学科だったっけ?」

「そうですよ」


 さっきまで知らなかったけども、あたかも最初から知っているかのように返した。


「えっとね、英語は持ってないけど、微積と化学...、あと生物学はあったかな?第二外国語は何取ってる?」

「ロシアですけど」

「あー、俺は韓国だからそれは駄目か...」

「いや、もらえるだけもらっときます。友人が欲しいって言ってたんで」

「なるほどね、いつ渡す?」

「テスト3日後に始まるんで、明日の昼に部室でお願いします」

「わかったよ」


 飲んでいるとは言え普通に呂律廻ってるし、そこまで危険な人というわけではないんだよな。茉弓先輩や兼斗先輩、浩矢先輩と言った狂気も感じられないし、普通の日常会話くらいはできる人なのだろうか。

 確かめる方法と言ったら、その過去問を欲しがっている奴のことを覚えているかに掛かっているのだが、今ここで聞き出してしまおうか。いや、他の先輩もいるし今はやめておこう。聞くとしたら、明日過去問を貰う時だな。

 少しは先輩と会話してみて、誰がどのような性格しているのか把握した方が今後のためになるかもしれないな。だからと言ってあんたらとは鳴フェスには行かないけども。

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