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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第11章 放課後のStudy
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方針、少しだけの変化

 最初のバンドが終わるまで敢えて後ろを振り向かずに居たが、音琶の照明技術は格段に上がっていた。いつの間に練習していたのかと聞きたいところだ。


「言われた通り来てやったぞ」

「あ!えっと...、ご来店ありがとうございます!」


 接客モードに入るのに一瞬のタイムラグがあったものの、それ以降はいつも通りの音琶だった。以前注意されたことをしっかり意識しているようだ。照明を上手くすることもできて満足なのか、電話越しで泣いていた人とは思えない表情をしていて、それを見て俺も少し安心する。


「てか結羽歌も居たのかよ、音琶とは仲直りできたのか?」

「いや...、最初から喧嘩なんて、してないよ?」


 あくまで俺と音琶の間で話していたことだったし、仲直りなんて言葉使うのは迂闊だったか...。それはともかく...、


「もう夏音、変なこと言わないの!結羽歌だって頑張ってるんだから!」

「いつの間にか照明入ってたんだな」

「うん!夏音の見てないところで色々教えてたんだ!今は私がサポート入れてるけど、あともう少し経験積んだら一人でやらせようと思ってるよ」

「そうか、まあミスだけはすんなよ」


 俺の知らない間にこいつらは新しいことに取り組んでいたとは思っても居なかったな。もしかしたら、今日音琶が俺を呼んだのはそのためだったり...、なんてことはないか。


「それでそれで、私の照明はどうかな?」


 次のバンドの準備に入んなきゃいけないってのに、音琶の口は止まらない。俺に会えて嬉しいのは充分伝わってるから全部終わってからにしてくれよ。


「そうだな、まずお前は手を動かすことを意識するべきだな」

「あ...、うん!わかってるから!大丈夫!」


 言われてようやく焦り気味に手を動かす音琶を見て、やっぱりこいつはまだまだだなと実感する俺であった。音琶が喋っている間、結羽歌はマニュアルらしき物を見て卓を動かしていたから、こいつが照明覚えるのもそんなに時間かからないだろうとは感じたな。

 結局最後のバンドまで音琶と結羽歌がフル回転で働いていて、ドリンクの受付は新しく入ったであろうスタッフが受け持っていた。

 このライブハウス、割と給料良い方だし人手も足りてそうだからシフトの自由効く方だろうな...。俺も夜勤が辛くなってきたら、ここに入ることを考えてみるのも悪くないよな...。

 でもあそこは大して人いないから、今更辞めるなんて言ったら店長に止められそうだし、今回のテストの成績次第でどうするか決めるとするか...。


 ・・・・・・・・・


「てか滝上君、あのギタボの女の子XYLOでバイトしてるんだね」

「はい?」


 夜勤中、客の居ない時間帯で特にすることもなく、俺と宮戸先輩が二人並んでサークルについて話しているという構図が展開されていた。

 しかし、突然先輩の口から音琶の話題が出てくるとは予想外だったが。


「この前うちのサークルが企画に参加してね、その時に会ったんだよ」

「あいつ照明やってますよ」

「うん、凄い上手かったね。軽音部でも照明やってるの?」

「やってませんよ」

「あー...」


 音楽同好会という名のサークルで活動している宮戸先輩も、不定期にライブしているとか言ってたし、誘ってくれれば見に来たんだけどな。元々軽音部に居た人の演奏がどんなものであるのか気になるし。


「まあ、そうだろうね。見た感じ結構キャリアありそうだし」

「いつからかはわかりませんけど、結構前からやってるみたいです」

「またあのこの照明でバンドやりたいって思っちゃってさ、夏休み中にも出ようと思ってるんだよ」

「そのこと、音琶に伝えておきます。あと俺もそれ行くんでよろしくお願いします」


 音琶の照明でバンドやりたいという言葉に疑いの目を向ける俺だったが、まあいい。俺ほどではないがあいつの照明は光る物がある。もっと磨けばそれはどんな宝石よりも光り輝くものになるだろうな。それは言い過ぎかもしれないけども。


「それで、いつなんですか?」

「8月の24ね」

「あー、すいません無理です」

「そ、そうなの?」

「鳴フェス行くんで。何か申し訳ないです」

「鳴フェスね...、俺も1年の時行かされたなー、そんなにお金無かったのに、先輩達に無理矢理ね」


 今の言葉でさらに俺は疑いの目を向けることになった。宮戸先輩は3年だから、2年前の話になるはずだ。昨日の部会では強制ではなく極力行くようにとホワイトボードに書かれてたし、サークルの方針も少しは変わっているのだろうか。


「金無いのに、強制だったんですね」

「そうだよ、行かない奴は飲めだのなんだので、別に部費から出るわけでもないってのに...。てかただでさえ部費高いし」

「去年からか今年からかはわかりませんけど強制ではなくなってますよ。少なくとも鳴フェスに関しては」

「マジ!?」


 まああれだけやられれば愚痴も出るわな。俺の場合は音琶に誘われたから行くし、別に今年は全員が行かなきゃならないわけではなさそうだ。とは言え、行かなかった奴は先輩達から行かなかった理由とかを納得いくまで言わされそうだけどな。

 結羽歌とか鳴香は行くのだろうか。何だかんだ結羽歌はバンド詳しいし、行きそうな感じはするが、鳴香に関してはよくわからない。実際、バンド組むことになるまでそこまで会話していたわけでもないし、あいつがどういった部類の曲が好きなのかいまいちわからんし。

 取りあえず1つ分かったことと言えば、サークルの方針が毎年少しずつ変わっているということだ。宮戸先輩が留年しているのかは不明だが、留年していない3年生は今現在サークルに一人も居ない。となると、流石にそれはまずいと当時の幹部だかが感じたのだろう。

 てかそれ、普通にパワハラだからな。ふざけんなよ。


 この際、鳴成大学の某サークルでこのような事がありました云々、みたいなことを公民だか政治だかのレポートで書けば一発...、いや、完全な証拠が無いから無理かもしれない。今はまだそれをする気は無いが人間必ず限界という物があるから、音琶には申し訳ないが何かしらの行動を起こす可能性だってゼロじゃない。

 音琶との約束、まだ果たせてるとは思えないし、そんなことしたら後先どうなるかも見えない。だとしたら、やはり耐えるしかないのだろうか。

 俺だって人間だ。一応感情だってある。この先新たに何かが起こり得るものの、どのように対処すればいいかなんてわかるはずがない。

 とにかくだ、まずは音琶に言われたとおり自分を大事にするのが最優先だろうな。

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