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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第11章 放課後のStudy
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身近、知りたいことを知るためには

 あいつもサークルの予定が入ってないときは主に土曜日にバイトを入れているらしい。これから俺も予定がない時は会ってやってもいいかもしれない。多分、あいつも俺と出来るだけ多くの時間を共有したいと思っているだろうし、少しでも喜んで貰えたらなんて俺自身も思えてきてはいる。

 スタートが18時らしいから、遅くても10分前には着くようにしておくか。ライブの後に直接バイト先に行けるようにするためには、何時のバスに乗ればいいのかも調べておく必要がある。最近バスの時間が変わったみたいだしな。

 リュックに必要な荷物を詰め込んだらそのまま外に出てバスに乗り込むとするか。


 今朝の電話のことを思い出し、音琶があれほど酒に過剰に反応するのには何か原因があるということを確信した俺だが、どうせそのことについても話してくれないだろうし、それこそあいつの過去に関係することかもしれないと思うと、あまり詮索するのも良いことではない。

 とは言え、一度音琶が俺の目の前で相当酔ったことがあったし、あの時は音琶から飲みたいと言ってきてそれに俺も付き合ったわけだ。一応サークルの飲み会でも飲んではいる。潰れている所は見ていないけどな。

 音琶の過去について知っている人に聞けば何かがわかるかもしれないし、音琶が今も何かを抱えているかもしれないわけで、ここまで隠されていてはそろそろ知りたいという感情が芽生えている。だが、今の所それについて知れるような人が思い当たらない以上、やっぱり音琶から直接聞かない限りどうにもならないのだ。


 LINEで音琶に連絡を取ろうとしたがまだ作業中だろうから諦め、バスの中で目的地の到着を待った。あいつの照明、上手くなっているかね。


 ・・・・・・・・・


 ここに来るのはいつ以来だっただろうか。ちょくちょくサークルのグループLINEで『ライブしているから見に来て欲しいです』みたいなの来てるけども、いつの間にか行かなくなっていたし、何より夜勤のある日に行くモチベーションが上がらなくて、音琶が居ることは分かっていたけども部屋か部室に居ることが多くなっていた。


「お、この前のライブ以来だねー」

「おはようございます」

「もう、相変わらず堅苦しいんだから」

「そりゃどうも」


 中に入るなりオーナーの洋美さんに声を掛けられ、ライブハウスのルールというものを守るべく挨拶で返す。てかライブ以来とか言っているけどあの時は直接会話してないだろ、ただライブしている俺の姿が見えていただけでいともそのように言う辺り本当にこの人は色々変だよな。


「それでそれで、音琶とはどうなのよ?」

「はい?」


 そして次に聞くことがこれである。確かに音琶とは付き合っているけども、他人にいちいち詮索されるのはどうも好きになれない。無論、出来るだけする側にもなりたくない。

 どうせ音琶もこの人にあることないこと話しているのだろうけど、誕生日にあげた髪飾りについては何か思うところはあっただろうけどな。今までは黒いヘアゴムしかしてなかった奴が突然色の付いた髪飾りを付けていたのを見ると何かあったと感じるのが普通だろう。


「あんたら上手くやってるみたいじゃん?音琶なら今照明の最終確認してるから行ってきなよ」

「色々ありますけど上手くやってますよ、あいつは自分のこと全然話してくれませんけどね」

「......」


 すると洋美さんは一瞬黙り込み、言葉を発した。


「まあ、あのこも色々あったし、ね。夏音も音琶のことちゃんと支えてあげなよ」


 さっきまでとは裏腹に、洋美さんは深刻そうな表情をしていたから俺は少しばかり不思議に思ったが、その後はいつも通りに上手く話を繋げられ、そうしている間にスタートになってしまい、急いで音琶が照明の作業をしている所に向かった。

 てか、音琶は一度ここのバイトを辞めているってことは、いつのタイミングなのかは聞かされてなくとも、この人は俺に会う以前の音琶のことをある程度知っているんだよな?履歴書だってあるはずだし、音琶が今どこに住んでいるのかもわかっているよな...。

 何とか上手く言葉を遣って洋美さんに聞けば、些細なことでもわかるかもしれない。流石に履歴書は見せれないだろうけど、音琶の高校時代とか悩み事とか、あいつが俺を求め続けている理由とか、俺の知りたいことに近づけるはずだ。

 身近に奴を知れる可能性のある人が見つかったからには、俺も限度を考えて何とか音琶に近づくことにするか。

 ライブが始まってから後ろから何度か視線を感じて振り向いてやろうかと思ったが、今は前の方で演奏をしている人達に集中していた。

 今回見る演者も初めてのものばかりだったが、やはりサークルのやつらよりも遥かに上手いことは変わらなかった。どうせならここに来る人達とバンド組んでライブに出た方がやりがいがあるのではないかと思ってしまうくらいだ。そんなこと音琶には絶対言えないけどな。今のバンドもやり方さえ良くなればここに出ても恥ずかしくないくらいにはなるだろうか。少なくとも聖奈先輩達がやっているバンドは出ても大丈夫だろうけども。

 そして勿論、照明の方も見ていないわけではない。質の高いバンドほど難しくなる照明だが、上手いこと回せているように見える。音琶も先輩スタッフに教わればミスくらいはしなくなっててもいい頃合いだろう、前に見た時のようなことが起こる心配は無さそうだった。

 特に曲の強弱に上手く合わせられていて、バンドの演奏と相まって良い照明が出来ているのは詳しくない人でも分かるくらいの出来に仕上がっていた。


 俺自身が高校の軽音部で嫌でも覚える事になった照明はいつの間にか懐かしい物になりつつあった。もう二度と思い出したくもないことであることに変わりはなく、他の部員が何もしなかったせいで俺が大抵の役割を担うことになった以上、忘れたくても忘れることが出来ないのだ。

 本当なら、他の奴らみたいにもっとバンドを組みたかったという気持ちはあったのだ。それなのに...、

 このバンドが終わって転換に入ったら褒めてやってもいいな、近いうちにまた何か買ってあげるとするか。

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