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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第11章 放課後のStudy
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予定、決めなければいけないこと

 7月17日


 結局、返信どころか既読すら付かなかった。グループだけでなく個人でも送ってみたが、結果は変わらず。一体あいつは練習が終わった後何をしていたのだろうか。何となく想像は出来るがこればかりは本人から聞かないとどうしようもない。

 しかもだ、もうすぐ授業が始まるというのに、結羽歌はまだ姿を現してない。普段は俺よりも早く教室に来ているような奴だが、たまに一限に来ないで二限から来ることもあった。今日は二限から来る日なのかもしれない。LINEだと返事来ないから直接聞こうと思ってたのにこれだと意味ないだろうが。


「クソが...」

「??」


 授業中、独り言を呟いてたら日高が俺の方を見ていたが、特に何も聞いて来なかった。少しばかり、俺もこいつを頼った方がいいのだろうか。

 授業が終わると次までの間は10分間の移動時間があるわけだが、木曜の場合は一限と二限は同じ教室で行うわけだから、移動せずにそのまま席に留まっていた。

 教材を用意していると、ようやく結羽歌が現れた。顔は疲れ切っているように見えたが、やっぱりあの後は...。


「遅かったな」


 敢えて奴に視線を向けずに言う。当の結羽歌からはやや怯えているような気配が感じられたが、そんなことも気に留めずに俺は続ける。


「昨日何してたんだよ、LINE送っただろ」

「えっと...」


 どうせ誰かから飲みに誘われて遅くまで飲んでたんだろうけども、流石に次の日に一限から授業があることを考えたら、抑えることもできるよな。それ以前に、飲んでる最中でも連絡くらいできるはずだし。


「兼斗先輩に飲み誘われて、飲んでたよ」

「お前なあ...」

「LINE、送ろうと思ってたんだけど、先輩達が、携帯触るなって...。だから、帰ったら送ろうと思ってたんだけど、シャワー浴びなきゃだし、すぐに眠くなっちゃって...」

「授業のことは考えてなかったのかよ」

「それは...」


 暫く黙り込む結羽歌にこれ以上追い打ちを掛けても責めてるだけになりそうだから、ここでやめておく。


「俺はともかく...、音琶のやつ心配してたから、気をつけろ」

「う、うん...」

「一限のプリントなら立川が持ってるからな」

「あ、ありがと...」

「礼なら立川に言えよ」


 申し訳なさそうに立川からプリントを受け取る結羽歌を見て、こいつにはまだ良心が残っているとは思えた。授業が終わった後にはグループLINEに曲のURL送ってたし、まず第一に反省しているようには見えた。あとは同じ事を繰り返さなければいいのだが、サークルの事情と結羽歌の性格を考えると少しばかり難しいように見えなくもない。

 少なくとも、提出物は出してるみたいだし、今日もまた部屋に呼んで勉強教えた時は、前よりも理解しているように見えた。だからと言って安心していいわけではないけどな。


 

 7月18日


「今日は伝えること結構あるからしっかり聞いとけよ」


 テストが近いにも関わらず、当たり前の様にやってくる部会。部長の口からどんな伝達がされるのかは特に気にならないが、そろそろ新たにライブをするみたいな流れになるかもしれないな。


「まずはこの前のレポート、個人別にまとめたから返してくぞ」


 それぞれ7枚に纏められたA4の紙が1年生達に返却されていく。俺の番になって紙を受け取り、すぐに何が書かれているかを確認する。

 琴実に関してはあの時言ってた通りのことが紙面一杯に書き連ねられていて、目を通すだけで頭が痛くなりそうだった。これに関しては帰ってから読むことにしよう。あとは...、


「読むのは帰ってからにしろよ、まだ伝達あるからな」


 明らかに俺に対して言っているのがバレバレだが、敢えて気づかない振りをして紙から部長が書いているホワイトボードの文字に視線を移した。

 そこには日付と、その右側にライブのものと思われる言葉が並んでいた。まあこれは、休む暇なさそうだな。


「ちゃんとメモしとけよ、大事なライブだからな。新たにバンド組む奴は俺に連絡するように。1年生にも出てもらいたいから組んでない奴は夏休み入るまでに組んでおけ」


 始まったよ。俺のバンドはまだ解散してないし、鳴香と組む予定のバンドもボーカルさえ決まれば活動できるやつだし、落ち着いて話進めればメンバーくらいはすぐ決まるだろう。あとは茉弓先輩が難しい所だがな。

 今のところバンド組めてない1年生は琴実と淳詩だったよな、大津は弾き語り要因だから対象には入ってないはずだ。

 そしてライブの日程だが、8月16日と17日に行われる夏祭りのステージで、9月20日にはライブハウスを借りてライブするとのことだった。なんかもう、予約は入れているだとか何だとか。そして翌日の21日は夏休み最後の日ということで、部室を使って部内だけのライブをするらしい。

 さらに、一番下の欄にはこう書かれていた。


 ''極力鳴フェスには行くように!!色々参考になります!!''

 

「俺からは以上だ、帰省はその予定が入ってない時期にするようにな、敢えて9月上旬には何も入れてない、この意味わかるな?」

 

 相変わらずの脅しに近い言い方で部長は言って、部会は終わった。夏休みは金稼ぐためにバイトのシフト増やそうと思ったのだが、練習のこととか集中講義を考えると、そこまで勝手が聞くような話でもない。帰省する必要がないのが唯一の救いといった所だろうか。


「夏音君」

「ん?」


 飲み会に向かおうとしていたら、鳴香に声を掛けられた。


「茉弓先輩が、ボーカルは二人で決めてって...」

「だろうな」

「どうする?」

「飲みの間にでも誰かしら声掛けてみるか」

「そうだね」


 さて、この多忙な予定を上手く処理していくには、目の前のことを何とかする必要があるわけだが、上手くいくことを願うしかない。今までそうしてきたわけだし、特に気に留める必要もないはずだ。だから...、


「今日中に決めれればいいかもな」

「かもじゃなくって、決めるのよ」

 

 焦り気味の鳴香を置いて、俺は先に部室を出て行った。

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