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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第11章 放課後のStudy
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単位、落としてはいけない

 ◈◈◈


 7月14日


 午後の授業、私の隣で夏音君と日高君が珍しく真面目な話をしていた。いつもなら日高君が夏音君をからかって、夏音君は面倒そうにしていても最後まで話を聞いている、という感じなのに、今日は違った。


「確かに俺も、あの先輩の名前覚えてないし、顔だってそんな人いたな、くらいのもんだし。仕方ないとは思うけど...」

「それだと全く覚えてないわけじゃねえだろ、一応他の先輩にも聞いてみて少しでもお前のこと覚えてたらあの人がおかしいってなるし」

「別にそこまでしなくても、悪いし」

 

 少しギクシャクしてる...、よね?何があったんだろう。


「ねえ結羽歌、あの2人どうしちゃったの?」

「さ、さあ...」


 千弦ちゃんに問われ、私と同じ事を考えていたみたいで安心した。私の思い込みが激しかったかな?なんて思ったけど、やっぱり変だよね。


「ちょっとー、2人共どうしちゃったのよ?いつもなら馬鹿話に花咲かせてるってのに」

「いや...、別に」


 千弦ちゃんに聞かれても、事の本題を話そうとしない二人。そうしている間に先生来ちゃったし、今は授業に集中した方がいいよね?あと2週間ちょっとすればテストも始まっちゃうし...。

 授業だってちゃんと聞いてノートも取れば、大丈夫だよね...?単位、取れるよね? ...実は、ベースの練習やバイト、サークル活動に時間を取られて勉強があまりできていない。今から頑張れば、間に合う...、かな?


 ・・・・・・・・・


「あ?俺に勉強教えて欲しい?」

「う、うん...」


 帰り際、夏音君に聞いてみたら、逆に聞き返されてしまった。まずいこと言ったかな?


「何でだよ」

「いや、ちょっと、勉強できてなくて...」

「......」


 夏音君だけじゃなくて、日高君も千弦ちゃんも拍子抜けしたような顔をしている。やっぱりまずかったかな...。


「正気かよお前」

「正気...です」

「はあ...」


 鈴乃先輩から、『1年の段階で単位は絶対に落とさないように』って言われたし、実際に教科によっては再試験がないものだってある。それを落としたら来年まで待たないといけないし、それだって必ずしも合格できるとは言い切れない。

 鈴乃先輩を見てればわかるけど、2年生になったら幹部とか、他にも色んな役職があるからサークル活動も今以上に大変になるはず、だから何としても全ての教科を一発で合格したい。当たり前のことなんだけど...、ね。


「今日はバンド練入ってるから、明日からな」

「それじゃ私も行くー!」

「俺も復習がてら行かせてもらおうかな」


 何だかんだで、4人で勉強会をすることになった。これで、ちゃんと単位取れたらいいな...。


 

 7月15日


 この時期になると、図書館はどこもテスト勉強やレポートをする人達で溢れかえってなかなか場所が確保できない。特にここは日本でも有数の進学校だから、参考書だってしっかりしたものが置かれてるし、誰だって利用したくなるよね...。

 そんな有数の進学校に入学しといて、テストの心配をしている時点で私大丈夫かな...?


 結局図書館だと人が沢山いて集中できないし、個室も使えなかったから、夏音君の部屋にお邪魔することになった。


「へえー、滝上の部屋、思ったより綺麗じゃん」

「どういう部屋想像してたんだよ...」

「えー?もっと楽器に囲まれていて、難しそうな機材がいっぱいあるんじゃないかなー?って。それか歴史上の偉人が発見した化学物質や物理公式の本が山積みになってるとか」

「そんなもんねえよ」

 

 夏音君と千弦ちゃんの話を聞いて、私は少しあれ?って思った。夏音君は12年間もドラムをしていて、そのドラムを続けるためにサークルに入ったんじゃ...?

 参考書が少ないのはいいとして、ドラムに関する大きな機材が何一つ置かれていないのは、どうしてなんだろう。私の思い過ごしかもしれないけど、長い間ドラムをしていれば、ペダルとか、電子ドラムを持っていても不思議じゃないと思うな...。私だって、入部して間もなくベース買ったし、バイトで稼いだお金で、そろそろ個人用のベースアンプなんて買おうかな、って思ってるし...。


「私滝上のドラム、普通に上手いと思ったんだけどなー」

「素人から見たらそう思えるんだよ、勘違いするな」

「はいはい、勘違いしてるってことにしてあげる」


 ベースを初めて3ヶ月、まだ時間的には浅いけど、少しずつ楽器や音楽の知識が身につきつつある。夏音君や音琶ちゃんよりはまだまだ追いついてないけど、いつかは対等に並んで話せるようになりたいな。

 いけない、今日はテスト勉強するんだったよね、楽器のことは一旦忘れないと。


「うるせえな、早く始めんぞ」

 

 呆れているのか、恥ずかしいのかわからないけど、夏音君は私達から目を逸らしてテーブルに向かい、教科書を鞄から取り出し始めた。

 私も夏音君に続いて教科書とノートを取り出し、テーブルの上に乗せる。


「言っておくがな結羽歌、こんな簡単な授業で手こずってたら単位なんか取れねえからな」

「う...、頑張ります...」


 始まる前に夏音君から軽いお説教を受けたけど、全員がテーブルに揃ったところで勉強会は始まった。

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