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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第10章 Re:Start
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贈物、喜んでくれれば

 ***


 音琶がジャズ研のライブに行っている間、俺はモールの楽器屋に向かっていた。何をしにいくのかは決まっているが、何を買うのかがまだ決まっていない。

 昨日のことがあるから、正直喜んでもらえるとは思えないが、約束したことだからそれを反故にするわけにはいかない。


「何買えばいいんだかな」


 音琶が喜びそうなもの、考えるだけで色々ありそうだが、そもそもあいつが何を好んでいるのかもよくわからない。これでも俺、あいつと付き合ってるんだよな。なのにあいつの好きな物もわからないなんてどうなんだろうか。

 3ヶ月前、あいつとここで偶然会ったとき、勢いでギターのピックを買ってやったけど、その時はすごい喜んでいたよな。またピック買うとでもするか?いやでも、同じようなものをあげたところで、ってのもあるしな。

 てかあのピック、多分音琶は使ってない。今までのバンド練習でわかったことだが、あいつはまた別のものを使っていた。場合によっては指で弾いてる時もあったが、曲やその時の状況によって使い分けているのだろう。あいつのことだし、壊したくないから使えない、とでも思ってそうだが。

 それから暫く店内を歩き回って、ギター用の機材でも探してみるかと思い、ピックは勿論、弦やシールド、エフェクター(流石にそれは高い)を見てみたが、結局決めることができなかったから、俺は助け船を呼んだ。といっても、LINE送っただけだが。


 滝上夏音:今いいか?

 日高奏:どうした?

 滝上夏音:誕生日にもらって嬉しいものって何かあるか?


 俺が日高にそんな内容のLINEを送って数分、既読がついたかと思いきや着信画面が姿を現した。


「突然どうした」

『いやそれこっちの台詞』

「何も電話することねえってのに」

『俺の誕生日はまだまだ先だぞ?でも貰うならVRゴーグルが欲しいかな』

「お前じゃねえよ。あとそんな高いもの買う金なんてない」


 本当は結羽歌にでも相談しようと思ったが、昨日の今日でそう簡単にLINEなんて送れるわけなく、仕方ないから日高に相談することにしたのであった。


『なるほど、てことは上川の誕生日が近いのか...』

「まあそんなところだ」

『誤魔化さなくてもいいからな、お前が誕生日にプレゼントをあげる相手って言ったら、上川か俺しかいないだろうに』

「まるで俺が馬鹿みたいだからやめろ」

『悪かったって。それであれだろ、今どこかで買い物してるけど、何買えばいいかわからなくなって俺に相談してきたって状況だろ?』

「そこまで丁寧に確認しなくてもそういう状況だ」

 

 こいつに相談したのが間違いでなかったと言える結果になることを祈る。


『それで滝上、今どこにいるんだ?』

「モールの楽器屋」

『あー、あそこね』


 流石このモールでバイトしているだけあって、場所の飲み込みは早いみたいだった。


『上川ってギターだから、ギターに必要な道具買えばいいんじゃね?』

「それを探してもなかなかいいものが無いから困ってんだよ」

『別に何でもよくね?』

「は?」

『何貰っても嬉しいと思うけどな、特に好きな人からの誕プレだったら』

「なっ!?」

『あー悪い、それ禁句だったっけ?』

「禁句ではねえけど、その言い回しはやめてくれ...」

『すまんな、でも上手くいってるんだな』

「そうでもねえよ」


 日高に付き合ってることはまだ言ってないが、いつバレてもおかしくないよな。バレたところでどうってことないがな。


『まあ、頑張れ』

「また相談するかもしれん」

『おう、いつでもいいぞ』


 日高とのやり取りを終え、再び陳列されているギター用機材を眺める。その中から、ようやく一つ手に取り、レジに向かう。

 何貰っても嬉しい、という言葉を信じて、俺は店を後にした。あとは1階に言って夕飯の食材買ったら部屋に戻るとするか。

 夜勤までの間、音琶にプレゼントを渡すときの言葉でも考えておくか。

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