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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第10章 Re:Start
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今後、バンドの誘い

 ***


 7月4日


 本番が終わってから初めての部会。3日前鈴乃先輩に言われたとおり、ライブの反省用紙が配られることになる。にしても、部員が一気に減ったから元々広い部室が更に広くなったように感じる。


「この前のライブでみんな色々思うことあるだろうから、俺からレポート出しときます。1年生は1人1部取って下さい」


 思うことあるだろうから出す、ね。だからといってレポート出す意味がよくわからないのだが。まあいい、適当に書いて出せばいいか。一応どのバンドも良い所とか悪い所はわかってるつもりだし。


「期限は来週の部会まで。それまでに出せなかったらこっちも考えあるからな」


 最後に部長が脅しに近い言葉を投げかけ、文句を言ってやろうかと思ったが、鈴乃先輩に言われたことを思い出し、何とか思いとどまる。それに...。

 部長の今の発言から、音琶がこっちに幾度か視線を送っている。俺が何かアクションを起こそうとしているとでも思ったのだろうか。


「......」


 前から配られたレポート用紙を見て、俺は暫く言葉を失う。これ、1人1部と言ってもここまでの量だとは思ってなかったからだ。

 どんな内容だったのかというと、今残っている1年生の部員は8人なわけだから、8枚分の紙がホッチキス止めされていたのだった。しかもそれぞれの紙の上には、『ライブでこの人に対して感じたことを書いて下さい』と書いてあって、その下には名前が印刷されていた。

 因みに、自分の名前の部分は自分自身の反省を書かなければいけないらしい。


「今日の部会はこれで終わりにします。質問とかあったら後で聞きに行くように」


 紙を配られて少しだけ説明があった後、部会は終了になった。とは言っても、この後のこと考えると安心できないのだが。


 ・・・・・・・・・


 初めて部会に参加した時以来に来る飲み屋だが、どうも今までは人数の関係で行けてなかったらしい。部員がごっそり辞めてからはマスターの方も席の関係で困ることがないらしく、これからは部会後はここで飲むことになるみたいだった。

 何て言うか、辞めた奴らは本当にこのタイミングで辞めて正解すぎるというか、何というか。多分これ、今回のライブ以上に忙しくなるのではないかと思わなくもない。俺の場合勉強面で悩むことは無いかもしれないが、自分の時間が奪われるということを考えたらまた文句を言いそうだ。だからなるべく考えないようにしよう。

 それはまあ、まずは置いといて...、

 

「ねえ夏音君、ちょっといい?」

「はい?」


 飲み会が始まって30分ほど経っただろうか。サワーを片手に茉弓先輩が俺に絡んできた。まだほろ酔い状態だからそこまで面倒くさくないが、あと数十分もすれば覚醒するだろうと思うと恐ろしい。


「私とバンド組まない?」

「......」


 その言葉を聞いて、俺は咄嗟にテーブルに置かれたコーラを飲み出す。てか俺、飲み屋言ったらコーラしか飲んでない気がする。酒飲めないから仕方ないにしろ、他にもソフトドリンクはあるだろうに。


「突然ですね」

「バンドなんて突然結成されるものだよ~。前触れも何も無くね」

「まあ確かに、そんなものかもしれませんね」


 茉弓先輩にそう言われて、音琶との出会いを思い出した。あれも突然すぎて思考が追いつかなかったしな。それに比べたら今の誘い方はまだ平凡なのだろうな。


「仮に俺が茉弓先輩とバンド組むとして、他に誰がいるんですか?」

「それはまだ決めてないけど、少なくともドラムは夏音君がいいかな~、って思ってる。ボーカルとギターはまだ考え中」

「......」


 高校時代は俺と組もうと考える奴が居なかったから、この短期間で2人からも声を掛けられるとは思ってなかったが、だからといって決断を下すのはまだ早い。


「あ、別に今すぐ決めろとか、絶対に入れとか言わないからさ、もし良かったらって話だからね~」

「わかってますよ」


 そう言って、俺は再びコーラを胃袋に流し込んだ。


 

 1時間半後


「飲み放題の時間過ぎたので、一旦ここで解散にします。二次会参加したい人は俺についてきて下さい。自由参加です」


 部長の合図と共に、帰る人と二次会に参加する人で分かれた。と言っても、俺と音琶、淳詩、泉以外はみんな二次会に行くみたいだけどな。なるべく点数は稼いでおきたいが、行きたくない時は行かないと決めてある。

 二次会組を見送った後、俺はそのまま真っ直ぐ部屋に戻ることにした。


「ねえ夏音君」

 

 音琶と帰路に向かおうとする途中、泉に呼びかけられ、足を止める。


「何だよ」

「実は私、新しくバンド組もうと思ってて、それでドラムは夏音君にお願いしたいって思ってるんだけど」

「......」


 1日に2回もバンドの勧誘を受けたことになるんだなこれ。それにそこまで話したことない奴らに。


「突然どうした」

「私のバンド、メンバー1人抜けたから、これからどうするって話し合ったんだけど、みんなそれぞれやりたい曲あったみたいで、解散したの」

「...そういうことだと思ったよ」

「それで、私なりに色々考えたんだけど...」


 まあこれからサークルを続けていく以上、バンド組んでいかないと意味ないわな。特に泉の場合、いや、泉だけでなく琴実や淳詩にも言える話だろう。

 バンドが解散したら、新しいバンドを組もうと考え出す。そして手当たり次第に声を掛ける。泉はまさに今その状態なのだ。


「夏音君、1回練習飛び出したことあったけど、それがあってから本番までの短い時間で凄い変わったから、一緒に組んだら私自身の成長にも繋がるかなって」

「あの時のことは忘れろ」


 俺にとって、あれは良くないことをしたと思っている。あれのおかげで音琶との距離がまた縮まったことにもなるが、他の奴らにはあまり言われたくない。


「とにかく、すぐに組むってわけじゃないから。もしダメだったらダメって言ってもいいし」

「受け入れたわけでもねえけど、断ったわけでもねえからなまだ。てか他のパートはどうすんだ?」

「ボーカルとベースも一応考えてるから、声かけていこうと思ってるんだけど、いいよね?」

「好きにしろ」

「うん、ありがと」


 そう言うと、泉は俺とは逆の方向に歩いて行った。


「おい音琶、隠れてないで早く出てこい」

「......」


 泉が俺に話しかけてきた途端、音琶は近くの電柱の陰に隠れていたのだった。


「だって...」

「酔ってるのか何なのか知らねえけど、だからといってそんなことする必要ないだろ」

「そうだけど...、でも、鳴香とはまだ...」

「わかってるよ、でもわざわざ隠れることねえだろって言ってんだ」

「......」


 こいつ、さっきの飲み会で何かあったのだろうか。取りあえず俺は茉弓先輩と泉への返答をどうするか考えておく必要があるけどな。

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