最初の出会いから
3月8日
私、上川音琶は今、とんでもないことに巻き込まれていた。
訳あって緑宴市に訪れ、何気なく目に留まったライブハウス。とある高校の卒業ライブみたいで、以前バイトしていたライブハウスのことが思い出された。...時間あるし、ちょっとだけ入ってみようかな。
ただの気まぐれだったのに、あんな出会いが待ち受けてるなんて、考えてもいなかった。
・・・・・・・・・
中に入ると、そこまでは広くないけど、設備の整った会場が見えた。今は演奏中みたいで、前の方が盛り上がっている。無料のライブだから、ドリンク代はいらないみたいだし、後ろの方でちょっとだけ見て時間になったら行こう。
「え!?」
そう思ってたけど、ちょっと演奏している人達を眺めていると、私の身体は無意識に一番前に進んでいた。
「そんなことって...、嘘だよね!?」
一番前の柵を掴みながら、ステージの後ろでドラムを叩いている男の子に、いつの間にか釘付けになっていた。
自分でも、今見えているのが現実なのかさえ疑ってしまう。だって、楽器は違えどあれはどう見ても...。今まで私は、あの人以外の演奏には惹かれたことはなかった。それに、これからずっと私は何も感じられないまま、生きていくのだと思っていた。大学入ったら、軽音部には入部しようと思ってるけど、いつまで続けられるかもわからなかった。でも...、
一番前で、ただ呆然と彼のドラムに夢中になっていた私は、演奏が全て終わったタイミングを見計らって、まだ名前も知らない男の子の方に駆け寄っていた。




