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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第9章 LOVE in the ME
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本番前、来てくれる人達

 全てのリハーサルが終わり、いよいよ開場する。ステージ上が薄暗くなり、体育館の扉が開く。するとさっきまで並んでいたであろう観客と呼ばれる者達が次々と中に入っていった。

 この段階で大体30人位だろうか、その中には日高も立川も居た。まさか並んでいたとはな、開場してから開始まで30分空き時間があるから、その間に入ってくるものだと思っていたのだが...。


「滝上お疲れ!来たぞー」

「楽しみだなー、滝上と結羽歌の演奏」

 

 出番までの間、部員は観客側に居るか、キャンパス内を歩き回っている人をライブに勧誘することを許される。

 照明やPAの奴らは機械の最終調整があるからその場を動けないが、特に何も無い奴は一旦外に出て、ポスターを縮小したビラを配ってそのまま会場に案内したり、開場まで特に何もせず時間になるのを待ったりしている。俺は勿論後者だがな。

 とは言っても、機材トラブルがあったときはすぐに対応できるように最前列で待機するように言われてるけどな。

 その最前に居た俺をすぐに見つけ、日高と立川が二人並んで俺の元に来た。


「お疲れだな、まさかこんな早くから来てくれるとは思ってなかったがな」

「何言ってんだよ、早くみたいから結構前から並んでたんだよ」

「そうそう、あんた上手いって言われてるんだから見たくなっちゃうのよ」

「上手い、ね。まあいいか」


 立川の言葉に若干思うところがあったが、今それを気にするのは場違いすぎる。とにかくライブのことに集中しなくては。

 それに、ここまで俺の演奏を見たいって言ってくれる人は初めてだからな...。


「あ、千弦ちゃん、日高君も、来てくれたんだね」

「結羽歌もお疲れ!楽しみにしてるよー!」

「友達の前で演奏するってこと、考えただけで凄い緊張するな...」

「それじゃ私がその緊張を解してあげよう!」

「わわ、千弦ちゃん肩もみ上手だねー」

「うん、小さい頃からやってるからね。てかその衣装めっちゃ可愛いじゃん」

「本当?選ぶのに時間掛かったんだよ~」


 二人の登場に気づいた結羽歌もこっちに来て、立川と他愛の無い話を始め出した。音琶は鈴乃先輩と何かを話していて、まだこっちには来なさそうだった。


「滝上、何上川の方見てんだよ」

「あ?」

「取り込み中みたいじゃん、見てるだけじゃこっちには来ないぞ」

「別に見てねえよ」

「へー、まあお前がそう言うならそうなのかもな」


 今の会話に立川が参加していたらどうなっていただろうか。本当は音琶を見ていたわけだし、嘘ついても意味ないのはわかってるんだけどな、どうも本当のことは言いにくい。


「もう滝上、嘘つく必要ないんだからさ!今日ライブ終わった後に告白しちゃいなよ!」

「うわっ!!」


 ついさっきまで結羽歌と話していた立川が、突然背後から割り込んできたから思わずでかい声が出てしまった。あとお前その声のトーンで告白とか言ったら周りに聞こえるだろうが、自重しろっての。


「ちょっと...、突然どうしたのよ」

「いや、別に」


 突然どうした、はこっちの台詞な気がするのだが。


「それで、どうするの?」

「どうもしねえよ」

「えー、勿体ない」


 取りあえずこいつ永遠に黙って貰えねえかな。部員だって近くに居るわけだからこの会話聞かれたくない。てか部員の奴らも黙っているだけで、立川と同じようなこと考えてんのかね。だとしたらそいつら全員に誤解を解くことになるよな、面倒くさい話だ。


「とにかく、俺は今日ライブするだけであって、告白なんかしねえからな」

「ふーん、ライブに告白は付きものだと思うけどなー」

「そんなのお前の勝手な思い込みだろ、俺だってそこまで暇じゃねえし」


 適当な言葉並べて否定していったが、今の会話を音琶が聞いていたらどう思うんだろうな。多分、というか絶対怒るよなあいつ。


「まあいいや、どうするかは滝上の自由だし、私がとやかく言う権利なんてないもんね。でも頑張って、ライブも恋愛も」

「......」


 何だかんだ良いこと言う奴ではあるけど、毎回毎回最後に爆弾仕掛けてくるのをもう少しどうにかしてもらいたい。てかそんな下らない会話している内にライブが始まる時間が迫っていき、気づけば会場の半分くらいが人で埋まっていた。

 思ったより来てるな、ポスターの効果があったのだろうか。


「そう言えば聞いてなかったけど、お前ら何番目?」


 立川との会話を聞いていたからか、若干笑いを堪えているような口調で日高が聞いてきた。当の立川はいつの間にか結羽歌と会話を再開しているし、もう訳がわからん。


「4番目、全部で5バンドからの4番目だ」

「へえ、結構いい順番じゃねえかよ」

「そうなのか?」

「トリ前って結構重要じゃね?」

「俺はそんな重要な立ち位置に居るってことかよ」

「ああ、だから頑張れよ」

「言われなくても」


 日高に背中を押され、少しは気持ちが楽になったかもしれない。これで上手い演奏ができるようになる、といった都合の良い展開は期待できないだろうけどな。

 次の瞬間、体育館内は暗闇に包まれ、とうとう鳴成大学軽音部の新入生ライブがスタートした。

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