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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第2章 crossing mind
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会議、ボーカルをどうするか

 4月14日


 昨日音琶にまた明日、なんて言われたこともあり、俺は大学内の図書館に居た。

 中の施設の一つである学習室には、俺を含め音琶、日高、池田さんの4人が集まっていた。

 その理由を説明するには、話を15分前に戻さなければならない。




 月曜日は最後のコマまで授業が入ってるので、その時間は日高と共に過ごしていた。

 思ったより簡単だった授業が終わった直後、スマホが振動したから画面を確認すると音琶からのLINE通知が来ていた。

 

 上川音琶:今から西の方の図書館に来て!


 文面にはこう書かれていた。


「めんどくせえ......」

「何がめんどくさいって?」


 無意識に言葉が出ていたようで、日高に問い詰められていた。

 すかさず日高にスマホを見せながら返す。


「何ってこれだよこれ」

「へえ、面白そうだから俺も着いてくわ」

「はあ!?」


 日高が図書館に向かったのはこれが原因である。


 池田さんは、というと......。


「えっと、二人も、図書館、行くの?」


 日高と話していると後ろから、友人と思しき奴と一緒の池田さんが話しかけてきた。

 そういえば同じクラスとか言ってたよな。


「行くけど」

「そうなんだ......。私も、音琶ちゃんに呼ばれたんだ」


 こいつもか、まあ俺が呼ばれたってことは池田さんも呼ばれてるわな。

 こうして、3人は言われるがままに図書館に向かうこととなった。



 鳴成大学には図書館が西側と東側に位置している。

 3人が向かっているのは西側の図書館で、1階は文庫本や雑誌、新聞が主に置かれている。

 2階は参考書をメインに置いており、勉強スペースも設けている。

 そして3階は会議室が何部屋も連なっていて、主に授業のグループワークやサークルの部会の場として使われる場所らしい。

 今日使うのは、別に勉強会でも部会でもないけどな。


「うん、全員集まったね、日高君はゲストってことでいいかな?」


 音琶が仕切り始めたが、こいつは一体何を始めようとしているのか。


「えっとね、これからバンドを組むに当たって1回みんなで集まった方がいいと思ってね」


 簡単に言うと、LINEで一人ずつ話をするよりも全員で話を進めた方が手っ取り早いから呼び出した、ということだった。

 俺はともかく池田さんはまだ保留中だけどな。そして日高、お前ここにいて本当に大丈夫なのか?


「私はギター、夏音がドラムは確定してるんだけど、結羽歌はベースで入れる? この前は考えるって言ってたけど」


 音琶が池田さんに聞き出したが、果たして人見知りが激しい池田さんはなんて言うか。


「えと......、私は......」


 言葉に詰まっていた。

 音琶もあまりプレッシャー掛けない方がいいと思うぞ。


「バンド......、やってみたいけど、私何も知らないし......」


 さてはこいつチラシ見てないな、6月に新入生のライブがあるそうだからどっちみち組むことになるんだぞ、何のバンドになるかはわからんけど。


「それに、音琶ちゃんも滝上君も経験者だから、足引っ張っちゃうかもだし......」

「そんなことないよ!」


 音琶が途中で割り込んできた。


「確かに私と夏音は経験者だけど、誰だって最初は初心者なんだし気にすることじゃないよ、それに結羽歌がミスっても私たちがフォローするから!」

「でも......」


 もう見てられない、性格が真逆な2人を会わせるとこうも話が噛み合わなくなるもんだな。


「音琶、取りあえず落ち着かないか」


 たまらず俺が入った。このままこいつに仕切らせたら予測不能の事態が勃発しそうで恐ろしい。


「何?」

「池田さんがベースやるとして、ボーカルはどうするんだ? まだ決めてないだろ」


 そう、俺がドラム、音琶がギター、池田さんがベースをやるとして、ボーカルはどうするのか。

 バンドの構成ややる曲についても中途半端だ。ギターは1本でいくのか2本なのか、ピンボーカルなのかギタボなのかインストなのか、スリーピースなのか4人以上でやるのか。

 バンドを組むのはそんなに簡単なことではないし、やるからにはしっかり考えてからやらなくてはいけない。


「私としては、やっぱ女性ボーカルの曲やりたいから、ボーカルは女子がいいな」


 先に音琶が言った。


「じゃあ池田さんは?」

「えっと、私も女性ボーカルがいいかな。好きなガールズバンドあって......、よく聴いてるし......」

「なるほどね、だとしたら後はバンドの構成だな」


 そう言いかけた時、日高が口を開いた。


「なあ、俺入っていいか?」

「え?」


 突然のことだったので驚いた。まさかこいつがこんなこと言い出すなんて。


「折角ここに居るわけだし、もし良かったらなんだけどさ」


 別に俺は構わない、後は二人次第。


「私はいいよ、確かギターだよね?」

「うん、そだよ」


 音琶が了承した。

 まあ日高と音琶は少し似ている所があるし、組んでも悪いことはないだろうな、池田さんがどう思うかは別として。


「私も......、大丈夫......、だよ」


 その場に流されるような形となったけど、俯きながら池田さんも了承、とりあえずギターは2本の方向でいくらしい。

 後はボーカルはどうなるかなのだが......。


「ちょっと提案なんだけどさ」


 再び日高が何かを言い出そうとしている。

 今度は何だろうか。

 

「この際上川がボーカルやったら?」 

「え、私?」


 日高の思わぬ言葉に音琶が少し驚いてた。

 まあ無理もないか、ボーカルをこれからどうしようか話している最中だったのに、日高の提案は音琶にとって思わぬ変化球だったのだろう。


「私かあ......。うーん、どうだろ」


 珍しく音琶が困惑しているが、歌に自信がないのだろうか。


「考えてみるね」


 思ったことをきっぱり言う音琶にしては珍しい反応だった。


「あくまで仮定だから、気にしなくて良いからな」


 音琶の反応を見てからなのか、日高が音琶をフォローした。

 実際に音琶の歌を聴いてみたい、という気持ちが俺にはあったけどな。

 それから30分ほど軽く話し込んで解散となった。




 帰り道、思わず俺は池田さんに聞いていた。 


「なあ、本当にこれで良かったのか?」


 池田さんは俺の言葉に少し怯えながらも答えてくれた。


「うん、このまま何も動かなかったら、折角のチャンス逃がしちゃいそうだったから......」

「そうかい、まあ自分の意見ぐらいは持っときな」


 本当はバンド組みたいけど声をかけるのに勇気がいる、だから彼女にとって音琶は救世主のようなものだったのかもしれない。

 運のいい奴め。


 実際ガールズバンドの曲を聴くとは言ってたわけだし、全く興味が無かったということではないのだろう。


「それじゃあ、また今度ね」


 池田さんはそれだけ言って帰って行った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ヒロインがとても一生懸命で好感がもてます。 キャラが魅力的だと思います!^^; [一言] べるりーふさん、はじめまして。 小説家になろうでバンドの小説は初めて読みました。 文章力ゆたかで…
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