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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第8章 UNFORGETTABLE
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想い、私の好きな人

 ***


 私にとっての大切な人......。


 そんなのとっくの昔から決まっている、誰かなんて聞かれても、即答なんて絶対にできてしまうくらいに。

 ほんの僅かなすれ違いから諍いはあったけど、その大切な人を今まで以上に好きになることが出来たと思った。


「音琶ちゃん、なんか嬉しそうだね」

「え、そうかな?」


 何だかんだあって、昼に学食で結羽歌と会い、テーブルと向かい合わせでご飯を食べていた。

 昨日の練習振りだけど、夏音から何か話は聞いているのかな?


「うん、まあ良いことはあったかな」

「そっか、良かったね」


 微笑む結羽歌には裏の顔がありそうだったけど、そんなこと気にしてても仕方がない。

 私にとってあんなことがあってからは、思い出すだけで嬉しくなるし、にやけが止まらない。


「昨日はごめんね」

「え?」

「いや、練習中だったのに飛び出しちゃって......」

「ううん、いいんだよ。だって音琶ちゃんは、夏音君のことが心配だったんだよね」


 やや申し訳なさそうな表情をして、結羽歌は言う。確かに夏音が心配で思わず部室を出ちゃったけど、残されたメンバーのことを考えるといたたまれなくなる。

 結羽歌はそれでいいって言ってくれてるけどね。

 

「何か放っておけなくて」

「音琶ちゃんは夏音君のことが好きなんだもんね」

「!!」

 

 結羽歌の不意打ち(?)のせいで、反射的に私の身体が跳ね上がりそうになる。


「今ここで言わないでよ......!」

「どうして?」

「こんな人が沢山集まる場所で言って、もし聞かれてたらどうするのさ!?」

「秘密にすることでも無いと思うけどね。前にも言ったけど、人を好きになるのは当たり前のことだもん。それに、きっとサークルの人のほとんどは気づいてると思うよ?」

「そ、そうなんだね......」

「そうじゃない方が変だよー」


 そっか、私の夏音への想いって、とっくにみんなにバレてたんだね。

 夏音のことが大好きだから自然と隣に並んでいたけど、みんながみんな、私のことを見ていないわけじゃなかったし、むしろほとんどの人が見ていたくらいだ。

 でも、だからといってこれ以降夏音のことを避けるつもりは全くない、昨日夏音が私のことを初めて本音で『可愛い』って言ってくれたんだもん。

 そんなことを言われたら、今まで以上に側に居たくなっちゃうよ。


「音琶ちゃん、きっと夏音君と上手くいってるんだよね。昨日あの後、色々あったんでしょ?」

「ま、まあそうだよね。夏音も素直じゃないから、考えてることを読まなきゃいけなかったりするけど、でも夏音と居たら言葉に表せないくらい楽しいし」

「そっか、でも良かった。今日夏音君とちょっと話したんだけど......」

「何か言ってたの?」

「バンドのことは心配しなくていい、もう大丈夫だからって」

「そっか、よかった」


 他のメンバーにも私と同じようなことを言ってたみたいだったから、安心して涙が出そうになる。

 昨日あれだけ泣いたのに、涙はそう簡単に枯れないみたいだった。


「音琶ちゃんのこと、応援してるからね!」

「もう、何のこと言ってるのさ......」


 きっと私の顔はまた紅くなっていたと思う。

 でも構わない、だってそれくらい私は夏音のことを大切な人だって思ってるんだから。


 ・・・・・・・・・



「やっぱり、音琶って好きな男の子いるよね?」

「え!?」


 午後の授業の終わり際、教科書を片付けていた私に悠来が思いも寄らぬことを言ってきた。


「だって授業中ずっと考え事してる感じだったし、凄い嬉しそうだった。サークルで何かいいことあったのかな?」

「い、いやいや! 別にそういうことじゃなくて......!」

「おお? 焦ってるぞー、ますます怪しい」

「だから......、違うもん」

「へえー」


 悠来の表情がどんどん緩んでいく。悪いことを考えている顔だな......。


「好きな男の子がいるのはいいことだけど、あんまり浮かれちゃダメだよー、テストだって近いんだから」

「わかってるよ......」

「それはつまり、認めるってことでいいのかな?」

「いや、それとこれとはまた別で......!」


 昼休みの出来事といい、今の悠来との会話といい、昨日から私の調子はおかしい。

 夏音が初めて私に対して正直な気持ちを伝えたからかな?


 ライブの後に改めて自分の想いを伝えようって決意したんだから、まだ浮かれるわけにはいかないっていうのに......、嬉しくて仕方がないのだ。


「うん、わかってるよ音琶の気持ち。でもね、ライブの後に告白するんなら、ちゃんとした演奏しないとダメだと思うよ?」

「ちょ! 悠来、あんた何でそれを......!」

「あれ......、当たってた?」

「.........」


 まんまと嵌められた、恥ずかしい......。

 悠来はライブ見に行くって言ってたから、私が誰のことを好きなのかは把握できちゃうよね? あんまり正直に言うのも恥ずかしいんだけど......、自分で墓穴を掘ってしまってはどうしようもない。


「ま、まあ、当たってないってわけじゃないよね......」

「やっぱりね、でも音琶可愛いから、その男の子もきっと音琶の気持ちわかってくれると思うよ」

「そ、そうかな......」

「うん、大丈夫。音琶なら大丈夫」

「......私、悠来と友達になれて良かった」

「今更何言ってるのよ、友達の恋を応援するのは当たり前のことでしょ?」


 そう言って私にウィンクを送り、悠来は先に歩き出した。

 私も後ろをついていき、一旦部屋への道に向かう。


「ますますライブ楽しみになってきたなー、健闘を祈るよ!」


 悠来はそう言って、私と違う道へと向かっていった。

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