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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第8章 UNFORGETTABLE
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仲間、こいつらとなら

 6月25日


 目覚ましがけたたましく鳴り響いている。

 時間は7時半、授業が始まるまで1時間半もある、朝食を食べたとしても時間が余る。


「シャワーでも浴びるか」


 そんな独り言を呟きながら浴室へと向かう。

 あの後浴びたけどもう一度浴びた所で悪いことはないし、頭を冷やしても冷やしきれないくらいだし。

 そして扉を開けると......、


「!!」

「.........は?」


 そこには一糸纏わぬ姿で、バスタオルを身体の正面に覆っているだけの音琶が居た。

 てかそのバスタオル俺のやつなんだけど、勝手に使うなよ、いくらタオル類を浴室に入れているからって来客用にしているわけじゃないんだからさ。


「音琶......、お前何を......」

「え、えっと......、おはよう」


 裸を見られた恥ずかしさからか(それしかないだろうけど)全身を真っ赤に染め上げ、目を回しながら何とか音琶は言葉を発する。

 てか本当に胸でかいよな、服着ている時ですら充分過ぎるくらい目立ってたけど、今の状態の音琶を見ると思ってた以上のものが目の前にある。


「き、昨日泣き疲れちゃって、本当はギター部室に取りに行って、そのまま帰ろうと思ってたんだけど、だけどだけど眠気には勝てなくて、だから夏音の部屋に泊まることになって、それからそれから......」

「いちいち懇切丁寧に説明しなくても、そんなことわかってるから、取りあえず落ち着け!」


 必死にバスタオルで身体を隠しているが、手が震えているせいで肌の部分がチラチラ見えていて余計に嫌らしく見えてしまう。

 幸い大事な所は見えてなかったから良かったものの、一歩間違えればどうなっていたかもわからない。

 てか俺も何でさっきからその場を離れようとしてないんだか。


「う、うん。それで、起きたら朝になってて、昨日シャワー浴びてなくて、すぐに浴びたかったから夏音のシャワー使っちゃって......」

「わかったわかった、別に勝手に使ったことには怒ってねえから」

「そ、そうなんだ」

「でもお前着替えはどうすんだよ」

「浴び終わったらすぐ帰るつもりだったから! ちょっとだけなら我慢できるし」


 それだったら何で起きたらすぐに帰らなかったんだよって思ったが、シャワー浴びてない身体で外には出たくないか、と考えれば納得出来なくもないな。

 ......あんま細かいこと気にする必要もないか。


「でも流石にタオル使うときは一言言ってくれ、寝てたら起こせばいいわけだし」

「ごめん......」

「......」


 それから何を言おうか思いつかず、ちゃんと服を着た男と豊満な肉体を誇る全裸少女が見つめ合う構図が展開された。何だこれ。


「あの、夏音......、流石に恥ずかしいから扉閉めてもいい?」

「あ、ああ」


 ようやく音琶が口を開いたから言われたままのことをする。

 それにしなくてもあいつ胸でかすぎだろ、何を食べたらああなるんだか。


 ・・・・・・・・・


「夏音、そんなに見つめられたら私だって恥ずかしいんだからね!」


 結局シャワーは浴びることなく、朝食を取ることにした。当たり前だが、今の音琶はちゃんと服を着ている。

 『お前シャワー浴びたらすぐ帰る予定って言ってたよな。何ちゃっかり飯まで作ってもらってんだか』と言おうと思ったが、裸を見てしまったお詫びとして飯くらい作ってやらないと流石に申し訳なかったから我慢する。


「......お前の身体が嫌らしすぎんだよ」

「へ、へえ。まあこっちも勝手に他人の部屋のもの使っちゃったんだし、それくらいのこと言われたって仕方ないって思ってるんだからね!」

「涙目になってんぞ」

「なってない!」


 フォークを突きつけながら言い張る音琶。ここまで恥ずかしがられたら更に申し訳なさが増すんだけどな、でもこういった反応も可愛かったりするんだよな。


「水道代とか、気にしなくていいからな」

「え?」

「それくらい俺が払うし、飯だって今まで通りで......」

「でも夏音、お金は......」

「金なんて気にするな、その代わりお前は俺に沢山話しかけろ」

「夏音......」


 実際に、音琶と話していると退屈を感じないから悪いことはない。この言葉に嘘は全く無い。


「だから、バンドもそうだし、昨日のことは忘れてくれよ。あと3日しかねえし、今回のライブで俺の出来てねえとこが何とかなる保証なんてどこにもねえけど、だからってお前のこと信じてないってわけじゃないから、少しでも良くなれるようにできればなんてな」

「夏音がそう言ってくれるなら、私だって頑張れるよ。バンドの楽しさが今は見つけられなくても、夏音ならきっと大丈夫だよ」

「......」

「私さ、ライブ終わったら夏音に伝えたいことあるんだ、だから楽しみにしててよ」


 微笑みながら俺を見つめる少女の瞳には、嘘偽りというものが全く感じられなくて、空っぽだった心をどんどん満たしていた。


「それじゃあ、楽しみにさせてもらうとするか」

 

 そう言って俺は箸を進めた。



 

「それじゃ、今日もまた昨日と同じ時間でね」

「ああ、また後で」


 朝食を食べ終え、俺は教室に向かう。時間を確認するためにスマホを開くと、そこにはLINEの通知が並んでいた。


「......音琶のことで精一杯だったな俺」


 これから授業で会うことにはなるものの、顔合わせづらいな全く。


「あ、夏音君だ、おはよう」

「ああ、おはようだな......。........ああ」


 丁度後ろから声が聞こえたから振り返ると、その当人が笑顔でお出迎えしていた。


「どうしてこういう時に限って......」

「何? 私、夏音君にとって不都合でもあるの、かな?」

「いや、すまなかったな」

「何が?」

「だからバンドのこと、でももう大丈夫だ」

「それなら、いいんだけど......、音琶ちゃんは、大丈夫なの?」

「心配すんな、あいつとはあの後すぐに何とかしたからな」

「良かった......」


 そう言うと、結羽歌は胸を撫で下ろしていた。

 こいつにも心配をかけたわけだ、今一度謝っておくべきだよな。


「折角頑張ってる奴がいるっていうのに、申し訳ねえ。別に下手だからとか、そういう意味じゃねえけど、投げ出すのは良くねえって思ったわけでだな......」

「うん、私初心者だから、あんまりバンドのことはよくわかんないし、下手だけどいつか上手くなれたらって思ってるし、もっと頑張ろうってなれるよ。だから、夏音君も......」

「時間無いけど、出来るとこまでやってやるよ」

「そっか、そうだよね、夏音君はこうでないとね......!」


 今度こそ俺は大丈夫のはずだ、一番出来てないのは認めるが、それをどう改善してこうか残り少ない時間で考えていかなければならない。

 大変なのはわかってるが、俺を信じてくれてる人のためにも、俺自身が裏切らないようにしていかなければならないのだ。

 そうときたら、本番までに提出する反省用紙に書くことを1枚にまとめるのが大変になりそうだ。

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