マッチング
武器屋から帰ってきたら、早速ビルデアさんがダロンとなにかやっていた。
「おーう、早速ダロンの戦闘適正を見てみてるが、どう考えてもアレックスの領分だわ」
あーやっぱりダロンは重戦士だったか。重い武器持てるし、その方がいいのかも。護身としては軽戦士の方が応用聞きそうだけど。
見てみると、奥の方ではモーガンさんがフィオナに何かすでに教えているようだ。
魔法関連の子たちも、赤ちゃんを抱えたままロメイさんが頑張って教えているようだ。
ユーリアもここにいた。
無理はしないで欲しいけど、本人はすごいやる気みたいだしなぁ。
明日にでもアルティナさんを屋敷に呼ばないといけないな。
ギフトや魔法の素養を持っていなかった子たちはどうやらファーガソンさんに率いられて外の畑仕事をしているようだ。
彼らにも何か役割を与えてあげたいけど、まずは特性を持った子たちからになるなぁ。
年長組は伝令の仕事に出ているので、今はまだ何も知らない。
次の日の朝。朝食の時にジャービスさんが今後のこととして方針を子どもたちに説明していた。
年長組の二人にはしばらく伝令を休んでもらうことになったようで、そのことを直接伝令頭にファーガソンさんが伝えるとのこと。
伝令の方は大丈夫なのかとファーガソンさんに聞いたところ「子供らの売上は減るから悪いが、伝令自体は余りがちだから迷惑にはならない」とのこと。
それならいいんだけどね。年長組にはお手伝い料としてお給金を渡してもいいかもしれないな。
朝食が終わったら、初歩的な戦闘訓練を全員でやるとのことで皆で外の庭に集まった。魔法組の子たちにも教えるようだ。
まずはファーガソンさんとビルデアさんが基本的な攻撃の避け方、というか心構えみたいなのを言ってから手本として見せてくれた。
俺やユーリアはもうすでに出来ていることだったので、二人のあと子どもたちの手本として俺たちも見せることになった。
最近のユーリアは魔法寄りにしていくためにあまり剣を使ってなかったけど、すでに体は覚えているし、ケリスさんを唸らせるほどの力も持っているから、ユーリアの攻撃をうまく避けるのは難儀だった。
逆に俺の攻撃はまったくユーリアに当たる気はしなかった。まあ訓練で当てる気はないけどさ。
そんな俺達の動きをとても上手く解説しているファーガソンさん。指導力高いなぁ、やっぱり。
そのあと実際に子どもたちが回避のためのステップをやってみた。
何人かは最初はうまく出来なかったが、すぐにできるようになっていった。
そのあとに実際にファーガソンさんの攻撃を子どもたちが避ける、というのを全員やった。
実際のところこれが実践で役に立つとは思えないけど、心構えだろうな。
特にファーガソンさんやビルデアさんは相手の動きをよく見るように常に言っているし。
それに慣れてないと目をそらしがちになってしまうのもあるし、やっぱりやっておくべきだな。
あー、ちなみにさすがにルクスは小さすぎるからこれには参加していない。今はジャービスさんがルクスの相手をしている。
午前中はこれで終わってしまった。人数がそれなりにいるから個別にしていくと時間がかかるな。
まあ基本の最初だけならこのペースでもいいか。皆の動きを見るのも訓練になってるしな。
途中でファーガソンさんに完全に任せていたビルデアさんは昼食を作っていてくれたようで、ほとんど待たずに昼ごはんが食べれた。
やくそうの葉も料理に使われている。
実際に効果があるようで朝の教練の疲れが吹き飛んでくれたようだ。これはすごいな。
軍隊でひっぱりだこになるわけだ。
数が揃うならエテルナ・ヌイにも持ち込みたいぐらいだ。
オークたちはともかくナーガが食べれるのかどうかはさておき。義体には効果ないだろうしなぁ。
昼食を終えた頃にクレイトさんがやってきた。
「ユーリア、今日の日課は夕方からで頼むよ。僕とリュウトはちょっと町に用事があるから」
「わかりましたー。魔法の方にいるね」
ユーリアは朝も魔法の方にいたし、魔法を最初から学ぶ気のようだ。
もしかすると教える気なのかもしれない。実際ユーリアはクレイトさんから直接指導を得てるし、生活魔法はもちろんのこと、攻撃魔法も使えるしな。
クレイトさんとゴールドマン商会へ向かう。
俺だけのときでももてなし?すごかったし、クレイトさんもとなるとすごいことになりそうだ。
案の定副店長のダグサさんがすっ飛んできて、アンソニーさんもすぐにきた。
今日はいてくれたようだ。
すぐに客室に通されてお茶とお菓子が出てくる。
「本日はどうされましたか?」
とはアンソニーさん、アンソニーさんがいるときはダグサさんは控えるだけのようだ。まあ店長で商会主がいたらあまり出る幕ないわな。
「前に頼んだお酒の件なのですが、ちょっと量を増やしたくてですね。あとその輸送についても」
「ほう、それはそれは」
アンソニーさんが思わず揉み手をしている。
はっと気づいて慌ててやめていた。
まあ正しい。
クレイトさんに媚を売っても仕方ないからね。むしろマイナスになりかねない。
そのへんはアンソニーさんも承知していたようだ。
「量を増やすというのは? 銘柄も増やすのですか?」
「いえ、それはおまかせしようかと。ただ人間の酒を飲んでみたいというのが増えましてね」
「はぁ。お任せいただけるならこちらも助かりますし、お早く準備できるかと」
「いいね、それは助かる。それとだね、その酒の護衛にファニーウォーカーを貸していただきたい」
「ええ、構いませんよ。すでに何度か領主様にもお貸ししていますし、むしろ私も着いていくつもりでしたので彼らに護衛してもらうつもりでした。確か模擬戦をされるのでしたね」
「です。二度手間を避けるために運んでもらったときに模擬戦をしようかと思っています」
「いいですね、私もまた父に挨拶にいける。そろそろラカハイから離れないといけないのでちょうどいいですね」
「おや、そうなのですか。寂しくなりますな」
クレイトさんが本心なのかそんな事を言う。
「はい、さすがに本国の商会をずっと放置するわけにもいきませんし、ダグサの仕事をこれ以上奪うのもアレですしね」
笑顔でそんなことをいうアンソニーさん。ダグサさんが苦笑している。
「もちろんダグサにはクレイトさんやリュウトさんのことは伝えてありますから、私がいる時と変わりなくお使いいただけると思います」
「それはありがたいです」
そういってクレイトさんがダグサさんに会釈したので俺も便乗した。
「いつ頃がいいでしょうか? こちらとしてはお酒の手配はすぐにすむと思うので、三日後辺りが良いのですが。確かエテルナ・ヌイへの補充便が明後日出発でしたでしょう?」
「ええ、そうですね。それがアンソニーさんのご都合が良いのでしたら、そうしましょう。こちらも補充便に合わせたいと考えていたところでしたので」
「それとですね。大司教様をお呼びしてもいいでしょうか? 父の様子を見てくれると言ってくれていましたので。それにおそらく模擬戦にも関心あるでしょうし」
「おお、それは良いですね。リヒューサの力を見るもの役に立つでしょうし。大司教様さえ良ければ喜んで」
「ありがとうございます。大司教様には当方から連絡させていただきますね。あとはファニーウォーカーがリュウトさんと飲みに行きたいといっておりましたね。本日私はもう大司教様に合うだけですので護衛はいらないので彼らの手が空くのですが、本日のご予定はどうでしょうか?」
確かに大司教様に合うのに護衛はいらないな。大司教様に護衛がいっぱいついてるだろうから。
ということは大司教様が模擬戦に来たら護衛もいっぱいくるってことか。それは助かるかも。教会の転移門も使えるし。
「今日の日課は僕がユーリアについていくよ。リュウトはファニーウォーカーとあってきなさい」
「はい、わかりました。ありがとうございます。ではお願いしていいですか?」