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「いえ、ハギルたちは降伏しましたが、そのままオーガたちも降伏ということでよろしいのですか?」



「わし達はハギルについた。そのハギルが降伏したのなら仕方ない。そもそも認めてなければ今大人しくしていない」



「まあそれもそうですが。今後はどうされるんですか?」



「降伏したわしらに自由はない。お前らが決めることだ」



「いいんですか? いいように使っても?」



「不満があれば訴え、認められないなら暴れるまで。それで死ぬのもいいだろう。どうせ東に戻ってもゴブリンどもが幅を利かせている」



「私としては今後こちらに喧嘩を売るようなことをしないなら放免でもいいんですけどね」


「ふむ、それもいいが、お前に付いていくのも面白そうだと思っている。あのハギルやレッドドラゴンを打ち負かしたのだからな。ゴブリンたちにも対抗できそうだ」



「そんなにゴブリンの様子がおかしいのですか?」


「ああ、つい最近までは良い取引相手だったが、急に偉ぶった態度をとるようになった。今のゴブリンとは取引できない」



「何を取引されてたんですか?」


「主に肉と力だ。肉は買い叩くし、力は求めるどころか侮るようになった」


要するに今の東はゴブリンが支配していて住みづらいからこっちにつく、という感じかな?


もともと雇われみたいだし、雇う感じで対処するのがいいのかな。


けどオーガに関してはわからないことが多いからハギルに任せる方がいいかもしれない。



『私達も同様です。今の東に安息はない。何が出来るか分からないがここにおいてほしい』


そう念話で懇願してきたのはナーガだった。



「申し訳ないが、私はあなた方ナーガとナーガラージャの関係性すら知らないから判断しかねているんですよ。良ければ聞かせてくれませんか?」


確かに各種族の代表者をと言ったらナーガも来たということは、ナーガはナーガラージャとは違う種族であるとナーガ自身は思っているってことだよな。



『祖先のことまでは分からないが今のナーガとナーガラージャは共存の関係にある。種族としては別と考えてもらっていい。実際にナーガはナーガを生むし、ナーガラージャはナーガラージャを生む。ただナーガからナーガラージャに生まれ直すことは多い。似ているせいか容易なのだ。ドラゴンに生まれ直すよりはずっと』



なるほど。ナーガがナーガラージャの幼体、とかじゃなかったのか。


『昨今ではナーガラージャの形態の方が有利であり、ナーガ単独ではなかなか生き延びることが難しい。ナーガラージャもなかなか人口が増えない種族である故に共生が始まったと思われる。我らの年寄りはそのまま死ぬよりも生まれ直しでナーガラージャに転生することによってナーガラージャの役に立っている。ナーガラージャはそんな我らを保護するようになった』



種族は違えど実際には幼体みたいになってるって感じか。


『今となってはナーガラージャの保護がなければ我らは個々に狩られるだけだろう。ナーガラージャが背後にいるから我らも自由にジャイアントラットを食べることが出来た。我らはナーガラージャと一蓮托生になってしまったのだ。だからナーガラージャの長が決めたことには従う』



オークみたいに仕えることが良いとは思っていないけど現状仕方ないって感じかな。しかも思想面でというより生態面で仕える他ないという感じだしな。



「いいでしょう、ナーガラージャが必要としているなら。それに偵察ぐらいは出来るでしょうし。最近偵察の手が足りていなくて困っていたところだったのです。食事をしに行くついでに偵察に行ってもらいましょう」


ゴーストたちが全員ゴーレムに入るようになったから、ゴーストのまま偵察に行くというのがなくなってしまったんだよな。最近ではレミュエーラとハンターに任せっきりだったからな。



「申し訳ないがラカハイは人間の町だ。残念だが君たちをそのまま入れるわけには行かない。たとえクレイト殿の配下だとしても」


「ええ、分かっています。混乱を起こす気はないですよ。彼らはエテルナ・ヌイに留まるだけでラカハイにまでは行きませんよ。万一その必要が出た場合は、それなりの理由をつけて行きます」


「ああ、そうしてくれ。たいへん申し訳なく思うのだが、人間以外の者に対する偏見が強くてね」



「わしらも人間の町自体には興味ない。それに東に来ていた人間から人間は人間以外を恐れていると聞いたことがある」



へぇここのオーガって社交的なんだな。元の世界のオーガって人食い鬼とされてるから意外だ。


「東の地に人間がいたのですか?」


「ああ、いい獲物だと思って襲おうと思ったんだが強そうだったんで辞めた。そうしたら向こうから話しかけてきてな」



あ、やっぱり襲うんだ。けど襲わなかった? 彼我の戦力差を見極められるのか。まあそうでなければハギルについていくとか言い出さないか。



「おい、あんた、もしかしてあのときのオーガなのか?」


急にドニーさんとともに話を聞いていたお供の人がオーガに話しかけた。知り合いなのか?



「俺だよ、その時の人間だよ」


そのお供の人は兜をかぶった戦士風の人だったんだけど、兜を脱いで主張し始めた。


「あーすまんが人間はあまり見分けがつかない。だが声は聞き覚えがある」



お、オーガの方もうっすら覚えているようだ。


「わからないか、それは仕方ねぇ。しかしこっちはおかげで町にたどり着けたからよ。感謝しているんだ」


「そうか、東に人間は入らないほうがいい。わしと違って相手の力も分からず襲いかかるやつのほうが多い」



「ああ、そうみたいだな。ラピーダのやつも連れてきたら良かったな」


「ラピーダ? ああ一緒にいた女か。一番へばっておったからな」


ラピーダで女って……、あのラピーダさんの知り合いなのか?



「ドナルド様、申し訳ありません。少しお時間頂いてもいいですか?」



先程のオーガの知り合いのお供の人がドニーさんに許しをもらっている。まあお付きの護衛が勝手に動いちゃ本来ダメだものな。



「ああ、もちろん、まさかオーガの知り合いがいるとは思わなかったがね」



「アンソニー様に拾ってもらう少し前に知り合ったんですよ」


ずいっと俺の前に出てきた。



「それとあんたがリュウトさんか。話はラピーダから聞いている。本当にライルにそっくりだな」


「やっぱりあのラピーダさんの知り合いの方でしたか」



「ああ、そうだ。ラピーダとライルのパーティーメンバーだ。声まで似てるからびびったぜ。けど喋り方は確かに違う」


どうも彼はラピーダさんから話を聞いていたようだ。だからラピーダさんにした説明を信じてくれているようだ。



「ほんと、あのときは助かったんだ。何か礼がしたいんだが、何ができそうかな?」


オーガはなんか微妙な顔をしている。



「礼が欲しくてやったわけじゃないんだけどな。それならば前に話していた人間の酒、それを飲んでみたい」


「酒か。以前なら難しい注文だったかもだが、今ならいけるな。しばらくここにいるんだろ?」



「ああ、そのつもりだ」


「よろしい。ならば私がエテルナ・ヌイに酒を持ってこさせよう。今ならそれぐらい構わないですよね、クレイト殿」


「ええ、酒を持ってきてくださるのはこちらとしても嬉しいですね。オーガの分以外にも買わせていただきたいぐらいです」



「それぐらいならなんとかなるでしょう。転移門もあるし、アンソニーに任せましょう」



「アンソニーさんなら良い酒を持ってきてくれるでしょう。ナーガラージャ、オーク、オーガ、ナーガの皆さんにも人間の酒を味わってもらうことにしましょう。もちろん墓守たちにも。きっかけを作ってくれたオーガの皆さんには一番良いものを、ね」



異種族の皆も酒には興味あるようだ。喜んでいる風に見える。


「リュウトさん、今度ラカハイで酒でも飲みにいきませんか? ラピーダのやつも連れてきますから」


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