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上の存在

「わ、我々が出来ることはなにかありますか?」



「本当に魔王の再来であれば、正直分かりません。流通が乱れるとは思うので物資の確保をしておくこと、避難の訓練をしておくこと、軍備を整えておくこと、ぐらいですか?」



「時間はどれほど猶予があるとお考えで?」


「これも正直分かりません。たまたま偶然やられただけで魔王が降りてくると限った話でもないでしょうし。ただ豪炎竜を撃ち落とすような存在が今空にいる、のだけは確かかと。落ちてきたのが豪炎竜であればね。しかし豪炎竜や颶風竜が食い止めてくれれば、地上には問題ないでしょうし。ですから話半分に対策すればいいかと。どれも今回の件に限らず常に気をつけておいたほうが良いことですし」



「は、ははっ、確かにそうですね。正直自分で伝えておいてなんですが、こんなにヤバい件だとは思っていませんでした」



「まあ最悪の場合はこれ、とお考えいただければ」


「なるほど、ありがとうございました。クレイト殿がいてくれて助かりました。うちにはこのような知識を持つものがいなかったもので。さっそくラカハイでも対応をしておきます」



「それがよろしいかと。物資はいくらあっても困りませんからね。それに高低差のあるラカハイなら空からでも攻めにくいですから、準備さえしておけば何とかなるでしょう。慎重な領主様であられて住む者も助かります」



「ははっ、そのような褒められ方をしたのは初めてですよ。そういえば先程から赤い大きなものが向こうにちらりと見えるのですが、あれはなんでしょう?」



やべ、見切れてるみたいだけど見えてたのか。



「あー、はい。別に領主様に隠すことではないので紹介いたしましょうか?」


「へ? 紹介?」



「では少し失礼して。連れてまいります」


「え? 連れて?」


ドニーさんの顔が真っ青になる。人間の姿のリヒューサでもびびってたからなぁ。ドニーさん大丈夫だろうか?



伏せた体勢だったレッドドラゴンが起き上がり、近寄ってきたクレイトさんとなにか話をしてから、こちらに歩いてきた。別に地響きがあるわけじゃないけど、なんか歩くたびに地面が揺れている気がするほどの迫力だ。


クレイトさんがレッドドラゴンを引き連れて戻ってきた。


「レッドドラゴンのヴァルカです。つい最近わたしの配下となりました。ヴァルカ、挨拶してほしい。彼は私の上司であるドナルド様だ。近くの町を治めておられる」



「クレイト様の上司というからどのような存在かと思えば、普通の人間ではないか。何故この様なものに従っておるのだ?」



ヴァルカが首を伸ばし、顔をドニーさんに近づける。


「人の世には力以外にもいろいろな尺度があるのですよ。ある部分においては彼は間違いなく私より上の存在ですよ」



「ふん、面倒なものだな。クレイト様の配下となったヴァルカである。クレイト様がそこまで買われる方であるなら従おう」



「わわわ私はドナルド・アレンという。ヴァルカ殿、こここ今後共よろしくお願いしたい」



若干声が震えてるけど、ドニーさんとしては堂々としたものだ。


クレイトさんの上と紹介されては逃げるわけにもいかないよな。


実際お付きの人たちは椅子から立ったドニーさんの横にすっと入って守る素振りを見せてたし。


優秀な兵のようだ。



ヴァルカが下がって、ようやくドニーさんが落ち着いたようだ。ふーと大きく息を吐いて椅子に座る。



「いやぁ、いつの間にかレッドドラゴンを配下に加えているとはさすがですね、クレイト殿」


「レッドドラゴンの他にもナーガラージャの部族を一つ配下に加えることにしました。今度報告に行こうと思っていたのですが」



「はぁ、ナーガラージャですか」


ナーガラージャがよく分からなかったようで、お付きの人に聞いているようだ。


「なんとリザードマンに続きそんなものまで。クレイト殿にまかせておれば東を平定してくれそうですな」



「いやぁ、先程の魔王の件もありますが、何やら東の向こうにいるゴブリンが勢力を増しているという話も聞いておりますので、警戒しているところです」



「なんと、それはエテルナ・ヌイは当然として近くのラカハイも気にせねばいかんことですな。やはり早急に備えをしておかねばならんようです。ここにラカハイの兵は置かなくてよろしい?」



「お気遣い感謝いたします。幸いエテルナ・ヌイの戦力は増しておりますので、ドナルド様の負担を増やす必要はないかと」



「そ、そうか。それは助かる。何か手伝えることがあったらいつでも言ってほしい」


「ありがとうございます」



「おまたせしましたー」


ユーリアがお盆にお茶を乗せてこちらに来た。どうやら間に合ったようだ。



「おお、ユーリア殿、お気遣いありがとうございます。ちょうど喉が乾いておったのです」


ちょうどユーリアが来たタイミングで向こうからナーガーラージャ、オーガ、オーク、ナーガが一体ずつケリスさんに連れられてやってきた。ドゥーアさんは向こうで取り仕切りをしているようだ。



クレイトさんが立ち上がって、皆を出迎える。


ドニーさんは傍目ビビってしまったようだけど、威厳を保つためか座ったままだ。そのかわりお付きの者が警戒の体勢になる。



「おまたせしました、クレイト様。各部族の代表者、ナーガラージャは代わりのものを連れてきました」


「私は部族のシャーマンの弟子です。ハギル様の代理としてきました」


「わしはオーガの棟梁だ、ハギルは強いし頭がいいから信用している。そのハギルの判断だから従うぞ」


「俺はオークの戦闘隊長だ。こっちに来たオークは俺がまとめることになっている。ハギル様の判断に従う」


『ついてきたナーガのなかでもっとも年長だったので来た』



最後のはナーガの念話だ。さすがに蛇の頭では日本語はしゃべれないようだ。しかし会話は出来るようで良かった。



「か、彼らも配下にしたのですか? クレイト殿?」


少々声が滑ってる気がするけど、醜態は晒していない。



「そうなるかどうかこれから相談するところですね。ナーガラージャは決まりましたけど」


クレイトさんが座っているドニーさんに恭しく頭を下げてから答える。代表者に誰が上か分からせるためにわざとそうしたようだ。



「さて、オークの方々は昔からハギル殿のところにいるからひとまとめで良い、と聞いていますがそれでよろしいかな? 戦闘隊長殿?」


オークだけど歴戦といった感じの雰囲気を醸し出している戦闘隊長が返答した。



「俺は戦闘隊長であって、そのようなことを判断する権限はないが、個人的な意見を言えばそれでかまわないと思う。皆従うだろう」



「そうですか。ハギル殿はああ言いましたが、君たちにも一応聞いておかなければと思いましてね。あなた方には戦死者も出ているから恨みもあろうかと」


「攻め入って戦死者が出たから恨むとかどんなバカだ? 我らはそこまでバカではない」


「あ、いえ、バカにしたつもりはないんです。ただそういう考え方をするものもいるかもと思いましてね」



「人間とは度し難い思考をするんだな。人間は賢いと聞いていたのだが。心配せずとも恨むようなものはいない」


一瞬怒ったような感じのオークだったがすぐに表情が柔らかくなった。豚の顔に見えるけど表情豊かなんだな。



「今度のボスは変わった奴なんだな」


「ええ、よく言われます」


オークの失礼とも言える発言を軽く受け流すクレイトさん。



「さて、ではオーガの棟梁さん、あなた方はナーガラージャの部族とは基本無関係の流れというか雇われみたいなものと聞いています。今回の降伏に関し、あなた方はどうされますか?」


「どういうことだ?」


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