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陽動

ゴーレムの運用などでファーガソンさんと話し終えたところぐらいで、急に羽ばたき音が聞こえてきた。



「ここにおったかリュウトよ」


リヒューサがドラゴンの姿で飛んできたようだ。改めて見ると迫力あるな。


「ええ、どうかしましたか?」



「うむ、急なことだがリザードマンの村へしばらく戻ることになった。クレイト様も探したが見つからない故、リュウトに言っておこうと思ってな」



あー、今頃はたぶん義体工房の地下だろうしな。リヒューサには関係のない場所だから知らないかもしれない。



「そうなんですね、分かりました。あとでクレイトさんに言っておきます」



「ああ、頼んだぞ。数日は戻らぬかもしれん」


そういって飛び立って行った。レミュエーラが少しの間ついて飛んでいったようだが、しばらくして戻ってきた。



「レミュエーラ、リヒューサ他になにか言ってた?」


「うんー、もしかするとリザードマンの村がナーガラージャに襲われたかもしれないから、危ないからエテルナ・ヌイに戻りなさい、って言われた」



「ええ!? それってやばくない? とりあえずクレイトさんに早急に報告しておいたほうが良さそうだ」



ファーガソンさんは腕組みして考えてこんでいる。


「そのリザードマンの村というのはエテルナ・ヌイと取り決めしてるというところですか?」



「そうです」


「ふむう、陽動かもしれません。早急にエテルナ・ヌイの防衛も固めた方がよろしいかと」


えええええ、そこまでの大事か。慌てて指輪をこすってクレイトさんを呼び出す。



『どうしたんだい?』


はい、先程リヒューサがリザードマンの村へ戻っていったんですが、どうもそのリザードマンの村が襲われたようでして。それにファーガソンさんがそれが陽動の可能性があるからエテルナ・ヌイも防衛したほうがいいということでして。



『なるほど、それは大事かもしれない。分かった。すぐに合流しよう』



俺とファーガソンさんとレミュエーラの三人は義体工房のある建物の前まで来てクレイトさんが出てくるのを待った。


日課をしていたはずのユーリアもケリスさんとともにやってきた。


たぶんクレイトさんから念話がきたんだろう。他の義体も集まってきている。



すぐにクレイトさんとドゥーアさん、アルティナさんも建物から出てきた。


「先程主だったものはここに集まるように言った。詳細を聞いておきたい」



ファーガソンさんが答える。


「俺はさっき念話で言ったことが全部です。早とちりからもしれませんが、本当に攻めてきたらことですので。根拠はリヒューサ殿が慌てて飛んでいったことと、勘です。リヒューサ殿がいるところを攻めるようなバカはいないでしょうし」



「ふむ、レミュエーラ、悪いが偵察に出てくれるか? もし敵がいたら矢や魔法を飛ばしてくるかもしれないから気をつけてな」



集まってきた義体の中からハンターの義体も偵察に立候補して行ってくれた。



「行動の素早い相手ならすぐにでも来る可能性はあります。気をつけて」



とりあえずゴーレムたちは作業を中断して防衛に入ってもらうことにした。瓦礫を門の前に集めるようにもお願いしたけど。



すぐに東へ飛んでいったはずのレミュエーラが戻ってきた。


「いた、いた。オーガがこっちに向かって歩いてた。見えなかったけど、近くに小さいのもいたと思う」



小さいのってのはナーガラージャかナーガ、あるいは支配しているオークだろう。今までオーガなんかそんな近くで見かけたことはなかったはずなのに、こっちに向かってきているというのはファーガソンさんの勘が当たったのかもしれない。



北に向かったハンターはまだ戻ってきていない。

北からはこないのかもしれない。

一応念の為何体かはゴーレムを残して、残りは東へ集中させることにした。



東門の前に三十体を超えるゴーレムを配置した。半分は後方にひかえてもらったけど。


正面には虎の子とも言えるアイアンゴーレムも配置した。

配置した場所それぞれに瓦礫を集めてあって、さっそくやってみる手はずになっている。



「最優先事項はユーリアを守ること。その次がリュウトだ。最悪エテルナ・ヌイは放棄しても構わない。あとから奪還すればいいからね」


「はい、了解しました。ユーリアとリュウトさんの身の安全を第一に考えます」



クレイトさんがファーガソンさんに優先順位を告げた。ユーリアはともかくとして俺も入るのか……。前にそんな事も言われてたしな。


第三者に言うということは本気だったんだな。いや疑ってたわけじゃないけど、改めて確認すると、ね。



「今の所弓兵の存在は確認できてませんが、門や壁近くには寄らないようにしてください。近くに外側からに向けての遮蔽物がある場所がベストです」


そう言われてゴーレムの立ち位置を微調整した。まあゴーレムに矢はあまり効かないんだけどさ。ちなみに俺たちを含めた生身は最後方で集まっている。レミュエーラだけが上に高く飛んでるけど。様子見をしてくれている。



俺はアポーツで武具や魔力増幅のアクセサリ、万一のためのポーションなどを取り寄せた。ちょっと恥ずかしいけどイヤリングもしておく。



「おお、素晴らしい魔法ですね。……ところで私にも使える剣とか取り寄せることはできないでしょうか?」


ファーガソンさんが剣を所望した。

まあ確かにもうすぐ戦いになるという場所で元軍人が武器もなしでいることに不安を感じるもの当然かも知れない。


しかし俺は自分が事前に用意したものしかアポーツできないからなぁ。



「僕が取り寄せよう。片手剣ならなんでもいいかい?」


「ええ、片手剣なら種類は問いません。お願いします」



俺の代わりにクレイトさんが剣を取り出してくれた。……なんか俺の剣よりずっと豪華な魔法の剣っぽいですね。


『また今後リュウトにプレゼントしようと思ってたこれしか思いつかなかったんだよ』



まあ今の俺は盾さえあればなんとでもなると思うので、それはファーガソンさんへ。



「魔法の剣のように見えますが、これを私に貸し与えてよろしいのですか?」


ファーガソンさんが遠慮してる。魔法の武具はやっぱり珍しい存在のようだ。あまり見たことがないからな。



「ああ、ぱっと思いついて取り寄せることが出来たのがこれしかなかったんだ。特に変な魔法はかかっていないはずだから自由に使ってくれて構わないよ」


「助かります。お預かりします」



「見えた! オーガを先頭にナーガとオークがきてるね」


ナーガの存在が確認できたので、俺とアルティナさん、ユーリアとでゴーレムたちにマジックシールドをかけていく。



「ナーガがいるということは、これはナーガラージャの襲撃と考えて良さそうですね」



オーガが門をくぐって突撃してきた。その手には石斧や引き抜いたばかりっぽい木を持っていた。



「オーガが武装化してますね。ナーガラージャの入れ知恵でしょうか?」



ファーガソンさんが質問?してきた。

オーガは基本武器を使わないのか。

まああれだけの図体してれば素手でもなんとでもなりそうだしな。

こっちのゴーレムと同等の体格してるし。



「こっちがゴーレム主体だって知ってるからかもしれませんね」



「ああ、なるほど、それはありえますね。誰だって、それこそオーガだって素手でゴーレムを殴りたいとは思わないでしょうし」



そりゃ確かに石や鉄の塊は殴りたくないよな。



戦況はこっちに有利だ。突撃されたのですでに接敵されてしまったけど、オーガの数が少ない。

こっちはオーガの倍はいる。ストーンゴーレムと一対一で五分五分といった実力みたいなので、囲んで叩けば終わりそうだ。

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