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レミュエーラ

リヒューサが皆を引き連れて俺とグーファスが墓参りに来た客用に外に設置している休憩場所でお茶してるところまで来た。



「リュウトよ、ユーリアから聞いたぞ。わしとの模擬戦を所望しておると」


え? なんでそんなことに?



「違いますよ。クレイトさんが提案してきたんですよ」


「なんと、クレイト様が? 良かろう。クレイト様がおっしゃるなら相手してやらんこともない。が、今のわしの本来の姿となのか?」



「ええ、そうみたいです。敵は人型に限らないから、と」


「ふむ、それもそうじゃな。それにわしとまともに戦えるなら誰とでも戦えるしな。しかし今のわしはケリスにも負ける気はせんが、リュウトで相手になるのか?」



うわー、ケリスさんでもダメなのか。俺じゃ手も足も出ないな。


「俺だけでは相手にならないかと。クレイトさん的には、リヒューサとクレイトさん以外のエテルナ・ヌイ住民+手伝いの冒険者と、リヒューサの大勢対一を考えているみたいですが」



「ほう、集団戦か。まあそれぐらいせんと模擬戦にもならんしな。今からやってみるか?」



なんかアルティナさんがすっごいワクワクしてるように見えるんだけど。


確か竜マニアだったよな。


竜と命のやり取りをしなくて戦える機会とか滅多にあるものじゃないしな。



だからアルティナさんがワクワクしてるのは分かる。



なんでユーリアやレミュエーラまでワクワクしてるんだ?



君たちがリヒューサを焚き付けたのか?



「今は無理ですよ。提案されたときと比べたら義体が増えたけど、戦闘方面の人はアルティナさんぐらいなものだし、冒険者の手配が済んでませんから。それに参加予定の冒険者にもうすぐ出産しそうな方もいるんで、しばらくあとになると思います」



「ほう、そんな者がいるのか。良ければ安産のお守りをくれてやってもいいぞ」



「そんなのがあるんですが?」



「わしは長らくリザードマンの村の長老をやっておったからな。そういうのにも長けておるのよ。それにお守りの材料、わし自身で作り出せるようになったからな。別にリザードマンに特化したお守りでもないしな」



「おお、それはいいですね。初産らしいので心配はしてるみたいなんで。そういうのがあったら喜ぶかもです」



「そうか、よろしい。ならば今日はわしも屋敷に行くことにしよう。屋敷におるんじゃろ?」



「はい、けどリヒューサがくるとなるとクレイトさんに聞いてみないと」


「僕はかまわないよ。ロメイくんも喜ぶだろう」



いつの間にかクレイトさんが俺の背後にいた。クレイトさん気配ないから気づけないんだよなぁ。


「私もご一緒してよろしいでしょうか?」



アルティナさんも一緒に行きたいと聞いてきた。竜マニアだし何をするのか気になるだろうから、まあ分かる。


「あたいもいきたいー」



レミュエーラまで行きたがるのは予想外だった。隣でユーリアの表情が曇っている。


ユーリアにはレミュエーラは連れていけないと分かっているからだろうな。


それにグーファスもレミュエーラを止めようと声をかけていた。



しかし予想外の返答をクレイトさんはした。


「ああ、良い機会だからレミュエーラも人間の住むところを見に行ってみようか?」



ユーリアの顔色が一気に良くなる。


「しかしその際に一つ魔法を受けてもらわないといけない。君は嫌がるかもしれないが」



「何の魔法ー?」


「人間に変身する魔法さ。少し違うけどリヒューサが今使ってるようなものさ」


「おー、あたいも人間に化けれるの?」



「ああ、僕なら出来る。レミュエーラが自力でそう出来るようになるには相当な努力が必要だけどね」


「そっかー、とりあえずかけてー。面白そうだったらあたいも自分で使えるよう頑張ってみる」



その場でクレイトさんがレミュエーラに魔法をかけようとすると、アルティナさんが止めた。



「お待ち下さい、クレイト様。ここでは、その」


「うん? なんだい、なにか都合悪かったかい?」



「はい、そのクレイト様が使おうとされてるのはポリモルフ・アザーなのでは?」


「ほう、さすがだアルティナくん。それだよ」



「ポリモルフ・アザーでは服の生成までは出来ませんので……、そのレミュエーラの下半身は鳥なので何も身に着けておりませんので……」



おおう、それはやばい。


ここにはクレイトさんは術者だから例外としても俺やグーファスもいる。



「……?! ああ、そういうことか。申し訳ない。アンデッドになって長いのでうっかりそのへんの気の回しができなくなっていたようだ」



「いえ、仕方ないことかと。あちらで私が布で隠しながらでよろしいかと。下着や下の衣服は私の予備でなんとかしましょう」



俺とグーファスはグーファスの自室へひっこむことにした。



自室と言ってもベッドと椅子と小さなテーブルが一つずつあるだけだったけど。



戻ってしばらくもしないうちにユーリアが呼びに来た。


外で待っているとアルティナさんと手をつないで、上半身は元のレミュエーラのままの人間の少女がひょこひょこと不器用そうに歩いてきた。



元とは足の構造が違うからか歩くのに難儀しているようだ。


しかし元々顔の作りは良かったからこれは屋敷の男の子たちにもてそうだな。


印象が鳥の下半身のときとまるで違う。



しばらく歩行訓練を行った。レミュエーラはすぐに慣れて走れるようにまでなった。


それをグーファスも優しい笑みを浮かべて見守っていた。急にレミュエーラが方向転換してグーファスに飛び込んできた。



「グーファス、肩に乗せてー」


時々グーファスの肩に留まってはいたけど、人間の姿で肩に乗れるのかな? と思ったけど、グーファスの体格なら余裕だった。グーファスの肩にレミュエーラが腰掛ける。



「人間だとこんな感じなんだー」



「グーファス、済まないがレミュエーラの保護者として屋敷まで付いてきてくれないか。もう慣れたようだが足の心配もあるし」



クレイトさんがグーファスも一緒に屋敷へと頼んだ。


俺もその方がいいとは思う。


レミュエーラはバカではないけど人間には不慣れだから何するか分からないしな。



ユーリアが羨ましそうにレミュエーラを見ていたのを気づいたのか、グーファスはユーリアもレミュエーラとは逆の肩に載せてあげた。


ほんとすごいな。俺にはとても真似できない。そのままのっしのっしと歩いて遊んでいた。



「さて、ではそろそろ小屋へ戻って屋敷に行こうか。皆も付いてくるのはすでにドゥーア殿に報告は入れておいた」


そういえば今日はまだドゥーアさんを見かけてない。義体も増えていろいろと忙しくなっているようだ。



小屋までの帰りは大所帯になったので調子が戻ったケリスさんが護衛についてきた。


このまま小屋で待機してグーファスたちがエテルナ・ヌイに帰るのに付き合ってくれるようだ。



屋敷へ皆で転移門をくぐって行く。まずは俺とユーリアが先に降りる。クレイトさんが降りてきたら子どもたちが集まるので壁となるためにいつもそうしている。



しかし今回はクレイトさんの前にグーファスが降りてきたのでグーファスに子どもが集まった。


最近遊んでもらったし、インパクトのある見た目だしな。



そのあと静かに少女二人が降りてきたが、子どもたちはグーファスに意識を取られたのか気づいていないようだ。



最後に今回は無事にクレイトさんが降りてきた。クレイトさんにはスタッフが集まる。



ファーガソンさんとシムーンさんがそれぞれクレイトさんに報告をしている。


どうもロメイさんは体調が優れないということで今は休んでいるようだ。そろそろかもしれないと言っていた。

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