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良い香りの石鹸

しばらくして解散になって小屋に戻った。



その際にグーファスも連れてきた。残念ながらレミュエーラは留守番だ。



クレイトさんによるとラカハイの鍛冶屋スミスさんところに直接行ってゴーレムの素材を分けてもらってきてほしいとのこと。



その際に鍛冶場で足りてない素材や道具なども分けてもらえばいい、と。



確かに伝聞だと何かと面倒なところがあったし、質に関しては信じるほかなかったからね。


それにラカハイで有数らしい鍛冶屋のスミスさんと会うことはグーファスにもプラスになりそうだし。



四人で屋敷に戻ると、階段を降りたところで子どもたちに囲まれた。


見知らぬ体の大きなグーファスに興味津々のようだ。



グーファスは突然子どもたちに囲まれたのにも気にせず、子どもたちの相手をし始めてくれた。


小さな子どもたちがグーファスの大きな体をよじ登り始めたのでグーファスはポーズをとって付き合ってくれている。



笑顔だ。



普段はあまり表情が動かないグーファスだったので、これだけでも連れてきた甲斐があったかもしれない。



『子どもたちも楽しそうだし、しばらく遊ばせてあげよう。あとでグーファスと一緒にスミスさんところへいって、銅と青銅を分けてもらってきてほしい。それぞれ10キロもあれば助かるけど、少なくてもいい』



分かりました。子どもたちが飽きてきたら行くことにします。



『ああ、任せたよ。僕は小屋に戻って研究を続けるから。ユーリアには好きにさせるといい』



そういえばユーリアは……、見てみると小さなルクスがグーファスによじ登るのを手伝っていた。ユーリアも楽しんでいるようだ。



しかし子どもとはいえ三人、いや四人にまとわりつかれてもびくともしてないグーファスすごいな。さすがのマッチョマンだ。



しばらく子どもたちを眺めていたが、疲れてきたようで動きが鈍ってきた。



グーファスは腕まで登ってきていたルクスを肩車してあげて屋敷内を歩き回ってから、開放した。


子どもたちからは僕も私もーという声が聞こえたが、今度来た時にね、とグーファスは断っていた。



「お待たせしました、リュウトさん」


「いや、休憩しなくていいのかい?」



「はい、ここで休憩してたらまた子どもたちが来てしまうでしょうから」


「そっか、ユーリアはどうする?」



「場所わかるなら屋敷に残ってルクスたちの相手しておくよ」


「おー、そっか。多分分かるから大丈夫だ。それじゃ行ってくるよ」



「いってらっしゃーい」


カバンを持ってグーファスと屋敷を出た。



「よい子どもたちですね。村での生活を思い出しました」


グーファスが道中小声で話しかけてきた。



「そっか、大丈夫かい?」


「あ、はい。気を使わせてしまって申し訳ないです。むしろ楽しかったことを思い出せてよかったですよ」



確かグーファスの故郷はネクロマンサーたちに潰されたんだったっけ。


本人はさらわれていいように使われてたみたいだし。



「ほんとに皆様には感謝してるんですよ。まさか町まで来れるなんて」



「グーファスは以前にも町には来たことなかったの?」


「はい、私は村から一歩も出たことがなかったです。むしろそれが普通ですね」



「そうなんだ。それじゃちょっと広場に寄っていこう」


「広場、ですか?」



「ああ、いろんなのが売ってるんだ。何か欲しいものがあったら是非言ってほしい。いつもエテルナ・ヌイで苦労かけてしまってるし」



「おー市ですか。話には聞いことがあります。まさか自分で行けるとは」


俺も以前町に行きたかったことあったしな。



それを思い出したらグーファスにもいい目を見てほしいってのはある。


前に我慢させてしまったようだしね。



グーファスのその大きな体は皆の注目を浴びたけど、そのおかげで得も多かった。


なにか買えばおまけを付けてくれることが多かった。食べ物とかだと特に。



「肉串や果物のジュースとか村の祭り以来ですよ。町ではいつでも食べられるんですね!」


俺のおすすめをグーファスにも食べてもらった感想がそれだった。



村の生活だとそんなものなんだな。



あのグーファスが興奮してる気がする。


祭りを思い出しているのかもしれない。



さて、小腹も満ちたし、そろそろお使いをやるかと思ったら、グーファスが一点を見つめていた。


その方向を見ると小物を扱っている露店だった。



「なにか買うかい?」


「あ、いえ、俺だけこんないい目にあったからレミュエーラにもお土産持っていった方がいいかな、とか」



「それもそうだな。俺もユーリアのを買いたいな。買っていこうぜ」


「いいんですか?」



「もちろん! たまにはこれぐらいの約得あったっていいよ。グーファスはいつも頑張ってるし。それにレミュエーラだって女の子だからな。プレゼントはきっと喜ぶぞ」



レミュエーラは半分鳥ではあるけど、もう半分は人間の女の子だからな。


アクセサリとかつけてたっていいと思うし。



あーけどアクセサリを送るとかだと、なんか意味づけされてたりするんだっけ? こっちの世界では分からないけど。


小物の露店の前まで来て悩んでしまった。グーファスを見るとどうもグーファスもそのようだ。


アクセサリとかもそれなりに置いてあるけど、ちょっと怖いな。



「彼女になにか贈るのかい? それとも彼女じゃない人かい?」



露店の店主の女性が話しかけてきてくれた。願ってもない質問だ。



「あーはい、妹みたいな子にです」


「俺もそんな感じです」



グーファスもやッぱり同じ悩みだったか。


「みたいな、ってことは妹じゃないんだね」


「あーはい、そうです。師匠の娘さんです」


「俺のは違うけど似た感じです」



グーファスのは説明できないからな。俺に合わせるのは正解だと思う。



「なるほどね。それじゃこれなんかどうだい?」


露店の店主が小さな木箱を出してきてくれた。一体なんだろ? 受け取って開けてみる。開けてみると薄い黄色の四角いものが入っていた。


結構良い香りがする。これもしかして石鹸か?



「最近の売れ筋だよこれは。香り石鹸さ。体がきれいになる上に良い香りだからね。今までの石鹸とは違うものさ。……少々値は張るけどね」



石鹸か。特に意味もなかったと思うし、実用品だから喜ばれそうだ。あーでもユーリアには向いてないかなぁ。ユーリアが風呂に入るのはいつもみんなと一緒だし、独り占めするような子じゃないしな。



けどレミュエーラには向いてそうだ。ハンターだから香りがつくのは嫌がるかもしれないけど、そこまできつい香りじゃないし。



「香りそんなについてなくていいので、安い石鹸はないですか?」


「そうだねぇ。香りがほとんどないって程度のならあるよ。もっと安いのもあるけど、それらはひどい匂いがするからね」



「おいくらぐらいしますか?」


「そうだねぇ。この香りつき石鹸は三ゴールド、匂いなし石鹸は一ゴールドだね」



う、確かに少々値が張るようだ。けど衛生には気をつけたほうがいいのは確かだし、これをテストケースとして導入して良さそうなら屋敷全体に導入するのもありかもしれない。



「それじゃ匂いなしの方を二個ください」


「あいよー、まいどあり。香りつきの方のかけらもおまけしておくから、使ってみて良ければまた買いに来ておくれ」



「あーそれは助かります。香りがつくのがどうなのか俺たちでは判断できなかったので、試せるのはありがたいです」



小さな巾着袋に入った石鹸を手渡された。


「かけらも一緒に入れてるからね」


「ありがとうございます」



二ゴールドを渡して受け取ってカバンに入れた。グーファスはカバンを持っていなかったので。


「よし、そろそろ役目を果たしに行こうか」

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