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獲物の処理

「今回は慣れてもらうためにまず低品質のコアで義体を作ってるからね。低品質だから逆に難しい面もあるけど失敗しても問題ないし。うまく完成したらエテルナ・ヌイの誰かに入ってもらおうと思うよ」



「低品質とはいえ、ぶっちゃけ私の義体も低品質のコアですからな。希望者はたくさんおりますよ」



ああ、そうかもしれないな。



今後のエテルナ・ヌイでは霊体のままでは活動しにくくなるし、ゴーレムでは人としての生活は一切取り戻せないからな。



低級でもドゥーアさんやケリスさんみたいに人の真似事みたいなことは出来るようになるし、なにより喋れるようになるのは大きいと思う。



「高品質は数が少ないから私がやるとして並ぐらいは彼らに任せられるようにしたいからね。義体にばかり僕は時間使えないからさ」



「ははっ、分かっております。我らの同胞を迎えるためのものです。頑張らせていただきます」


「義体作りに今の義体の性能が関わってくるのなら、やっぱりドゥーア殿の義体は高品質に変えたほうがいいだろうね。今と見た目はそっくりにして。今使ってる義体は見た目を変えて他のものに渡せるようにしよう」



「はい、私も食べられるようになるのですか……、皆に悪い気もしますが」


「そのへんは役得ということでいいんではないだろうか。皆の義体に関わってくることだからね。あとケリス殿も高品質にするつもりだよ。やっぱり近接戦闘するなら高品質の方が良いだろう。ケリス殿の腕前が低品質の義体のせいで能力が下がっているのはもったいない」



ケリスさんは、え? 私も? みたいな顔をしている。


これだけ表情豊かでも低品質というんだからすごいよなぁ。



そっか、今までは義体の性能に足を引っ張られてケリスさん本来の能力を出しきれてなかったのか。


もし高品質になったらもう模擬戦では勝てなくなるかもしれないな。



今のままでも正面から打ち合って勝ったこととかないんだけどさ。



「さて、僕らはもう少し義体の作成を続けるよ。だから僕をおいて小屋に帰っていいよ。屋敷に行くといい。ジャービスさんには連絡しておくよ」



「あー、もう少しだけエテルナ・ヌイにいると思います。ダロンを皆になじませたいので」


「ああ、なるほど。そういうことなら帰る際に念話で教えておくれ」


「分かりました」



「それじゃ皆頑張ってねー」


ユーリアが残る皆に手を振る。釣られたのかクレイトさんまで手を振り返している。



また三人で外へ出る。


「ケリスさんは特に用事はないんですか?」


「私の用事は皆様の護衛ですよ。皆様がいない時は周辺の偵察などをやっておりますが、最近はゴーストたちが頑張ってくれておりますからね。暇してますのでレミュエーラの狩りやグーファスの木こりにつきあったりもしてますよ」



「最近異種族の動きはないんですか?」


「そうですね。ゴーストの報告や私が見てきた限りでは動きはないようです。同盟したリザードマンたちがうまくやってくれているのか、リヒューサ殿を恐れているのか。今リヒューサ殿はリザードマンたちのところへ戻っておりますがね」



ああ、だからリヒューサを見かけなかったのか。まあ異種族の動きがないのは良かったけど、油断しないようにしておかないとな。

ケリスさんの様子を見る限り、まったく油断はしてなさそうだけど。頼もしい。



「やあグーファス」


グーファスは鍛冶場ならぬ工作場と化した建物の裏の庭状になっているところにいた。



そこにダロンとレミュエーラとともにイノシシを吊るしているところだった。


「リュウトさん、こんにちは。いやぁ、ダロンくんはすごいですなぁ。俺でも難儀するイノシシ吊りを一人でラクラクとやってしまいましたよ」



「なんで吊るすんです?」


「血抜きと、そのあと解体しやすくするためですね。聞いたことありませんか?」


「ああ、なんか聞いたことあるな、血抜きしないと不味くなるとか」



「そう、それです。まあアルティナさんに教わってレミュエーラがフリーズの魔法を使うようになって獲物の体を冷やすようになってからは、あまり血抜きしなくて良くなったんですけどね」


「ああ、だからイノシシの体、冷たかったんだ」



ダロンが今理解したようだ。


「そうだよ、アルティナさんが狩りしたあとはすぐにその獲物にフリーズをかけると美味しくなるって教えてくれたのさー。私の魔力じゃ完全に凍らせることは出来ないけど、冷やす程度でいいんだって。それにフリーズでアンデッド化も防げるんだって」



「へー、どういう理屈なんだろうね」


「フリーズのおかげでその場で血抜きしなくて良くなって効率と安全性が上がりましたからね。なかった時はその場で、血がある程度抜けるのを待ってましたから。その際ウルフとかが近寄ってくる可能性もあって危険でしたし。鮮度の問題で内蔵はその場で捨てていたので利用できませんでしたからね」



アルティナさん俺の知らないところで大活躍していた。


「ところで皆にレミュエーラの家にきてほしいんだけど、いいかな?」


「はい、ちょうど先程吊るし終わったところで、待ちの時間がありますからいけますよ」



グーファスたちが手を洗ってから、レミュエーラの家に移動する。


「おお、とうとうできたんですね、止まり木」



「ああ、ただレミュエーラを見ずに作ってもらったから不具合があると思うって言われてるんだ。だからその対処にグーファスにお願いしたくて。俺工作とかよくわからないし」



「もちろんいいですよ。ほらレミュエーラ、止まってみな」



レミュエーラが羽ばたいて止まり木に止まる。が止まったところが端すぎたのか止まり木がぐらついたので慌てて根本よりに移動して事なきを得た。



「ふむ、止まれることは止まれるようですがちょっと端だと土台が足りないようですね。補強しておきますよ。このままでも止まる場所に気をつければ問題はなさそうですし」



「止まり木の太さはどうだい、レミュエーラ」


「うん、ちょうどいい感じ。掴みやすいよ」


太さが問題ないなら簡単な補修で済みそうだ。良かった。



レミュエーラが急に飛びついてきた。


「ほんとにありがとね、リュウト」



レミュエーラは言うほど重くはないけど勢いがあったので倒れそうになる。


「おいおい、なんだよレミュエーラ」



「え? だって人間の感謝の仕方はこうするんでしょ? リヒューサに教えてもらったんだもの」


うーむ、間違ってはいない気もするが間違ってる気もするぞ、リヒューサ。わざとなのか天然なのか判断に苦しむところだ。



「まあそういうこともあるけどな。そこまでしなくていいよ。……なんかユーリアが睨んでるし」


ふと見るとユーリアがこっちを睨んでいた。顔が真っ赤になってる。



怒ってる? なんで? もしかして焼いてくれたのか。


「あははー、ユーリアを差し置いてとって食べたりはしないさー」



なんか物騒なことを言ってレミュエーラはユーリアの近くに降りた。


「でもほんとに感謝してるんだよ。今までずっと地べたで寝てたから、あまり寝付きよくなかったんだ。これからはゆっくり寝られるよ」



「そっか。遅くなってすまなかったな」


なんかレミュエーラがユーリアに耳打ちした。ユーリアは驚いたように俺にしがみついてくる。


「あははー。あたいはユーリアの味方だよー。あたいにはグーファスがいるしねー」



グーファスは笑っている。

ダロンはよく分かっていないようだ。


ダロンがまだ子どもでよかった、のかな? ケリスさんはやれやれといった感じだ。

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