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止まり木

こちらとしては一大イベントだった領主様からのお呼ばれが終わってから数日、何事もなく日は過ぎていった。



エテルナ・ヌイではグーファスやアルティナさんの頑張りで大掛かりな乾燥室が作られて薪の量産に入っている。といっても乾燥室を使ってもしばらく時間がかかるみたいだけど。



荷物に紛れて手渡すのを忘れていた楽器はグーファスに発見されて無事レミュエーラの手に渡っていた。


ある日エテルナ・ヌイに来た際にいきなり曲を披露してもらったのにはびっくりした。

グーファスは村に住んでいたときに楽器に触ったことがあったらしく懐かしさで触っていたらレミュエーラが興味を持ったので演奏の仕方と曲を一つ教えたそうだ。



その曲は簡単な旋律ながら味わい深くて何か哀愁を感じる曲だった。


グーファスの境遇を考えたら仕方ないよな。



けどあえて今度は明るい曲を、と注文した。


祭りのときとかに演奏してたらしく明るい曲も知ってるらしいので。



すでに完成していたレミュエーラ用の止まり木を力自慢の子ダロンとともにカムシンさんのところへ受け取りにも行った。


費用は材料費という名目の一ゴールドしか受け取ってくれなかった。入門したての弟子の指導に使ったからという理由で。



ダロンに運ぶのを頼んだのは身内だから、の一言かな。まあもうリヒューサも見てるからレミュエーラもいけるだろうとの判断もある。ダロンなのは怪力のギフトのためだな。徐々にしていったほうが良いだろうし。


ダロンは止まり木をかついで屋敷の二階へ俺と一緒にあがる。二階に入るのを許可された最初の子どもになった。



小屋にはユーリアが待っているので先に転移門に入るよう促した。


さすがにこんな見たこともない光り輝くものにびびっていたけど、意を決して入っていった。その後を追う。



小屋にいたユーリアにびっくりしたようだけど、なんとなく納得がいったみたいでダロンは何も聞いてこなかった。



まあ今後も危ないから決して一人では二階に上がらないようには言ってある。


逆に言えば今後は俺とかクレイトさんとかと一緒ならついてきてもらうこともある、という風に言った。



クレイトさんの部屋から止まり木を出すのに、扉が少々小さかったために苦労したけど、その足で俺たち三人はエテルナ・ヌイへ向かう。



「リュウトさん、あれはなんですか?」


ダロンが見ている方向を見るとスライムがはねていた。


最近は度々見るようになってきているので順調に数が回復しているようだ。



「ああ、あれはスライムっていうモンスターだよ。まあ俺らに害はないから大丈夫だよ。万一襲われても簡単に逃げれるし、ダロンならパンチでも倒せるんじゃないかな」



「へぇ、そうなんですね」


ダロンは緊張もせず楽しそうだ。これは大物かもしれない。入り口に立っていたゴーレムにもびびらなかったし。



予定外でエテルナ・ヌイにきたので出迎えはない。

ただゴーレムの前を通ったからすぐに誰かが飛んでくると思う。と思ってたらケリスさんが義体で走ってきた。

見知らぬ少年もいることを伝えてくれたようだ。



「これはこれはユーリア様にリュウト殿、どうされましたか? それにこの子は?」



「ああこの子は大丈夫、うちで面倒見てる子だから。けど当分義体でお願い」


「わかりました。用件は何でしょうか? なんならドゥーアさんを呼びますが」



「この子が持ってるこれを早くに持ってきたくてね」


「なんですか、これは? ああ、重たそうですな。歩きながら話しましょうか」


レミュエーラの住居に向かいながら話をする。



「おお、なるほど。それはレミュエーラも喜ぶでしょう」


「すいません、レミュエーラって誰ですか? なんでこれがいるんですか?」



ダロンが心配そうな顔をして聞いてきた。


「ああ、心配しなくていいよ。レミュエーラもおとなし……くはないか。別に襲ってきたりは……もしかするとじゃれついてくるかも?」



「な、なんなの? 余計に心配になるよ……」


レミュエーラの住居に入っていく。万一着替えでもしてたらアレだからユーリア先頭で。



「いないみたい」


余計な気遣いだったようだ。ダロンにここに置くように言う。



「狩りにでも行ってるのかな?」


「呼び戻してきましょうか?」


ケリスさんが提案する。



「いえ、それには及びませんよ。狩りだったら邪魔しちゃ悪いし。見れば分かるだろうし」


とか言ってたら部屋にレミュエーラが入ってきた。



「あれー? ユーリアとリュウトだ。どうしたのー?」


手に弓を持っているのでやっぱり狩りに行っていたのだろう。けどちょうどいいタイミングで戻ってきてくれた。入り口には眉間から血を流しているイノシシが転がっていた。



「え? この人?がレミュエーラ、さん?」


「そだよー、お前は誰かなー?」


「レミュエーラ、そこはお前じゃなくてあなただよ」



「そっか。あなたはだぁれ?」


レミュエーラの全身を見て、さすがのダロンもびびってしまったようだ。上半身はいいとして下半身は完全に鳥だからな。



「お、おれはダロン。クレイトさんとこで世話になってる。今日はこれを運んでくるためにここに来た」


精一杯の虚勢をはってダロンは頑張って自己紹介をした。


まだ虚勢だけどダロンは強いな。


俺がダロンぐらいの頃にレミュエーラを見たら泣き出す自信があるぞ。



「おー、クレイトさんとこの子かー。話は聞いてるよ。あたいはレミュエーラ、仲良くしてね」


うーん、レミュエーラ、あまり見かけないうちにだいぶと丸くなった?



リヒューサと一緒だったのが良かったのかな。


リヒューサはドラゴンで元リザードマンだけど社交性高い感じだしな。あーあとグーファスのおかげもあるだろうな。



「あ、これもしかして止まり木? リュウトちゃんと作ってくれたんだーありがとー」


「もちろん作ってもらってくるに決まってるだろ。ほらちゃんとあってるかどうか確かめてくれないか?」



「あーごめん、ちょっと待って。狩ってきたイノシシ、グーファスに預けてこないと。チヌキってのをしないといけないから、出来るだけ早く」



「どこにもっていけばいいんだい? 俺が持っていってやるよ」


ダロンが外に出てイノシシに触ろうとする。



一撃で仕留められたようで、目を見開いているイノシシに多少びびってるようだ。


実際俺だって死体は未だに怖いからな。ゾンビと戦ったおかげでだいぶと耐性は出来たけどさ。



「え? 重いよ、大丈夫?」


「ああ、俺は怪力なんだ、これぐらいなんてことないさ」



「ありがとうー、ダロン? ダロンでいいんだっけ?」



「そう、俺の名前はダロン」



「そっか、ダロン、こっちだよー」



レミュエーラが軽くホバリングしてグーファスが普段いる工房の方へ飛んでいく。


ダロンは難なくイノシシを担いでついて行く。



ユーリアが俺と一緒に外に出ながら


「大丈夫っぽいね、皆仲良くできそう。良かった」


俺も同感だ。



ダロンがグーファスと会っている間、俺とユーリア、ケリスさんとでクレイトさんの様子を見に行った。


クレイトさんはこちらで義体の作り方をアルティナさんとドゥーアさんに指導してるところだったはず。

だからいつもならドゥーアさんが来るところをケリスさんが来たんだしな。



結構厳重に見張られている建物の地下に降りていく。見張りのゴーレムたちは俺たちには反応しないけど、見知らぬものがきたらやばいんだろうな。



一声かけてから地下の扉を開く。ここがたぶん以前にアルティナさんが言ってた普段は義体を安置しているところなんだろうな。



「やあ、どうしたんだい?」


クレイトさんが出迎えてくれた。やっぱり察知してるよなぁ。



「あ、いえ、レミュエーラの止まり木が出来たのでこちらに持ってきたんです」


「ああ、そんな事も言ってたね。こっちは順調だよ。ドゥーアさんの魔力容量が少々足りないかもしれないが魔晶石があるからね」



見てみるとおそらく作りかけなのだろう、三体の義体が横たわっていた。一人一体ずつ作っているようだ。



「やあやあ、これは失礼いたしました。作業中でしたので」


「同じくです。こんにちは」


義体の近くからドゥーアさんとアルティナさんがこちらに来た。



「どうですか? なんとかなりそうですか」



「いやっはっはっは。私は魔法使いだったとはいえ、ずっと町長やっておりましたからなぁ。それに長いこと霊体やっておりましたから新たに覚えるのがたいへんですわ。魔力の扱いも雑になっておりますしなぁ」



「私も同様のはずですが死ぬ直前まで前線で魔法使いやっておりましたし、義体の差が大きいのかもしれません。私はまだ若干余裕がありますね」

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