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振り返り

それからは和やかな食事会となった。



部屋も開放されて立食の人たちも入れ代わり立ち代わり入ってくるし、疲れたという人もこの部屋に居座り始めるしでちょっと混沌となってきた。



けどおいしいものも食べれたし、この体の手がかりが手に入ったのは僥倖だった。


ただ、それをうまく扱えるかどうかは別なのが悲しいところ。



ラピーダさんたちのためにも、もしこの体がライルさんのだとするなら返してあげたいところだけど、ライルさんの魂がどこに行ったのか不明だし、そもそも俺の体もどうなってるか不明だから解決しようがない。



ラピーダさんたちには悪いけど、真実を言っても状況は変わらないどころか悪化しかねないので黙っていることにした。


少し心が痛いけど仕方ない。


言って解決するならいくらでも言いたいよ。


けど、逆にラピーダさんたちを苦しめる結果にしかならない感じがするし。



あとはアンソニーさんがラカハイに支店を開くのは嬉しいな。

しかも米とか日本酒とか醤油とか持ってきてくれそうだし。


食事会では確認できなかったけど味噌とかもあるのかもしれないし、懐かしい味を今後も楽しめる可能性が出てきたのは素直に嬉しい。



……なぜ帝国に日本固有?のものが多くあるのかは疑問だけど、俺がここに来たように過去に帝国に来た人がいたのかもしれない。



ユーリアのことがなければ帝国に行ってみたいってぐらいだ。



大司教は底の知れない人だけどこの世界の有力者だし、仲良くするに越したことはない。


幸い向こうはこっちを気に入ってくれてる感じだし、そのままでいきたいものだ。



ドニーさんこと領主様はクレイトさんが評価を爆上げしてるけど、どうなんだろう?


悪い人ではないと確信出来たのは良かったけど、有能なのかな? 俺はまだ保留。


ただ本当に良い人なんだな、とは思ったけど。



何故あんなに自信なさげなんだろう? 成果とか立場とか考えたらあそこまで卑下しなくていいのに、とは思ったがこれ俺自身がよく言われてることじゃないか。自分では分からないってことなんだろうな。



ユーリアはメイドさんがわざわざ持ってきてくれたスイーツを食べている。


ほんとどこに入ってるんだっていうぐらい食べたのに、甘いものは別腹とはよく言ったものだ。



今日はライルさん関連以外ほぼずっと笑顔だったな、本当にこれだけでも来てよかったと思う。


スイーツをもらったときに屋敷で待ってる皆にも食べさせてあげたいからこれ持って帰ってもいい?

とメイドさんに訪ね、メイドさんはお土産用に別に作ってるから食べてくださいと返してくれたのは、ほんと嬉しかった。



俺らだけ良い思いしてるのも引け目があったのは確かだし。そのへんはドニーさんが先に気を利かせて用意してくれる予定だったらしい。



クレイトさんはそのドニーさんと談笑している。


これも珍しい。というか今まで見たことなかった。



クレイトさんが別の人とこのようなやり取りしてるところを見ること自体初めてのような気がするし、だいぶと人間だった頃のことを思い出せてるのかも知れない。


それもいい感じ。



アンデッドだって元は人間なんだし、今は人間として振る舞ってるんだし、楽しんでくれたほうがいいからね。



義務や恩義だけで動くのもたいへんだろうし。そう思えばエテルナ・ヌイにいる霊体たちにも何かしら報いたいとは思うけど、霊体が喜ぶことってなんなんだろうか?


彼らは昇天を約束してくれただけで満足という立場みたいだけど、何らかの形で報いれられたら良いなとは思う。



こうしてみると、最初は服のこととか面倒だなと思ってた領主様からのお呼ばれだったけど、来て本当に良かった。



美味しいものも食べれたし、最近の人間関係の立ち位置?とかも見れたし、クレイトさんの癒やしにもなったようだし、なによりユーリアの笑顔が一番嬉しい。



あとはライルさん関連をなんとかしたいけど、俺のここでの存在自体がかかってるから慎重にいかないと。



元の世界の家族たちには悪いけど、こっちのユーリアのことが解決、はしないか、落ち着くまでは帰れても帰りたくない、というのが今の本心だし。



まあ帰れないんですけどね。


なんかそんないろいろとふりかえれる良いきっかけだったと思う。



和やかなまま食事会は終わり、屋敷へ帰った。


山のようなお土産をもって。



クレイトさんの魔法フローティングディスクに載せなくてはいけないほどの量の料理を頂いた。


大半は立食での残り物らしいがスイーツとかお土産のために作ってくれたものも混じっている。



食べ残しとはいえ、誰も手を付けていないし、持ち帰らないとそのまま残飯になるしで、もらったのだ。

こっちが孤児院やってるのも知ってるからね。



事前に念話でジャービスさんに伝えてあるので、ちょっと遅くなったけどお腹をすかせて皆が待っていた。



持ち帰った料理を見たときの子どもたちの目の輝きといったら……。


普段から美味しいものをクレイトさんとビルデアさんのおかげで食べられてるとはいえ、これらはレベルが違うというか、素材からして別物だからね。


それにスイーツなんてさすがに普段は出せてないし。



保存も出来ないので皆で大いに食べた。


子どもたちはもちろんスタッフの人たちも一緒に食べてもらった。



そういえばロメイさんのお腹も大きくなってきた。


そろそろなのかもしれない。



アレックスさんもなんとはなしに心配そうだ。



シムーンさんの、というかカムシンさんの伝手で良い産婆さんは紹介してもらってるから、準備は済んでいるんだけどね。



今アレックスさんたちは屋敷に住んでるから用意は万全のはず。けど俺の元の世界でも出産は危険なものだからなぁ。


祈るしかないのがつらいところ。



栄養が不足していただけだったようで、小さかったルクスもここしばらくでどんどん大きくなってる感じだし、自分より小さい子供が出来るのは精神的にも大きいとは思う。



ロメイさんは初産なのにすでにその子には兄弟姉妹たちがいるという状況だ。

それが良いのか悪いのかは俺には分からない。けどロメイさんはそれがいいという感じだった。



俺だけの判断ではもちろんないけど、大きな責任を背負ってしまったな、と改めて思う。



元の世界では体が弱いことをいいことに気楽に暮らしてたからなぁ。


あっちではいつ死んでもいいやって感じだったし。



死なずにこっちに来ちゃったけど。あ、もちろん俺の記憶にはトラックにひかれたとか病死したという記憶はないからな。


単に寝てただけだった覚えがある。



まあ寝てるうちに死んだってこともありうるかもしれないが、そんな感じはしないな。


けど俺の魂はここにあるし、元の世界の俺はどうなってるんだろう?



魂がないから寝たきり、とかだったら家族に迷惑かけていやだなぁ。


……いかんいかん、また考えても仕方ないことを。どうにかできるならどうにかしてるっつーの。



切り替えていこう。


今は皆の幸せを願い、そのための動きをしていくだけだ。


今の俺に出来ること……ユーリアを物理的に守るぐらいしかできそうにないけど。それも実力不足な気がするし、リヒューサとの模擬戦っての、本気でやってみてもいいかもな。リヒューサはたぶんクレイトさんが言ったら付き合ってくれるだろうし。


今の俺の持ち味は盾持ちの魔法使いってところだし、後ろでユーリアを守りながら魔法で戦うってのもありかもな。



もちろんユーリアには切り込み隊長ではなく砲台になってもらわないといけないけど。



となると今使える攻撃魔法だけじゃ足りなさそうだ。



アルティナさんが使ってた壁系の魔法もあった方がいいかもしれないし、もっと威力のある魔法とか覚えれたら覚えたほうがいいんだろうな。



クレイトさんが使っていたやつとか覚えられるんだろうか? 今度相談してみるか。



皆の笑顔を見れたからこうやって冷静に考えれるんだろうな。本当に領主様には感謝しないとな。

エテルナ・ヌイも認めてくれたし。

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