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開拓村として

ここにいなかった領主様が戻ってきた。どこに行ってたんだろう?



「いやぁ、ちょっと見て回らせてもらいましたが、素晴らしいですな。良い街だったんでしょうな。本当にもうどこにもアンデッドはいないようですね」



「ええ、まあ」



実際にはゴーストがまだそこらにいるんだけどね。うまく隠れてくれているようだ。



「この土地は我が家の領土として組み込まれておりましてな。だからここの権限は私が持っていることになります」


「はあ」



クレイトさんがいらっとした気がする。これ、もしかしてクレイトさんにたかる気なのか?


「しかしながらアンデッドが多くいたため有効活用できていなかった。それを個人の力で解決してさらに我が町の墓地問題まで解決してくれた」



「はい」


あれ? 風向き変わった?


「そこで、です。完全に事後となるんですが、ここを開拓村として登録してはくれないでしょうか? いえ、税金を納めろというわけではないし、権限を奪おうというものでもないのです。ただ二重権力となってしまうと国からの視察がきたときに弁明が難しくてですね。ですから形だけで良いから私の許可を得てこうなった、としてほしいのですが」



「ああ、そういうことならいいですよ。なんなら税金を収めてもいいですが」



「あ、いや、税金については聖王教の方と話がついていますので。実際のところ体面の問題なだけでして。法上は私がクレイト殿の上に立つことになるが、私からは何も言いませんよ。むしろ私を利用してくれてもいい。形だけでも優秀な部下を迎えられるのは嬉しいことです」



「そういうことでしたら問題ないですね。こちらも出来ることであればお手伝いさせていただきますよ」



「はい、よろしくお願いします。今度手続きさせてもらいます。開拓村の村長ということで」


良かった。領主さんも悪い人じゃなさそうだ。



「こちらにも兵を置きましょうか?」


「いえ、兵士さんは負担になるでしょうからいいですよ。こちらはもっとゴーレムを増やすつもりですので、戦力としては問題なくなると思います。その他で人間がやったほうがいいということはこちらの墓守にお任せください」



「そうですか。それは確かにこちらも助かります。開拓村の意向がそれなら」


「ということは聖王教会の派出所もいらないですか?」


大司教も話に入ってきた。



「そうですね、宗教的なことは転移門前まででやっていただければいらないかと。埋葬時のあれこれなんかは御遺体を運び込むときについてきてくださればいいでしょうし、わざわざこんな辺鄙なところで住む必要はないですよ」



そんなこと言ってるけど、外部の人がここにいたら困ることも多いってだけなんだけどね。


でも実際にここで住むとなれば物資の運び込みが必要になるからなぁ。



「それもそうですな。では申し訳ないが雑事は墓守殿にお任せすることにします。他細かいことはまたお話しましょう、今ここでなくてもよい」



「そうですな。今度大司教殿様もクレイト殿も我が屋敷に招待させてください。いろいろとお話したいですしな」



「ええ、ご領主様のご厚意とあれば。できればラカハイに滞在中に呼んでいただけると助かります。ずっとラカハイにいるわけではないので」



「ええ、そうでしょうね、大司教様は広い教区をお持ちですしね。近い内に伝令を送らせてもらいます。クレイト殿もよろしいですか?」



「ええ、私はだいたいラカハイにいるでしょうから、いつでも」


「ユーリア殿やリュウト殿、それに人になれるのでしたらリヒューサ殿もお呼びした方が良いですか?」



「リヒューサに関しては私からはなんとも……、今本人にお聞きしてはいかがでしょう? ユーリアは私がお付きという形になりますがね。リュウトは……」



ここでちらっと俺の方を見るクレイトさん。


『どうだい? いいかな?』


ええ、わざわざ俺に確認しなくてもいいぐらいですよ。



「よいようです。そうそう、リュウトも呼ぶのでしたら南方の帝国料理なんかを用意していただければ嬉しいですね」



「ほう、リュウト殿は帝国出身なのですか?」


「いえ、そういうわけでもないのですが、帝国料理で使われるコメという食べ物が好みのようでね」



「コメ、ですか。聞いたことがある気がします。私も興味があります、調べさせて準備させましょう。リヒューサ様に話しかけるのは恐れ多いので今回はなしということで」



「ありがとうございます。わかりました」


「あ、ありがとうございます」



俺も一応聞こえる位置にいるし頭を下げておいた。美味しいコメが食べれたらいいな。



「では戻りましょうか。あまり遅いと残してきた護衛が心配するでしょう」


「そうですな。クレイト殿頼みましたぞ」



「ええ、墓守たちは優秀ですから」


護衛を先頭にして次々に転移門をくぐって戻っていく。クレイトさんは二人の偉い人と一緒にくぐっていった。リヒューサがどうすればいいのか戸惑ってる。念話で指示も来てないようだ。



「リヒューサも戻りますか?」


「戻ったほうがいいかの?」



「うーん、リヒューサなら戻らなくてもいいと思いますが」


「そうか、ではそうする。もし探していたなら残ったと伝えてくれ」



「はい、わかりました。ユーリア、戻ろうか」


ユーリアはずっと俺についたまんまだった。

特にやることなかったし、クレイトさんは偉い人たちとの話で忙しかったしな。



そういえばグーファスも見かけなかったな。


彼がいたなら連れて戻っても良かったんだが。


アルティナさんはユーリアの影武者も出来るように出てこないように言われてたけどさ。



リヒューサをおいて、ユーリアと二人で転移門をくぐって町へ戻った。



「おや、リヒューサ様は?」


最後に出てきたのが俺たちだけだったのを見て、大司教が訪ねてくる。


「なんかエテルナ・ヌイに残ると言ってました。もし探していたならそう伝えるよう言われています」


「そうですか。分かりました。ありがとう」



この大司教もすごい偉いさんで宗教関係者なのに偉ぶったところがまるでない、いい人だよな。


なんかこういう世界では宗教関係者って悪く言われることが多い気がするから偏見持っちゃってたよ。



「さて、では本日はこれまでとして、現在ラカハイ教会には御遺体はないので墓場の仕事はありません。が、コアの件もありますし、またそのときに連絡いたします。当分はラカハイにおりますので」



「転移門は我が配下が守らせてもらいます。皆様にはまた使いの者を送りますので、そのときに。ああ、クレイト殿には後日開拓村関連の書類にサインをお願いしたく。ではまた」



護衛たちとともに大司教と領主が転移門のある建物から出ていった。


残ったのは俺たちと、ここの護衛として残された人たちだ。



「では転移門は閉めさせてもらいますね」


クレイトさんがなにかつぶやき、大きく手を振ると、音もなく転移門が消えた。


護衛たちがざわめく。


俺とかはもうクレイトさんが何をやっても驚かないだろうけど、護衛の人たちはそうもいかないよね。



三人で屋敷に戻る。アレックスさんが門番してくれていたようだ。


「おかえりなさいませ」



「門番ご苦労さま。こんな風になってしまったんだけど、門番として、屋敷は大丈夫だと思うかね?」


クレイトさんがアレックスさんに質問している。状況が変わりまくったからなぁ。


「はい、完全武装の兵士が複数こられたらこちらも苦戦しますが、追い払う程度は出来ると思いますし、それ以上の規模の敵が町のここまでくるというのはあり得ないというか、それはもうラカハイ自体が滅ぶ事態ですので、今の状況でも問題ないかと思います。

転移門から敵が来た時は以前おっしゃっていたゴーレムに任せることになりますね。さすがにそこまで見張りできるほどの人員はいませんから」



「なるほどね。参考になったよ、ありがとう」


「いえ、門番がなくなったら私のやることが激減してしまいますしね」


アレックスさんは引き続き門番をするようだ。

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