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転移門つながる

屋敷の扉を大きく開けて、クレイトさんが先導してリヒューサが竜のまま屋敷へ入ってきた。


なんかできるだけ人間の姿で耳目を集めたくない感じだったし、そのためかな。俺たちも部屋から出て竜を出迎える。



「うわー」「おー」「すげー」



子どもたちが口々に驚きの言葉を口にする。


そりゃこの子たちは町から出たこともなく、なのでもちろんモンスターですら見たことがないのにいきなり竜だしな。


それにリヒューサは伝説にも出てくるらしい颶風竜だからか品格というか威厳に満ちた見た目もしてるし。



『さて、時間がないから手早く済まそうか』


リヒューサが竜のままでは二階に上がれないので人間の姿に変身する。



子どもたちからまた声が上がる。

そりゃ変身なんか見たらそうなるよな。

しかも変身後は自分たちに近い年頃の可愛い女の子になったんだし。


クレイトさんと一緒にリヒューサが二階に上がっていく。上がっていってすぐに降りてきた。



『もうすでに転移門はあるからね。リヒューサがここに来た、という事実があればここに転移門があっても不思議ではない、だよね?』



ええ、そうです。転移門はリヒューサが開いたってことにしておいた方がいいみたいですしね。


そんな感じで颶風竜の屋敷への訪問は終わった。


屋敷から出るとき、門の前に町の警備兵がたくさんきてたけど、ファーガソンさんやアレックスさんが抑えてくれていたみたいだ。


リヒューサの変身は屋敷の中で解除して竜の姿でユーリアの先導で屋敷から出る。俺とクレイトさんはリヒューサの後についていく。



「先に教会に行っておるぞ」


皆に聞こえるようにリヒューサが言って、教会の方へ飛んでいった。


多くの警備兵がそれを追って教会へ移動していった。何人かが残って、俺らの警護という名目でついてくるようだ。



屋敷のことはスタッフにまかせて、俺らは教会へと歩いていった。



教会の前に看板が立っていた。


その隣に司祭服を来た人が立って、何か話している。


どうやら看板にかかれていることを読み上げているようだ。



「颶風竜様は我らと我らが町のために力を使ってくださるために訪れたので、何も心配することはありません。むしろさらなる発展を期待できるでしょう」


町人らしい人たちがふんふんと聞いている。これが言っていた広報か。



まあ嘘は言ってないな。


教会のためというより言い方悪いけど一番利用しやすいのがたまたま教会だった、ってだけだけど。



俺たちが来たことで教会からいつもの助祭さんが出てきて、迎え入れてくれた。


教会の中に入ると、すでに中庭にリヒューサと大司教が居た。



他に昨日もいた何人か偉いっぽい人や、昨日はいなかった完全武装の鎧姿も見える。



あ、領主様もすでにいた。この人町で一番偉い人のはずなのに目立たないよな。


「リヒューサ様、町の中をそのお姿で歩かれるのはいささか難儀でありますので、人の姿になっていただけるでしょうか?」



大司教がリヒューサに頼む、言い切らないうちにリヒューサは即座に人の姿になった。


「ありがとうございます。ユーリア様方も来られたようなので早速転移門の設置していただきたい場所へ移動お願いいただけますか」



鎧姿がまず動き、次に大司教が先導する形になった。

俺たちはリヒューサの後ろ、領主様の前を歩くことになった。

領主様はリヒューサを怖がって近づかないようにしてるように見えなくもないけど。



町中の行列は目立った。


通りすがりの町人たちや通りがかった伝令とかが見てくる。


けどさすがにこれが竜の行進だと気づいた人はいないようだ。

大司教や領主様に気づいたっぽい人たちはいたけど。



「こちらの建物となります」


教会からそう遠くない、倉庫みたいな作りの建物だった。



たぶん実際に倉庫なのだろう。両開きの大きな扉をくぐると建物の中はがらんどうだった。



「この建物の立地自体が攻められにくい位置にありますし、万一転移門から侵入者が来ても町に逃がすことなくここで止めれると思います。


当分は教会の土地ですので教会が警護を出しますが、領主殿に買っていただいた後は町の警護団に任せることになります」



「は、はい、その程度で墓地問題に片がつくならお安いですし。予算の都合上少々遅くなるかもですがよろしいでしょうか? 大司教様」



「ええ、もちろんですよ。これは領主様の得にもなりますが、元々は我らが持ち込んだ案件ですし」


「警護については私がゴーレムを創造しましょうか?」


クレイトさんが提案する。



「ええ、ゴーレムも居てくれたらだいぶいいですね。しかしこういうのは人間も居たほうが融通が効くというものですのでゴーレムだけにはしないほうがいいでしょう」



「もう設置してよいか?」


リヒューサが大司教に気軽に話しかける。


「はい、もちろんでございます」



「ゴーレムが通れる程度の大きさにしておくぞ」


リヒューサが人間の姿のまま何かを唱えて手を振ると、その先に小屋にあるものより幾分大きめの光り輝く扉が現れた。


「おお、これが転移門。私も見るのは初めてです」



「コマンドワードはあとでここにいる偉いやつに教える。あとは各自好きなものに教えるといい。ただしこの門のマスターはわたしであるので、わたしの判断で閉鎖、消去する場合もあることは覚えておいてほしい」



「はい、もちろんでございます。我々はリヒューサ様のお力をお借りするだけの立場であることは重々承知しております。ところでこの門の維持には何か必要で?」



「いや、維持には何もいらん。わたしが維持するからな。しかし門を一時的に閉鎖してまた起動するときにコマンドワードを唱える者からそれなりの魔力を頂戴することになる。故にコマンドワードを知るものはそれなりに魔力のあるものとせよ。でなければ起動できないばかりか気絶するぞ」



「なるほど、厳選することにします」



「では実際に通ってみるとしようか。ついてまいれ」


そう言い残してリヒューサは悠々と門をくぐっていった。


リヒューサの姿が一瞬で消える。


護衛の方から「おお」といった驚きの声が聞こえる。


転移門の存在自体今まで知らなかった人にとっては驚きだよな。



しかし大司教は驚きもせずスッと門をくぐった。


大司教だけあるせいか肝の座ったおじいさんだ。慌てて護衛の鎧姿もついていって消える。



次は領主様だけど、意外と驚いてはいなかった。しゃんとして驚いている部下を叱咤していた。


動じることなく領主様は門をくぐった。その後で慌てた感じで領主様の護衛も門をくぐって消えた。



この建物の中で残っているのは俺たちと領主様に残っているように言われていた護衛たちだけだ。


「さて、では護衛の皆さん、しばらくしたら戻ってきますので、こちらでしばしお待ちを。転移門には近づかないようお願いいたします」



そう言ってクレイトさんが門をくぐったので俺とユーリアも後に続いた。



門をくぐると大きめの部屋、というかホールっぽいところへに出た。

先に入った人たちはもう外に出たようでいない。



明かりが入ってきている出口から出ると、目の前はいつものエテルナ・ヌイの広場だった。


広場に接した建物だったか。広場には転移門をくぐった人たちとドゥーアさんたちがいた。

ドゥーアさんが案内しているようだ。



「合流しよう」


早足でドゥーアさんと大司教が話しているところへ合流する。



「おお、クレイト殿、ここは滅んだ町だったと聞いておりましたが、すでにちゃんと墓場になっておりますな」


「ええ、ここに住む墓守たちが頑張ってくれましてね。街の広場を墓にさせてもらいました。今後は崩れかけた建物を撤去していって土地を広げる予定です」



「それはかなりの人月がかかりそうですな」


「いえ、ゴーレムたちがいるのでそれほどではないかと思います」



大司教がその話に食いついてきた。


「ほう、ここのゴーレムたちは土木作業も出来るのですか。すごいですな」



「ええ、もっとコアがあれば数を増やせるのですけどね」


「コア、ですか。高品質は滅多に来ませんが、並や低品質ならば寄進としてよく来るので、良ければ我が教会がお譲りしても構いませんぞ」



「それは素晴らしい。高品質だとありがたいのですが並や低品質でも構いませんのでぜひとも譲って欲しいですね」



「クレイト殿とこの墓地のためですから喜んで差し上げたい、ところですが、コアも寄進されたものですので、ただでというわけにはいきませんが。申し訳ない」



「いえ、もちろん対価は支払わせてもらいますよ。お金で良いのでしたら」



「それはむしろ願ったりですね。コアが寄進されることは多いのですがなかなか利用方法もありませんでしたし、換金もしにくい素材ですので。今度使いの者に持って行かせますよ」



なんか商談が成立してるようだ。



『ここのゴーレムは普通のよりずっと自立性が高いからね。言い訳として使おうかと思ったけど、これでコアがたくさん手に入れば義体も増やせるし、実際にコアがあればゴーストが入ったゴーレム並に自立性が高いゴーレムも僕なら実際に作れるからね』

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