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聖王教会との会合

次の日、朝からエテルナ・ヌイへ行っていつものルーチンをこなす。



リヒューサには今までと変わった様子は見えない。


というか様子は見えないけど体格が良くなってる気がする。


え? 竜ってこんなに早く成長するの?


前は大型犬程度だったけど、今は大きな虎とかライオンぐらいはないか?


クレイトさんの魔力が影響してるのかな?



まあ特に何もなく小屋に戻って、屋敷へ行く。


まだお昼にもなってない時間だ。こんなに早くに行くのは珍しい。


なので昼食は屋敷で用意してもらえそうだ。



屋敷に来たクレイトさんはさっそくジャービスさんを捕まえて何か話をしていた。


そのあとシムーンさん以外の全員と話をしていた気がする。


んー? 屋敷も巻き込んでの話なのかな?



「ちょっと出かけるよ」


「はい、どちらに行かれるんですか?」



「聖王教の教会に用事があってね。リュウトもユーリアもついてきてくれるかな?」


「はい、じゃあユーリア呼んできますね」


ユーリアは確か今庭の畑を手伝ってるはずだ。外に出る。



「なんだあれ?」


同じく畑で作業をしていたトーマが空を指差す。なんかドラゴンみたいなのが町に降りてきてるな。


……ってあれリヒューサじゃないのか?!


いいの? 町に来て?



「ドラゴンっぽかったね」


「なんだろね?」


畑で作業していた子たちがワイワイし始める。

そんな中手招きでユーリアを呼び寄せる。



「ねぇねぇリュウト、さっきのリヒューサだよね?」


「そんなふうに見えたな。クレイトさんが教会に行くから一緒に行こうだって。さっきのが降りてきた辺りって教会があったし、クレイトさんも何か知ってそうだ」



「わかった。ちょっと私、クレイトさんとお出かけしてくるねー」


わかった、からあとは畑の子どもたちに向けた言葉だ。



「はーい、いってらっしゃーい」



ちょうどクレイトさんが出てきたので合流する。


「今リヒューサらしいのが降りてきたのが見えたんですが……」


「おう、早いね」


あ、やっぱり知ってたのか。何をするつもりなんだろう?



『まあ直に分かるさ』


三人で教会へ向かう。



教会についた。なんかごたごたしてる感じがする。


門番も一人になってるし、中をしきりに気にしている。


「あーきみ」


「なんでしょう?」



「ここで一番偉い方と会えないかな?」


「申し訳ありません。現在立て込んでおりまして……」



あーやっぱり断られるかーと思ったら奥から助祭さんが来て、俺達を入れてくれた。


そして教会の中庭に案内してくれた。



中にはたくさんの僧侶らしい人がいて、その向こうに竜が座っていた。


どうも会話しているように見える。


竜がこちらに気づいたようで、すっと四足で立ち上がった。



「クレイト様にリュウト殿、ユーリア様。こちらです」


え、俺の名前言ってるし、ユーリアも様づけだった。


集まっていた僧侶たちが竜、リヒューサまでの道を空けてくれた。その顔は驚きというか恐れというか思いっきり動揺してる感じだ。



クレイトさんが竜に向かっていく。俺たちもついていく。



「この方々が私が先程申しました方々です」


リヒューサが僧侶の中で一番リヒューサの近くにいた、すごく立派な服を着たおじいさんに話しかけた。


おじいさんがこちらを見て、頭を下げた。



「お噂は聞いておりました。ユーリア様とクレイト様、そしてリュウト殿でしたか。私は聖王教大司教シャロム。颶風竜リヒューサ様からのご提案、聞かせていただきました。私としては願ったりですが、さすがに私の独断で決めて良いことではなさそうなのでこの地の領主様もお呼びしております」



え? 大司教?


すごい偉いさんじゃないの?


それに領主も呼んだって……。


領主を呼びつけれる人ってことか。



「今お部屋を用意させておりますが、颶風竜リヒューサ様が入れる場所はここしかなく……」


大司教の話を聞いたリヒューサが人間の姿に変身する。



「これでよいか?」


「おお! おお! 六大竜は人の姿になれるとは言われておりましたが、この目で見ることが出来るとは……。人が飲むお茶でよろしいですか?」


「かまわん」



「用意が出来たようです。皆様こちらへ」


とリヒューサや俺達も大司教自らが部屋へ案内してくれる。


しかし竜ってこの教会でそんなに重要なんだな。



大司教って確かその宗教でニ番目か三番目ぐらいに偉い人じゃなかったっけ? そんな人が丁重に扱うって。

なんかついでに俺たちも丁重に扱ってくれてるけど、何の話をしたんだろう?


招かれた部屋は意外と質素な感じの調度品で整えられた部屋だった。



リヒューサは一番の上座で次いでユーリア、クレイトさん、大司教、俺といった感じかな。


皆に行き渡ったティーカップもそれほど豪華なものではないようだ。


お茶菓子はカムシンさんのところで出たマロングラッセかな。



「クレイト様は無理に飲まれなくても大丈夫ですよ。礼儀として用意させていただいただけですので」


「そうですか、そうさせていただきます」


クレイトさんのこと知ってるのか、大司教。知り合いって感じでもないし、どういうことだろう?



『たぶん人に調べさせているんだろう。僕を知ってる人間なら人前で飲み食いをしないということぐらいは知っているだろうし。けどもしかするとこの人、僕の正体を見抜いているかもしれない』


ええ!? それって大丈夫なんですか?


『リヒューサを敬ってるのも本当みたいだし、今のところは大丈夫なんじゃないかな。ことを荒立てるつもりはないようだし』



「大司教様お待たせして申し訳ない。私に火急の相談とはどうされましたかな?」


入ってきたおじさんが自然と大司教の横、下座に座った。



「ここにおられる皆様が面白い話を持ち込んでくれましてね。エテルナ・ヌイの件はご存知ですか?」


「ええ、もちろんです。最近平定した者がいて、周囲の状況が変わってきているとの報告を受けています。もしかするとこの者たちが?」



「そうです。しかもこちらのリヒューサ様は六大竜の一つ颶風竜であられる」


「え? この少女が? いえ、大司教様を疑うわけではありませんが……」



「見たほうがすっきりするというなら見せるぞ」


リヒューサが立ち上がって部屋を出ていく。


「お手間を取らせます。リヒューサ様」


一緒に大司教も出ていく。領主らしいおじさんも慌てて中庭に着いていく。俺たちは部屋に残された。



「俺はどうすればいいんでしょうか?」


「何もしなくていいよ。いや、そうだね、ユーリアの守護者というかそんな雰囲気で頼むよ」


どんな雰囲気なんだ。まあ守護者とかは分からないけど、ユーリアを守るように動けばいいってことですね。



「ユーリアは?」


「堂々と振る舞ってるだけでいいよ。細かいことはその都度念話でいうからね」


「そっかー、分かりました」



そういってユーリアはお茶を飲み、マロングラッセを楽しんでいる。


緊張はしてないようだ。すごいな。



俺とか相手が大司教とか領主って分かっただけで緊張で震えてるのに。


とりあえずお茶を飲んで緊張で乾いた喉を潤す。


これすごくいいお茶だ。俺みたいな素人でもわかるレベルだ。



三人が戻ってきた。


領主らしいおじさんはひたすらぺこぺこ謝っていた。


えらく腰の低い領主様だな。



まあ相手が悪いか。

大司教と一領主じゃ大司教の方が上の場合が多いだろうし、その大司教が敬ってる竜もいるし。


みんなが着席してから領主のおじさんが切り出した。



「ところで私に相談したいこととは?」


それには大司教が答えた。



「ここラカハイとエテルナ・ヌイを転移門でつながせていただきたいのです」


「え? なんですって? 転移門? そんな事が可能なのですか?」



「ええ、颶風竜リヒューサ様が転移門を開いてくれるそうです。ここにいるユーリア様たちがエテルナ・ヌイで墓場をやっていることはご存知ですよね? そして今ラカハイでは墓地となる土地が不足しています。ですからこれはラカハイのためにもなることかと」



「おお、確かに墓場の問題は深刻です。それにエテルナ・ヌイの墓場の件は報告を受けています。近々調査しなければと思っておったところです。それが同時に解決する、と」



「ええ、ここにはエテルナ・ヌイを開放したものがおりますからね。彼らはいろいろと我らにもたらしてくれるようです。颶風竜様を我らが聖王教会に紹介してくれたのも、ここにおられるクレイト様のおかげのようですしな」



「クレイト……? 最近聞いた名のような……。おお、そうだ、我が町で孤児院を開いたとの報告があったものか。エテルナ・ヌイの開放者と同一人物だったのだな」



領主のおじさんがクレイトさんの方へ向き直る。

クレイトさんは座ったまま会釈。



「今は馬車でご遺体をエテルナ・ヌイへ運んでおります。今までは希望者のみ受け付けておりましたから可能でしたが、ラカハイで亡くなった方全員となるとさすがに埋葬のたびに馬車を走らせるわけにも行かず。颶風竜様に相談したのです」



「今の私の魔力なら転移門ぐらい開けるからな」


幼女の姿をしたリヒューサが胸を張って言う。



「なるほど。確かに我がラカハイにも利のある話。しかし転移門か……。護衛兵が必要になりますな」


クレイトさんが片手を軽く上げた。



「発言してもよろしいですか?」


「ええ、もちろんですとも」


それに答えたのは大司教。



「転移門が危険であるという認識はこちらにもあります。ですがエテルナ・ヌイの転移門に関しては私の兵力に任せていただいてもいいです」


「なんと?! その、クレイト……殿は兵力もお持ちなのか?」


「兵力と言ってもゴーレムですけどね」



「ゴーレム……。ウッドゴーレム程度では護衛にならんでしょう?」


「いえ、当方のゴーレムはストーンゴーレムが主で少しばかりアイアンゴーレムもおります」


「うむむむ?! ストーンゴーレムが量産できているのか。宮廷魔術師並じゃないか」



「よろしければ確認できる者を派遣していただければこちらの戦力もお見せしますよ。エテルナ・ヌイを守るにはそれぐらい必要でしたから」


「あ、ああ、そうだな。元々異種族に対する防護の町であったと聞いておる。そのゴーレムがアンデッドの代わりに防衛してくれていたのだな」


「はい、そのとおりでございます。もっともリヒューサ様がエテルナ・ヌイに来ていただけたので、異種族からの防衛もいらなくなってきそうですが」



「それはどういうことかね?」


「はい、僭越ながらエテルナ・ヌイはリヒューサ様を通じてリザードマンと不可侵の取り決めをしております。リザードマンからはたいへんこちら向きに接していただいております」


「リザードマンは我が眷属みたいなものじゃからな」



リヒューサが補足を入れる。


「そうなのですか?! リヒューサ様、リザードマンが竜の眷属というのは真ですか?」


驚いて確認をしているのは大司教。



「おう、そうじゃよ。その証拠にリザードマンから竜になるものもおるしな」


あえてそれが自分であるとは言わないところがやり手だ。そういえばリヒューサは竜としてはまだ子供もいいところだけど、中身は二百年を生きたリザードマンだったな。生まれ直しとかいう秘術を使ってだけど。



「これは重大なことをお聞きしました。今我ら人間はリザードマンをモンスター、すなわち敵と認識しております。この認識は改めるべきですな」



「リザードマン側はなんとも思っておらんからな。攻撃してくるなら敵、仲良くしてくるなら味方、というだけだ。人間側が態度を改めるならリザードマンは良き隣人となるであろう」



「私の力が及ぶ限り善処させていただきます」

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