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二対二

広場でケリスさんとアルティナさんの二人と相対する。



立ち位置はケリスさんが前でアルティナさんが明らかに後ろだ。

しかしアルティナさんは木剣を持っている。

杖を用意できなかっただけかもしれないけど。



対する俺達はどっちも前だ。

どちらかといえば俺が魔法使い的な位置だったが最近盾を持ち始めているから前にいないと意味がない。


ユーリアも後ろで砲台するならうって出るって感じなので。

ちなみに今日のユーリアは木剣を両手持ちだ。



模擬戦闘が開始された。


まずはアルティナさんを狙うべきなんだろうけど、どうせケリスさんに止められるだろうから最初からケリスさんに狙いを定めた。



ユーリアも同じ考えのようだ。



二人でケリスさんにかかっていくと急にケリスさんが三人いるように見えたり一人に見えたりし始めた。

ちらっと見たらアルティナさんが魔法を使っているようだったから魔法の効果なんだろうけど、この魔法は何だ?



木剣を持っているとはいえやっぱり魔法主体か、アルティナさん。


攻撃魔法が怖いのでマジックシールドを俺とユーリアにかける。



その間にユーリアは歩を進め、中央に見えるケリスさんへ突っかかった。


が、三人のケリスさんはユーリアから見て右側に集約し、ユーリアに木剣を振り下ろす。



慌てて俺が盾でユーリアをガードする。


また三人に分身しながらケリスさんが後ろに跳ぶ。



俺もユーリアも察してケリスさんから慌てて離れるように跳んだ。


やっぱりアルティナさんが俺達が絡んでいるところにファイアボールを打ち込んできた。



もちろん事前に飛んだので当たらない。

しかしこれアルティナさんをなんとかしないとケリスさんと戦うことすらできなさそうだな。



体勢を立て直したらすぐに魔法を唱え始める。


それを察したのかユーリアが俺をガードする位置に移動してくれる。アルティナさんも魔法をすでに唱え始めている。



しかし俺のほうが完成が早かった。



「ライトニング!」


アルティナさんへライトニングを放つ。ケリスさんは……ガードしに行かない?!



ユーリアにシールドバッシュをしかけてきた。ライトニングが届く前にアルティナさんの呪文が完成した。



「カウンタースペル」



ライトニングが消えた?!


俺より先に唱えていたのに打ち消されたということは完全に読まれていたということか……。



ユーリアはなんとか躱したものの体勢を崩してしまっている。


ケリスさんとアルティナさんの双方から追い打ちをかけられては終わってしまう。


盾をかざして強引に前に出てユーリアをかばう。



なんとかケリスさんの木剣は受け止められた。アルティナさんの呪文攻撃は空振りに終わったようだ。


何も起こらなかった。

たぶん抵抗に成功すると何も起こらないタイプの魔法だったのだろう。


マジックシールドをかけておいてよかった。



ケリスさんがバックステップをしてから俺達に向けて剣の衝撃波を放ってくる。


これはただの牽制だな。


軽々避けてなぜ下がったを考えてみる。



……んー、やっぱりアルティナさんを攻撃されるのを嫌ったとしか思えないな。


ということはアルティナさんを狙うのが正解か。

ユーリアに通じるかどうか分からないけど木剣をアルティナさんへ向けて走り出す。



当然ケリスさんは通せんぼしてくる。


ダメ元でシールドバッシュを仕掛ける。


案の定踏ん張られてしまったが、ケリスさんをその位置に固定することに成功した。



あとはユーリア次第だ。


気配で俺の後ろをついていきていたのは分かってる。


アルティナさんはケリスさんが邪魔で魔法が打てないはずだし。



ユーリアが俺の後ろから飛び出し、ケリスさんの横をくぐった。



俺の意図に気づいてくれていたようだ。


ユーリアがアルティナさんに突っ込んでいく。

支援しないと。



ケリスさんの反撃を警戒しながらライトニングを唱える。


ケリスさんがシールドバッシュで俺の詠唱を邪魔しようとする。


が、一瞬こっちの方が早かった。



ライトニングがケリスさんをかすめ、アルティナさんを狙って飛んでいく。



俺は詠唱していたのでシールドバッシュに対応できない。


食らってしまって体制を崩す。


しかしアルティナさんを落とせばこっちの勝ちになるはず。



だけども、アルティナさんの前に突如石の壁がせり上がってきてライトニングはその壁に防がれてしまった。


しかもユーリアの突進も止められている。


慌てて壁を回り込もうとするユーリア。



「ダメだその動きは!」


思わず叫んでしまったが意図が通じるわけもなく、ユーリアは壁を回り込んだところでファイアボールの攻撃を受けてしまった。



俺は態勢を崩したままでケリスさんに木剣を突きつけられている。



「まいった!」


戦闘終了を告げるために俺は大声で自らの負けを認める。



俺のまいったを聞いて木剣をさげてくれるケリスさん。


俺は慌ててポーションをアポーツで召喚しながらユーリアに駆け寄る。



ファイアーボールを受けて吹き飛んでしまったユーリアは、思った以上にケロリとしていた。



「たはは、やられちゃった」


「大丈夫なのか?!」



「あー、うん、手加減してくれたのか痛くないよ、どこも火傷もしてないみたいだし」


「そ、そっか。焦った……、とりあえず飲んどく?」



「うん、一応飲んどく。ありがとう」



思った以上に元気だったのでポーションを手渡す。



ケリスさんと壁の向こうからアルティナさんがこちらにやってきた。


「なかなか良い動きでした。が、少々詰めが甘かったですな」



「びっくりしたよー、唱えてたのがストーンウォールで良かった。ファイアウォールと迷ったんだよねー」


壁を作るのは織り込み済みだったのか。



ファイアウォールだったらライトニングで貫けたんだけどな。でもとっさに正解を選んだのはやっぱり経験の差かな。



「あの時、制限がなければマジックミサイルでしょうから私に対する対応としては問題ありません。ただ詠唱直後でも、出来れば詠唱中でも動けるようになったほうがよろしいでしょうね」



「アルティナさんすごいね。魔法がすごいのは当然として詠唱中でもちゃんと剣を構えて受けれるようにしてたもの。隙がなかったよ」



「アルティナを狙ったのはある意味で正解ですが、相手の力量が分かっていない場合、特に相手が魔法使いの場合は注意が必要です。むしろ私を狙うのが常道とも言えます」



「そうなんですか? 魔法使いから潰したほうが良いと思ったんですが」



「ええ、それは間違いありません。潰せるのでしたらね。今回はアルティナの力量が分かってなかったため、すぐにアルティナを落とせなかった。落とせないなら私、前衛を先に潰すほうが楽な場合もあります」


「その理由は?」


「それは敵の前衛を敵の魔法使いからの盾に使えるからですよ。魔法には味方を巻き込んでしまうものも多いですからね。立ち位置に気をつければ多くの後衛魔法使いからの直接攻撃は未然に防げます。特に今回のようにマジックミサイルが禁じ手でしたらなおのことね」



「なるほど、ファイアボールやライトニングはたしかに味方がいるところには打ち込みにくいですね。そういうときはマジックミサイルってことですね」



「そうです。実戦でしたら注意すべき点は分かりましたね?」


「敵前衛と戦っている時は敵後衛のマジックミサイルに注意ってことだねー」



ユーリアが答えた。やっぱり戦闘勘というかそのへんの飲み込みも早いな。


「正解です、ユーリア様。となると魔法使いが戦いの場でやるべきこともわかりますね?」



「私はあまり前に出ないほうがいい?」


「時と場合によりますから一概には言えませんが、そうですね。リュウトさんは盾持ちですからね。支援を受けている盾持ちがどれだけやっかいかはリュウトさんも味わったのではないでしょうか?」


「はい。何もされていなくてもプレッシャーがすごかったです」



「それにしてもお二人の連携はけっこうなものでしたね。何も連携のための魔法も使ってないのでしょう? お二人が戦術を叩き込めば結構な驚異だと思いますよ」



「まだまだ経験が足りてませんからね」


「これからですよー。頑張ってまいりましょー。それに覚えたい魔法があったら教えますよー」



「そうですね、ケリスさんが三重に見えたあれとか覚えていると良さそうですね」



「あーあれは難しいよ。ミラーイメージとブリンクの複合魔法だからね」



「そうですか。あれが使えたらけっこう良さそうだったので」


「あれを使えるようになるには両方の魔法を無詠唱で使えるレベルにならないと無理だからね。まあ特訓する気があるならどちらの魔法も教えるよ」



「はい、また今度教えてください」


アルティナさんのデビュー戦は俺達のボロ負けで終わった。けど得たものも大きいような気もする。



「私もファイアボール以外の攻撃魔法覚えないといけないなー。マジックミサイルは模擬戦闘では使えないしね」


ユーリアも反省というか今後の指針を決めたようだし。



実際今のユーリアは切り込み隊長だからな。そのユーリアを守りながら戦うのは難しい。


俺の勝利条件はいついかなる時もユーリアの生存なのだから。



でも周りが言って改めるより自分で分かったほうが絶対にいいからな。

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