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義体

ドゥーアさんとグーファスに出迎えられた。


義体を背負う役目はグーファスが代わってくれた。正直重かったので助かる。



いつもの建物に入る。ここも綺麗になったものだ。グーファスが手入れしてくれたようだ。


「魔力を消費しない体を持っているものがここにいるのは助かります。今までは清掃しようにも魔力を消費してまでって感じでしたからなぁ」


ドゥーアさんがしみじみという。



「ところでこれが例の義体ですか? 正直見た目は人間そのものですな。寝ているようにしか見えませんぞ?」



座らせている義体の周りをドゥーアさんが飛び回って観察する。


「そうだろ? これは人間と一緒に生活しても大丈夫なように設計したからね。オフのときも寝てるようにしか見えないようにしているのも設計通りさ」



「おーさすがでございます。正直我らの義体は人と混じって生活するのは難しいですからな」



「申し訳ないね。これを作った当時は僕にも技術がなかったし、コアの性能が足りなさすぎた。もう少し良いコアが手に入ったら君の素体のコアと交換してアップデートしたいぐらいだよ」



「いえいえ、もし新しいコアを手に入れたならぜひまた新しい義体を作ってやってほしいです。今回も義体に入るものの選考に一苦労しましたしな。それにやはり人間に対応できる個体が増えるのは助かります。先日も迷い人がエテルナ・ヌイに来ましてな。我らだと仕事や案内程度はこなせますが、料理を振る舞うとかは出来ませんからな」



「料理といえば、今回の義体は食事を取れるようにしたよ。味も感じるはずだ」


「おお、そのこころは?」



「人間にとって食事というのはたいへん重要だと分かったからね。コアの性能もまだ余っていたし、食べ物から魔力を抽出する機能をつけたよ」



「我らはもうこうなって長いですから忘れておりましたが、そうでしたな」


「僕も霊体だったら自分用の義体を作って入りたいぐらいにはしたつもりだよ」



「おまたせしました」


「おはよーございますー」



「おはようございます。私も呼ばれましたがよろしいのですか?」


ケリスさんがレミュエーラとリヒューサを連れて来た。レミュエーラはリヒューサの上に乗っている。もう仲良くなったのか。



「おお、待っていたぞ、ほれここへ」


ドゥーアさんが骨の手のひらで義体前の場所を指す。けどケリスさんももリヒューサも動かない。


あれ? と思っていたらそこにスペクターがいたことに気づいた。いつの間に……。



「彼が義体の中の人候補かね?」


「はい、正確には彼女ですが」



「おや、そうだったね、これは失礼した」


「ご要望の通り、義体が女性型になるので元女性で戦闘能力のあるものを選ばせていただきました」


「身内びいきしたわけじゃないのですが、私の元同僚ですのでやりやすくはあります」


ケリスさんが主張してきた。珍しい。



「ほう、ケリスさんの元同僚ということは冒険者だった方ですね」


「はい、名をアルティナといい、魔術師でした。魔術師と言っても近接戦闘も修めていましたけどね」



「それは心強い」


「それに彼女は元々竜に詳しかったので、今のこの状況でしたら適任かと思いまして」



なるほど。リヒューサが近くにいる現在、竜に詳しい人がしゃべれるようになるのは大きいな。いちいちドゥーアさんかケリスさんが翻訳せずにすむ。



「それじゃ適合のための術をかけるよ」


クレイトさんがスペクターに向けて手のひらを向ける。二言三言唱えただけで終わった。



「よろしい。さあ、入ってみせておくれ」


スペクターと義体が重なっていく様子が見えた。



しばらく動きはなかったが、ゆっくりとまぶたが開く。やがてユーリアに似た声で話し始めた。


「久々の感覚が、大量に流れ込んできて、とまどっております。しばらく、お待ち下さい」



「ああ、構わないよ。最初はドゥーア殿やケリス殿もそうだった」



やがてゆっくりと立ち上がり、体を動かしてみているようだ。



「お待たせしました。ようやく思い出せてきました。身体があるってこんなに素晴らしいことだったんですね」



アルティナさんがクレイトさんに頭を下げる。



「ありがとうございます。大事に使わせていただきます。ですからなんなりとお申し付けください」



「あー、うん。ちゃんと適合できたようだね、よかった。まあしばらくはその体に慣れるために自由にしてくれていいよ。体が慣れてきたらまた頼み事をするかもしれない」



「はい、そうさせていただきます。……こらケリス、何そこ笑ってるのよ!」



見てみたらケリスさん義体を震わせるほどに笑いをこらえていたようだった。


「だって、お前、すげぇ礼儀正しいじゃん。生前を知ってる身としてはおかしくて仕方ないのも当然だろ」



「もう! 何百年も霊体やってたらこうもなるわよ。ってこんなやり取りも久々ね……」


アルティナさんが涙を流していた。



「あれ、この義体本当に高性能なのね。涙まで出てきちゃった……」


「人間の機能はほぼ再現できるよ」



クレイトさんが空気を読まずに性能を自慢する。


流石にそのへんの感覚までは取り戻せてないかクレイトさん。


……もしかすると生前からそうだったのかもしれないけど。



「本当にありがとうございます、クレイト様。そしてユーリア様。皆様についていく決心をしたのは間違っていなかったと改めて思いますわ。昇天の日まで粉骨砕身の思いで従わせていただきます」



「ドゥーア殿にケリス殿、義体の先輩として彼女にいろいろと教えてやってくれ。グーファス、彼女は食事もできるからたまに作ってやってくれ。リヒューサ、彼女は竜に詳しかったらしいからいろいろと話しをしてやってくれ。レミュエーラはもうリヒューサと仲良くなったようだがアルティナとも仲良くな。よろしくアルティナ」



一斉に返事が帰ってくる。



「さあ、それじゃリヒューサ、行こうか。レミュエーラはすまないがしばらく離れていてくれないか。君が僕の魔力を浴び過ぎたらどうなるか分からないからね」



「それじゃ俺たちはいつもの点検とお参りをしてきますね」


皆とともに建物から出て、ユーリアと広場へ向かった。



点検はオールグリーン。ユーリアと一緒にお祈りをすませ、エテルナ・ヌイを二人で散策した。



クレイトさんはもうリヒューサへの魔力受け渡しが終わったのかドゥーアさんとともにゴーレムの増産をしているようだ。


ケリスさんはアルティナさんと歩きながら何かを話ししていた。


ゴーストたちが日の光を避けながらエテルナ・ヌイから出ていったり戻ったりしている。



レミュエーラとレヒューサはエテルナ・ヌイの空中で模擬戦闘?


じゃれあっている。



グーファスからは声をかけられた。


「いま料理を作っているんですが、お二人とも食べていかれますか?」


「ユーリア、どうする?」


「お腹減ってきてたし食べていこうー」



ユーリアに確認してからグーファスに返事を返す。


「ではお願いします」


「分かりました。もうしばらくお待ち下さい。また出来ましたら声かけますね」



さて時間を潰さなくてはならなくなった。


本来なら戦闘訓練だけど今日はケリスさんも忙しいだろうし、どうしようと考えていたらケリスさんがアルティナさんと一緒に声をかけてきた。



「本日の戦闘訓練は模擬戦闘でアルティナも参加でいいですか?」


「え、もう模擬戦闘なんて激しい動きして大丈夫なんですか?」



「はい、大丈夫だと思います」


「またマジックミサイルだけはなしの魔法ありで行いましょう。アルティナは魔法使いでしたが戦士としての腕前も持っているいわば魔法戦士みたいなものでしたので、ユーリア様やリュウトさんの参考になるかもしれません」

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