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魔王

まさか具体的なものが出てくるとは思わなかった。

しかも今キーワードになってるやつじゃないか。


って、え? 魔王って、クレイトさんもそうだったんじゃないの?

滅せられるの?


「ああ、僕が魔王と呼ばれていたというのも、魔王の如き力の持ち主という意味合いで呼ばれていただけで僕自身は魔王じゃない、はずだよ。でなければ聖王教の教会に入るとか出来ないよ」



「聖王教が何か関係あるんですか?」


「聖王教というか聖王だね。かの存在は魔王から世界を守るためにあるようだ。確か教義でもそうだったはずだよ。だから聖王には竜の守護者という面もある」


「聖王って神様みたいなものじゃないんですね」


「人間からしたら神みたいなものでもいいと思う。ただその存在理由がそうだってだけだね」


「それじゃ魔王ってなんなんですか?」



「ああ、魔王とは世界に仇なすものとされていて、宇宙からやってくる存在だ。彼らは世界を喰らい、分裂するそうだ。分裂するほど強大化した魔王は、特に大魔王とされている。以前話した不死の魔王が世界を書き換えたのも、自分が食べやすいようにしただけという話もある」



「宇宙には魔王がうじゃうじゃいそうですね、それだと」


「うじゃうじゃはいないようだ。この世界に魔王がやってきたと記録されているのは三回だけだ。

一回目は件の不死の魔王、二回目は名のない魔王。

どうやら空中で颶風竜にとどめを刺されたらしい。

三回目は狂乱の大魔王と魔王三体。不死の魔王より強いはずの大魔王もあっさり六大竜にやられたようだね」


「魔王が四体も同時に来たんですか?」



「大魔王には分裂した魔王が随伴することもあるようだね。だからその魔王たちも狂乱の魔王だったようだ。一体の魔王は人間の町まで侵入してきて町ごと海嘯竜に滅ぼされたらしい。だからもしかすると烈震の方も魔王を滅ぼすために町を巻き込んでしまったのかもしれないね」



「リヒューサさんと何処で知り合ったの?」


今まで話していた魔王とは関係のない質問をユーリアがする。

ユーリアは魔王には興味が無いようだ。



「リヒューサはだいたい二百年ほど前に僕のところにやってきたリザードマンだった。その頃僕は人里離れたところに迷宮を作って引きこもっていたんだけどね」


「何をしていたんですか?」


「世界の真理を知るための研究さ。誰にも邪魔されないようにと迷宮の奥深くに引きこもっていたんだが、どうも逆効果だったようでね。冒険者とかがそれなりの頻度でやってきていたよ。まあ僕のところにたどり着けたのは二パーティーだけだったっけどね。そのうちの一つにリヒューサはいたんだ。彼女は当時からリザードマンの英雄だったらしくてね、同じリザードマンの精鋭を引き連れて僕のところへやってきたんだ」


「へぇ元は敵だったんだね」



「敵ってほどでもないかな。彼女たちは腕試しで迷宮に挑んだだけだったらしいし。僕はその当時は魔王と言われていたけど別に悪さとかしてないしね。多少迷宮周辺の天候を操ったりはしたけどさ」


なるほど。クレイトさんに恨みがあってきたわけではなかったと。


「彼女たちは僕に破れたあと仕えたいと言い出してね。リザードマンを部下にしたらなおさら魔王と言われるかと躊躇したんだけど彼女たちの気迫に押されてね」


「それで部下にしたんですか」


「ああ、でもいろいろと役立ってくれたよ。その時は面倒にも感じたけどね。例えば死の瘴気を抑える魔法具だけどそれはこの時に作ったんだ。それまで生きている部下は、というか部下自体いなかったからね」


「リザードマンが生きている部下だったからか。それが後のユーリアにつながるんですね」


「そうさ、それがなければ僕が人間の町に行くこと自体出来なかったからね。しばらく彼女たちは迷宮にいたんだが彼女が属している部族に危機があったらしくてね。帰ることになったんだ。その時、餞別にと僕が作った杖を渡したんだけど、彼女はまだ持っていてくれたよ」


「それ以来、だったんですか?」



「ああ、そうだね。そのあとすぐに僕は人間の勇者に討たれたことにしたからね」


「え? どういうことです?」


「そのまんまさ。別れたあとに来た人間のパーティーが僕のところまで届いてね。魔王の悪名ももうこりごりだと思ったし、彼に討たれたことにした方がなにかと都合が良かったのでね。それで魔王パティルは終わりさ」


「いろいろあったんですね」


「そりゃそうさ。何百年も存在してるからね。けど僕は今が充実してるよ。世界の真理を解き明かした日を除けばね」



「その割には慕われていたような気がしますが、リヒューサから」


「それなんだけどね。僕の当時の記憶だとなかなか真理にたどり着けずにいらいらしていた気がするんだよ。彼女たちになにかよいことをやったという記憶がないんだよ。だからなんでそこまで?とは僕も思ってるよ。まあだからこそ今は力になってあげたいと思うんだけどね」


「これからどうするのー?」


「とりあえずユーリアの毎日のお勤めに僕もついていくよ。彼女に魔力を渡したいからね。魔力を渡していければ彼女はすぐに大きく強くなるよ。そうなれば彼女を生み出した部族の力にもなるはずだ。リザードマンなどの異種族は竜信仰が強いと聞くからね」



クレイトさんが立ち上がった。これで話は終わりかな。


「他になにか聞きたいことがあったかい?」


「いえ、特には」


「ないかなー」


「それじゃ僕は作業に戻るよ。君たちはどうする? 屋敷に行くなら昼ごはんを用意しておいてほしいと伝えておくよ」



「どうする、ユーリア?」


「それじゃ行こうかな」


「分かった、それじゃ細々としたことをやっておくから10分後ぐらいに僕の部屋に来るといい」


「分かりました」


「はーい」



その日はずっと屋敷で過ごして、小屋に帰ってきたのは夜だった。


「やあ、おかえり。ようやく完成したよ、新しい義体」


帰ってきたらクレイトさんが出迎えてくれて最初の言葉がこれだった。


確かに部屋の椅子に女の子が座っているように見える。ユーリアにそっくりの義体だ。


「ユーリアに似てますね」


「わたしにそっくりー?」


「ああ、わざとそうさせてもらったよ。影武者の意味も含めていたからね。けどこの義体はしばらくリヒューサの世話係にしようと今は考えている。ドゥーアさんにリヒューサの世話を頼むのはキャパを超えそうだし、専属のほうがいいだろうからね」


「そうですね、エテルナ・ヌイの住民も増えていますし、その上にドラゴンは確かに厳しいかもですね」


「リヒューサが帰ったら本来の役目をしてもらえばいいしね。リュウトには申し訳ないが明日はこれを背負ってエテルナ・ヌイへ持っていってくれるかな」


「あ、はい、いいですよ。重くはないですよね?」


「見た目よりは重いけど限度は超えていないと思う」


義体の手をとってみるクレイトさん。義体だから触れても大丈夫だと分かっているけどリアルだからビビるな、これ。


「前に義体を作ったときはドゥーアさんやケリスさんにはこちらにきてもらったからね。中に入るのが誰かまだ僕たちは知らないし、向こうで使うものだし、僕たちが持っていったほうがいいからね」


「分かりました。明日は朝から行きます? 昼からにします?」


「朝から行こー」


クレイトさんに聞いたつもりだったがユーリアが答えた。

やっぱり屋敷で遊ぶのが楽しいのかな。


そうだと嬉しいけど。遊ぶといっても畑仕事したりしてるけどさ。



次の日、義体を背負ってエテルナ・ヌイまで行く。

子供の大きさなのに大人の重さがあってびびった。

あと普通に息してたりするし鼓動もある感じだ。リアルだなぁ。


「ドゥーアさんとかの義体はプロトタイプだしコアのレベルが低いのでそこまで再現できなかったけどね。この子を作ってある程度分かったので、今度時間がある時にアップデートしてもいいかもね」


そうですね。今のこの子なら置いておいても寝てるだけって思われると思う。

ドゥーアさんのは人形が置いてある、って印象だったからなぁ。

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