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イビルコープス

うわー、なんかクレイトさん、すっげぇ悪役っぽいこと言ってる。けどクレイトさん的には実感がこもってるんだろうなぁ。


「うるさい。お前に邪魔されるいわれはないわ」


年をとったネクロマンサーが呪文を唱え始める。

女性ネクロマンサーはすぐに呪文を完成させクレイトさんに攻撃した。


白い光がクレイトさんに当たる。しかしクレイトさんはびくともせず歩みを続ける。


「そんな、対アンデッド最強の魔法よ」


女性ネクロマンサーが叫ぶ。


「長く存在したアンデッドが対策してないと思うか?」


年をとったネクロマンサーの呪文が完成した。

目の前に黒い玉が浮かぶ。

その玉はすごい勢いで周辺のゾンビたちを吸い寄せていく。


「ワシのイビルコープスに取り込んでくれるわ!」



吸い寄せられたゾンビたちがぐちゃぐちゃに融合していき、一体の巨大な人型の死体の塊となる。


そいつはゆっくりと立ち上がり、右手でクレイトさんを叩き潰そうと振り下ろす。


しかしその右手はクレイトさんに届くことなく吹き飛ぶ。


右手が吹き飛んで怯むイビルコープス。

しかしその間に足から突き出た死体が女性ネクロマンサーを捕まえて取り込もうとする。


「ひぃ、た、助け……」


女性ネクロマンサーは助けを呼ぶ声を上げきることも出来ず死体の中に吸い込まれていった。


「な、なにを? うわぁー?!」


その様子を見た年をとったネクロマンサーがイビルコープスを止めようとしたようだけど、止めるどころか崩れた右腕を振り下ろされて取り込まれてしまった。



『こいつはやばい。ユーリアを連れて逃げるんだ』


呆然と立ち尽くしてしまった。

ユーリアも同様だった。


イビルコープスは周りのゾンビたちを吸い続けている。

幸い人間には効果はないようだけど、ネクロマンサーのように狙われたらやばい。

あんなの防ぎようがないので、急いでユーリアの手を引いて走って後ろに逃げる。


「ディスインテグレイト」


クレイトさんがイビルコープスに魔法を放つ。クレイトさんから小さい何かが飛んでいき、イビルコープスに命中するが、命中したところがぽろりと取れただけだった。


「群体扱いか」


クレイトさんは下がらずその場で魔法を使い続けている。


「デトネーション」


イビルコープスの目の前で強烈な爆発が起こる。逃げたこっちまで爆発の衝撃波が飛んでくるほどだ。その一撃はイビルコープスの体をえぐり取るが、トドメにはならなかったようで、みるみるその損失が埋まっていく。

同時にえぐれた箇所のゾンビたちが苦しみの声を上げ始める。


「こいつはとんでもない」



「おとーさん、大丈夫かな?」


「クレイトさんに限って負けるなんてことはないとは思うけどね」


『こいつはひどいな。奴は怨念の塊になってしまっている。僕であればその体を滅ぼしつくすことは出来るが、怨念はどうしようもない』


「リュウト、私、浄化してくる。手伝って!」


「どうすればいい?」


「浄化する時は私、動けなくなるから、近くにいて!」


『ああ、そうしてやってくれリュウト。この怨念をなんとかしないとエテルナ・ヌイは当然としてこの周囲の国に悪影響すら与えかねない。だからもったいないけどユーリアの浄化の力を使ってもらいたい』


「わかった、いこう!」


俺はユーリアと手をつないだままクレイトさんの方へ走っていく。すでに大巨人の姿となっているイビルコープスがクレイトさんを乗り越えてこちらに手を伸ばそうとする。



『君たちには指一本触れさせはしないさ』


「プロミネンス」


伸ばそうとした手を地面から吹き上がった凄まじい炎が飲み込む。イビルコープスは慌てて手を引っ込める。しかし吹き上がった炎はそのまま上からイビルコープスに襲いかかり、イビルコープスは全身を炎に包まれる。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


体を焼かれたイビルコープスの構成要素となっているゾンビたちが苦しみ悶える声を上げる。


これは確かに、このまま滅してもこの多くの死体たちは恨みを残しそうだ。


それは容易に呪いとなる。


クレイトさんの近くまできた。ユーリアが止まったので手を離し、俺もユーリアの横に仁王立ちする。


せっかくの片手剣だし、今度ケリスさんに盾の使い方を教えてもらおう。

今の俺にはそれがあってる装備な気がする。今は盾がないので剣を構える。


横が光りだしたので少し横を見ると、ユーリアが祈りの姿勢のまま全身が輝きだしていた。

ユーリアを中心として白い光が溢れ出す。


その光は俺を包み込み、クレイトさんも包み込まれ、そして巨大なイビルコープスをも包んでいく。


そして光が爆発した、気がした。



辺りは静かになっていた。今までずっと聞こえていたゾンビたちの呻き声は聞こえない。


ユーリアの方を見ると、祈りの姿勢のままだったが不意に倒れそうになったので慌てて支える。


ユーリアは気絶してしまったようだ。

剣を収めユーリアをお姫様だっこする。


クレイトさんも立ち尽くしている。

そういやクレイトさんも巻き込まれてたけど、これで呪いが解けて昇天?


『残念ながらそうも行かなくてね』


あ、念話が届いた。クレイトさんは健在か。正直助かった。今クレイトさんに昇天されてしまうと、いろいろと困る。


『けど君にかけたギアスは解けてしまったね。まあもうかけ直す必要性も感じないが』


イビルコープスはどうなったんだろう? いたあたりを見ると、多数の様々な種族の死体が積み重なっていた。

その中に女性ネクロマンサーや年をとったネクロマンサーの死体も見つけられた。


やっぱり死んじゃってたか。まああんなのに取り込まれて生きてるわけないか。



確認できたのでユーリアを連れてクレイトさんとエテルナ・ヌイに戻る。


いつもの建物に入ってユーリアを下ろす。


エテルナ・ヌイには寝る場所がないので仕方なく地べたにおろして座らせた。地べたで寝かして体温奪われるままにするのもあれと思ったので。



「ユーリアはどうしたんですか?」


クレイトさんはいつの間にかいつもの人間の姿に戻っていた。


「おそらく力を全開放したからだろう。たぶん魔力も同時に使うのだろう。最初に使った時も発動時に気絶したみたいだしね。やはりなるべく使わないほうがいいな」


ドゥーアさんが飛んできた。


「報告します。戦闘不能になったものはゴースト2、スペクター1、どれも復帰は可能です。ユーリア様の浄化に巻き込まれたものはいません。事前にクレイト様に下がるよう指示していただいたおかげです。ゴーレムもそうとう傷ついてはいますが自動修復でなんとかなる損害のようです」


「そうか、ドゥーア殿こそ大丈夫かね?」


「はい、私めはゆっくり休ませてさえいただければなんとでも。あとケリスが戻ってきましたが、残念ながら巨人とハーピーは逃したとのこと。申し訳ありません」



「かまわんよ、そいつらは僕と直接やりあってないからね。ただ懸念は残るね」


「そうですな。そういえばあの大量のオークどもの死体、どうしましょ? 前にスライムイーターが現れたのでスライム不足かもしれません」


「ユーリアの解呪を受けてるからあれらが再び自然にゾンビ化することはないし時間かけて吸収してもらうしかないね。けど腐ってくると臭うだろうし、ここらのスライムにも活性化の手法を取ろうか」


俺もそれに賛同する。


「それがいいかもですね。またスライムイーターが現れたら、もう素材が現れたと思って処理するしかないですね」


「それもそうだね」


「ところで捕まえたネクロマンサー、どうするんですか?」


「ラカハイの衛兵に突き出すのも面倒だし、開放しようと思う」


「え? 野放しにするんですか?」


「そこで、やつにはギアスをかけておこうかと。ネクロマンシーを使ってはならない、とね」


「なるほど、クレイトさんのギアスをユーリア以外が解けるとも思えませんし、いいかもしれませんね」


クレイトさんがネクロマンサーを閉じ込めている建物へ入り、ネクロマンサーを連れて出てきた。相変わらずロープで縛られているものの、何か喚いている。

クレイトさんの表情はうんざりげだった。


クレイトさんがいやそうだったので俺がロープの端を掴む。



『エテルナ・ヌイの敷地を出るよ』


クレイトさんがすたすたとライトの魔法で明るくなっている東門へ向かったので俺もロープを引っ張りつつ、付いて行く。


なんかいろいろ喚いているけど、何を言ってるのかすら聞き取れない。門から連れて出たところでクレイトさんが止まった。もちろん俺も止まる。ネクロマンサーも止まる。


「早く俺様を開放しやがれ」


あ、聞き取れた。相変わらずこんな状況でも俺様なんだ、こいつ。どうしようもなさげだな。


「ああ、開放してあげるよ。ギアスをかけてからね」


「なんだと! 俺様を縛る気か!」


「今も縛られてるでしょうが。抵抗したかったら抵抗してもいいよ、出来るものならね」


まー無理だろうな。クレイトさんに魔力で敵う存在がそこらにいるとも思えない。


「くそっ! 何を縛る気だ!」


「情けで教えてあげましょう。ネクロマンシーですよ」


「や、やめろー。ネクロマンシーが使えなきゃ俺なんかただの三流魔法使いじゃねぇか!」


「よく分かっているじゃないか。ギアス!」


別に何のエフェクトも効果音もないが無事にかかったようだ。ネクロマンサーにはご愁傷様だけど。


「さて、ネクロマンシーを封じたからあとは好きにしていいよ。何処に行きたい?」


「絶対復讐してやるからな! 俺をここで殺さなかったことを後悔させてやる!」


「ほう、では今ここで殺しましょうか?」


「え? いや、それは……」


本当にバカなんだな。いつ殺されてもおかしくない状況なのに悪態つくとか。

確かにこんなやつを殺して手を汚したくないわな。


「そうですか、今殺されるのもいやと。しかし私も復讐されるのも後悔することになるのも嫌ですので、もう貴方と会わないようにします」


「え? それはどういう……」


クレイトさんがネクロマンサーが何か言い終わる前に呪文を唱えた。


ふっと、ネクロマンサーが目の前から消えて縛っていたロープがボトリと落ちた。


「え? 奴はどうなったんですか? まさか存在そのものを消したとか?」


「そんな大げさなことはしないよ。強制転移させただけさ。少なくともこの大陸ではないどこかへね」


うへ、ランダムテレポートか。運が良ければ生き延びるだろうけど、帰ってくるのは自分も転移を使えないと無理だろうな。でも自分で三流って言ってたし。

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