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防衛戦

俺たちはリザードマンを監禁していた家に入った。


リザードマンたちはおとなしく座っていた。

表情はさすがにとかげだから分からないけど、諦めている風にも見える。


「ある程度察してはいるが、お前たちはなぜあいつと共にここに攻めてきた?」


クレイトさんがよくわからない言葉でリザードマンに話しかける。同時に念話で自分が喋ったことと、リザードマンの返事も翻訳してくれた。


「あいつらが俺たちの村を襲った。言うことを聞かなければ殺す、と。オーク共も同じだったようだ」


「あの男以外にどんな奴がいた?」


「人間の年を取ったオスと若いメス、大きなオス、ハーピーがいた。他はオークだった。あいつらは死体をゾンビにした」


「あいつらに復讐したいか?」


「復讐したいがダメだ。子どもやメス、卵を人質にされている」


「そうか。では事が終わるまでお前たちはここに居てほしい。食べ物は出そう。何を食べる?」


「人間の食べ物はあまり食えない。木の実か生の魚、肉があればそれがいい」


「塩漬けの魚や肉はだめか?」


「ダメだ、食べたやつがいたが苦しんだ」


「すぐに用意できそうにない」


「水だけでいい。三日ぐらいなら耐える」


「わかった。水なら今すぐ用意しよう」



この部屋にあった壺にクリエイトウォーターで水を入れ、ピュリフィケーションで水を綺麗にした。


「奴らがまた来るようだ。だからまだ開放するわけにはいかない。しばらくここにいてもらう」


「分かった。抵抗はしない。だが奴らと戦うことも出来ない。俺たちはここにいる」


おとなしかった。ドゥーアさんの力を借りるまでもなかったようだ。


「彼らの食料を手配しておくよ。ラカハイで生魚は難しいだろうから木の実と生肉でいいか」


念話でジャービスさんに食料の確保を頼んだようだ。


「それじゃ俺たちは休憩しておきますね。何もしてませんが気疲れしました」


「ああ、ユーリアとともに休んでおいてくれ。食べ物は幸い僕の懐に入っているから食べたくなったら言ってくれ」


「はい、分かりました」


初めてドゥーアさんと会った建物でユーリアと休憩することにした。



「ん? あれ?」


いつの間にか寝てしまっていたようだ。近くの椅子にユーリアが座っていた。


「あ、起きた? まだ夜だけどね。そろそろ来そうだっておとーさん言ってたよ。ご飯あるから食べてね」


テーブルの上に乾パンと干し肉が置いてあった。ちょうど腹が減ってたんでありがたい。


「クレイトさんなにか言ってた?」


「んー、疲れているようだから寝かしておきなさいとか、その程度。あとこんな危険なことに巻き込んで申し訳ないとか。そんなのいいのにね」


ユーリアはちょっと寂しそうな顔をしていた。


「まあ出来れば危険な目にあわせたくないと思うのは当然さ。謝るかは別にして」


「でもわたし、おとーさんと会ってなかったらずっと孤児のままだった。それにみんなも。リュウトとだって会ってないよ。だから危険なのは仕方ないの。自分の持ってる力のせいだしね、元はといえば」


そうかもな。

ユーリアが持ってる力は、あのネクロマンサーとか自然発生するゾンビとか見たら、かけがえのないものだろう。

クレイトさんに会ってなかったらいまよりずっとひどいことになっていても不思議ではない。

だからこそクレイトさんはユーリアにも身を護る力を身につけさせているし、俺をユーリアの近くに置いている。


ここでの俺の役割はユーリアを守ることだ。

次はさっきよりずっと危険だろう。


覚悟を決めないと。


それこそ人間は殺せないとか言ってる場合じゃないかもしれない。

人間であってもネクロマンサーはその人間、人間以外も踏みにじる存在のようだし。


「よし、ゆっくり休んだし、そろそろクレイトさんのところに行くか」


食べ終えたのでユーリアと一緒にクレイトさんに合流することにした。



クレイトさんは広場にいた。


「やあ、起きたかい?」


「はい、ありがとうございます。おかげさまですっきりしました」


「ユーリア、リュウト、これをつけておいてくれないか?」


クレイトさんが差し出したのは首飾り? それが二つだ。


「特別な護符だよ。僕の力に対する抵抗力を極限まで高める。もし本気を出すことがあったら人間である君たちを巻き込んでしまうかもしれないからね。この護符があればそれから守ってくれるはずだけど、なるべく悟ったら離れてほしい」


うわ、クレイトさんも覚悟を決めてる感じだ。


「はい、分かりました。さっそくつけておきます」


自分の分は自分でつけて、ユーリアの分はつけてあげた。


「そろそろきそうだ。相手にハーピーがいるから空も気をつけてほしい」


ハーピーって顔と上半身が女性の鳥だっけ?


空を飛ぶ敵か。弓矢があればそれで対処なんだろうけど、使える人いないしな。

魔法しかないって感じか。空にファイアーボールとかはナンセンスだよな。どこで爆発するか決めれたら別だけど。マジックミサイルしかないな。


今のエテルナ・ヌイ内は、あちこちにライトの魔法がかけられていて、不夜城と化していた。


ん? 今空に影が見えた気がしたぞ。ゴーストかと思ったけど白くはなかった。念の為ライトを飛ばしてみるか。


ライトを唱えて光を影が見えた気がした空へ飛ばした。なんか大きな鳥が滑空してるように見えた。羽ばたいている音がしない、フクロウかな?


クレイトさんがいきなりフクロウに向けてマジックミサイルを放つ。為す術なくフクロウは落ちてきた。


「フクロウは使い魔の可能性がある。この辺にフクロウとか森に行かないといないしね。今のこのエテルナ・ヌイを飛ぶのは怪しい」


落ちてきたフクロウを見てみる。さすがに絶命していた。足に赤いリボンがつけられていた。


「確定だね。使い魔だ。警備体制を空から見られたな。使い魔は主人と感覚を共有しているから今ので主人もダメージを受けているはずだ」


そうなんだ。次のやつはやっぱり慎重というか偵察をしてくるとか分かってる奴っぽいですね。


「そうだね、気をつけないと」


警備体制を見られたのを前提に考えないといけないか。今は東門を重点に警備してるけど、そこを避けて入ってくる可能性もあるってことか。


「東のゴーレムを下げようか。すぐにどこに来ても向かえるように。代わりにスペクターを何名か配置してもらおう。まあスペクターでは壁にならないから見張りみたいなものだな」



「ゴーレムたちは広場まで下げるのがいいかもですね。広場ならどこへ向かうにも最短だろうし。重要な場所だし」


「そうだね、採用しよう」


周りにはドゥーアさんもケリスさんもいないから、たぶん念話で指示しているのだろう。


「今ドゥーア殿は東に、ケリス殿は南にいるよ」


「西にくることはまずないだろうし、あとは北ですか。俺らは北に行きますね」


「そうだね、周辺にもゴーストを飛ばしているし、それを迂回して西からなんて器用な真似はゾンビにはできないだろう。では北をよろしく。戦わなくてもいいからね。ゴーレムが来るのを待つんだ。僕は広場にいるよ」


「ええ、分かりました。ユーリアはどっちにいる?」


「リュウトについてく」


「そっか、お互い無茶はしないようにな」



北門へ走っていく。門の周りにはゴーストが何体か見えた。スペクターも一体確認できたけどスペクターだから他にもいそうだ。


『東でゾンビの集団が見つかった。……ん? 北でもゾンビの集団を発見。やつら二手に分かれたようだ。すぐにそっちに向かえないかもしれない。ゴーレムは二体送る。気をつけておくれ』


どうやら来たようだ。北門は完全に壊れているから門で足止めは出来ないし、エテルナ・ヌイ敷地内で迎撃することになってるので待ち受ける。


ゾンビたちが門をくぐってきた。その途端、地面が爆発した。入ってきたゾンビが多数巻き込まれて吹き飛ぶ。


「魔法の罠を仕掛けたっておとーさん言ってた」



地雷みたいな魔法かな?

ともかくそのおかげでだいぶ時間稼ぎできたようだ。

ゾンビたちが地雷を恐れるわけがないけど、ネクロマンサーが慎重になって進軍を遅くしたようだ。


門の近くで何度か爆発が起きるが巻き込まれるゾンビの数が最初よりずっと少ない。突撃させてこない慎重な相手か、いやだなぁ。


進軍が遅くなったおかげでゴーレムたちが間に合った。

ゴーレムたちは門まで前進せず、門の手前の広場に続く大通りに陣取った。


この位置はいいな。


殺到してくるゾンビたちに範囲魔法を打てる。


「よし、ユーリア、移動するぞ。ゴーレムの後ろじゃ範囲魔法が打てないから横に行くぞ」


一体のスペクターが門の右側に移動していったのが見えたので俺たちは左側へ移動した。


「ここらでいいか。ここならゴーレムにも向こうのスペクターにも当たらないし、向こうのスペクターの邪魔にもならないだろう」


この位置から固定砲台だ。俺はライトニングで後ろのやつにもダメージを与えていき、ユーリアのファイアボールで突出してきたゾンビを焼き尽くす。

打ち漏らしは俺たちの後ろにきたゴーストたちがマジックミサイルで落としていってくれた。


ゴーレムたちまでたどり着けるゾンビがだいぶと減るのでゴーレムたちの壁がだいぶ機能していた。


もちろん俺たちやスペクターの方へ流れていくゾンビも増えるがそいつらは優先して落としていっている。


順調だ、ゾンビたちは入ってこれない。このまま殲滅できたらいいな。と、思っていたがさすがにそうはうまく行かなかった。

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