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お風呂

「シムーン、お前もついていくといい。採用されるにしろされないにしろ、この方達は優良なお客様だしな。毛布もあるから持っていくがいい。お前たち、手を空けれるものはいるか?」


「へい、親方。俺は少しぐらいならいけますぜ」


カムシンさんが作業をしていた職人一人を呼びつけて何か言っていた。呼びつけられた職人は奥に入っていって新品の毛布らしきものを複数抱えて戻ってきた。


「すまんがシムーンとともにそれを持ってついて行ってやってほしい」


「へい、親方。分かりました」


どうも新品の毛布もくれるようだ。


「手桶は二つありましたので二つでよろしいですか?」


「二つもあれば事足りるかと。ありがとうございます」



行くときは二人だったのに帰りは四人に増えていた。他にも細々としたものをもらってしまったので皆手がふさがっている。クレイトさんが玄関を開けてくれて助かったよ。


荷物を適当に広間に置いていく。他の三人も同じように置いていく。子どもたちは何故か部屋の隅に固まって座っていた。広すぎるのかな? クレイトさんは部屋の天井の真ん中らへんにライトをおいて、付かず離れずの位置で座って本を読んでいたようだ。


「女の子もいますね。わたしがお風呂の入り方を彼女たちに教えましょうか?」



シムーンさんが提案してくれた。それは願ってもないことだけどいいのかな?


「いいんですか? 正直ユーリアにもその知識がないので助かります」


「ええ、せっかくのお湯を汚しちゃったらたいへんでしょうからね」


「それじゃお願いします。ユーリアは準備室にいます」


「私たちが先でいいんですか? 男の子たちはどうします? リュウトさんがお先に入りますか?」


「いえ、シムーンさんが先のほうがいいでしょう。別件で来てくれただけですし」


「じゃあワシがユーリアと変わってくるよ」


ジャービスさんが申し出てくれる。


さっそくシムーンさんはまず帰ってきたユーリアに声をかけて、子どもたちのところへいって自己紹介とかはじめて女の子だけ連れ出した。


「では手桶とタオル、持っていきますね」


「ええ、どうぞ。よろしくです」


ユーリアに先導されてシムーンさんがフィオナの手をつないで歩いていく。フィオナはレイーネと手をつないでいた。


さて女性陣が風呂に入ってる間はどうしようか?


「リュウトさん、少しよろしいですか?」


シムーンさんについてきた職人さんに話しかけられた。


「あ、はい、なんでしょう?」


「俺トニーっていいますが、親方から屋敷の寸法見てこいと言われていまして、案内頼んでいいですか?」


「ああ、その件ですか。了解です。案内というかついていきますよ。自由に見て回ってください。俺がライトの魔法使ます。あ、もちろん今使用中のお風呂と、二階は入れませんが」


「分かりました。では調べさせてもらいますね」


トニーさんは一階の部屋をくまなく見て回った。寸法を測ることもあったけどメモとかとらない。記憶してるのかな?

すげぇな。


まあ紙とか鉛筆とかがなかったり高価だったりしたらこういうのでメモとか取れないのかもな。

とてもテキパキ動いていて職人さんはすごいなと改めて思った。


「ありがとうございました。だいたい分かりました。風呂場はお嬢様が上がってから調べていいですか?」


「そうですね、次に男の子たちが入るので、短い時間になりますが」


「はい、それでかまいません」


広間に戻って一休みしてると、女性陣が風呂から上がってきた。

シムーンさんとユーリアは変わってないけど、フィオナとレイーネの服装が変わっていた。えらく可愛らしい、ユーリアみたいな服になっていた。


「あがりましたー。要領がいいのか教えやすかったですよ」


シムーンさんが声をかけてきた。風呂上がりの美人とか反則だろ。俺もトニーさんも見とれてしまった。



「そうですか。それはよかった。ところで二人の服装が変わってる気がするんですが」


「ええ、前の服は汚れていたので。家から私のお古と妹のものを持ってきました。サイズがややあってないでしょうけど、せっかくお風呂に入ったんですしね。女の子ですもの」


ああ、やっぱり気が利くというかすごいな、としか言えない。俺は着替えのことなんか完全に失念してたよ。


「そうなんですね、ありがとうございます」


「お風呂ってすごく気持ちいいんだね」


ユーリアが火照った顔でそんな感想を言う。今まで入ったことなかったんだろうな。もっと早くにやってやればよかったかな。


「トニーさん、行きましょうか」


トニーさんをつれて風呂場へ向かって寸法を測ってもらった。



「お嬢様お待たせしました。帰りましょう」


トニーさんがシムーンさんに声をかける。


「えー、私ここに泊まる気満々だったんですけど」


「そんなこと言っても、まだ準備が出来てないんですから迷惑なだけですよ。親方も帰ってこいみたいな感じでしたし。だから俺をつけたんでしょうし」


シムーンさんに助け舟を出そうかとも思ったけど、迷惑ではないけど準備が整ってないのも確かだ。


「おとーさんは大事にしないとだめだよ」


ユーリアがシムーンにそんな事を言う。フィオナとレイーネも同意見のようだ。


「はー、それもそうね。また遊びに来るわ」


ずいぶんと仲良くなったものだ。


そういえばもう外は真っ暗だけど明かりはあるんだろうか? なければシムーンさんの持ち物とかにライトをかけないと、と思って聞いてみたら、シムーンさんもライトが使えるそうだ。


屋敷の外までシムーンさんとトニーさんを見送ってから、孤児の男性陣に声を掛ける。


「よし、じゃあ今度は俺らも風呂に入ろうか」


着替えはないけど仕方ないだろう。俺も貸せるほど持ってないし。


男の子たちを連れて風呂場へ向かう。とその前に準備室?みたいなところにいるジャービスさんに挨拶しに行った。


「ジャービスさん、風呂の管理ありがとうございます。これからこの子たちを入れます」


釜の前で座っていたジャービスさんが手を挙げる。


「おー、こっちは任せてゆっくり浸かってきてください」


「ありがとうございます、よろしくお願いします」


俺がジャービスさんに礼を言うと、男の子たちも俺の真似をしてか礼を言った。


あー、これからはこの子達の手本にならないといけないんだな、と思った。



久々に風呂を堪能した。

やっぱり風呂はいいな。

けどあれだけ大きいと水の入れ替えもピュリフィケーションもたいへんそうだ。

クレイトさんに頼まないといけないのなら頻繁には入れないな。

薪もすごく使うだろうし。


あー、持ってきた薪もこれで使い切っただろうし、買わないといけないな。小屋の分をあまり減らすのもまずいし。


男の子たちはずいぶん素直で俺の言うことをちゃんと聞いてくれた。ただ小さなルクスはずっと見張ってないといけなかったな。まあ仕方ない。


せっかくきれいになったのに今までの服を着させないといけないのは罪悪感を感じた。

早いとこ服を用意しないと。そういえば募集に来た人に衣服の露店の人がいたし、その人に頼んだらいいかな。

あの人は雇えなさそうだけど、そういうつながりは残しておいてもいいだろうし。

あーコーヒー牛乳が飲みたい。

……紅茶はあったけどコーヒーはないのかな? まあまだ牛乳も見たことないけどさ。



「もう寝るかい?」


クレイトさんが子どもたちに聞いた。子どもたちは慣れない風呂で疲れたのかもうかなり眠そうだ。


「はい、そろそろ眠いです」


「そうか、じゃあ僕たちは二階に上がるからもう寝なさい。毛布は人数分あるかい? なかったら申し訳ないけど一緒にくるまってほしい。ライトは消すかい?」


「いえ、明るいほうが安心できます」


「……そうか、ではそのまま朝までつきっぱなしにしておくよ。そうだアエラス、君に代表してこれを渡しておくよ」


そういって俺らと同じ鉄の指輪をアエラスに渡した。


「これは?」


「それを常につけておいてほしい。もし何かあったらその指輪が僕を呼んでくれる魔法の指輪さ」


「そんなもの、俺にいいんですか」


「もちろんだ、今は一個しかないから代表して君に渡すけど、いずれ皆にも渡すつもりさ」


「ありがとうございます」


「いつでも僕が駆けつけるからね、安心して寝るといいよ」


「はい、おやすみなさい」


クレイトさんは手を上げて挨拶に変えた。


クレイトさんに続いて俺やユーリア、ジャービスさんが二階に上がる。

ジャービスさんはいったん自宅に帰るけど、ちょっとした打ち合わせを小屋でしようということになった。

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