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親になるということ

「ディメンジョナルロック」


急にクレイトさんの声が聞こえた。いつの間にかクレイトさんが俺の後ろに立っていた。


「おとーさん飛んできた」


ユーリアが教えてくれた。先程のは魔法だろうか?


「ああ、転移を阻止する魔法だよ。奴は移動にそれを使うようだからね。逃したくないんだ」


ドゥーアさんもクレイトさんが来たのを気づいて声をかけてくる。


「クレイト様、申し訳ありません。我らでは能力不足だったようで……」


「構わないさ。こんな高位のものが出てくるなんて思わないしさ」


「先程のはやつの移動を止める魔法でしたな? ならば、ライトニングバインド」


スライムイーターが雷で編まれた網に絡め取られる。



「マジックミサイル」


クレイトさんが使ったマジックミサイルは十発も飛んでいった。

しかも一発一発の威力がとんでもなかった。

当たるたびにスライムイーターの体が弾け飛んでいくという感じで。

雷の網の隙間から触手を伸ばしていたがこちらまでは届かずのたうち回っているだけだった。


クレイトさんが再び唱えたマジックミサイルでスライムイーターはあっさりとどめを刺されたようだ。

触手がすべて地面に垂れ、本体の動きも止まった。



「スライムイーターに罪はないが、少々目当てがあってね」


クレイトさんがスライムイーターだったものに近づいていく。

スライムイーターだったものに絡みついていた雷の網は効果時間が過ぎたのか消えていた。

クレイトさんはスライムイーターの体に手を突っ込んで何かを引き抜いた。すると一気にスライムイーターの体が溶けて消えていった。


「スライムイーターのコアだよ。これが欲しかったんだ。しかもかなり高位のものだしね」


あんなのに手を突っ込んで大丈夫なのかな?とも思ったけど、本来は骨だから大丈夫なのか。


俺たちに見せてくれたのは黒い宝石みたいなものだった。



「別にスライムイーターのものでなくても良いのだけど、この高位のコアがあれば義体を作れるんだ」


「おお?!」


よく分かっていないユーリア以外が声を上げる。もちろん俺も。ということは。


「義体を増やせるってことですね。便利なら増やせばいいのにとは思ってました。作ること自体が難しかったんですね、主に材料のせいで」


「そうなんだよ。僕でもなかなかコアを得るのは難しくてね。手持ちは二個しかなかったんだ。しかもこれより質はだいぶ下がるものしかね」


「ということは次の義体に入るものを選抜しないといけませんな?」


「そうだね、ドゥーア殿に頼んでもいいかな? 今度作る義体はユーリアぐらいの大きさの女性型にしようと思っているんだ。それに合う人を探してくれませんか?」


「分かりました。女性型になるのでしたら元女性の方がよろしいですな。検討してみます」



戦闘が終わったのでスペクターやゴーストたちも元の持ち場に戻っていっているようだ。クレイトさんはドゥーアさんと義体に関して何か話をしている。


「さて、お時間を取らせてしまいました。本日は用事があるのでしたね。ですから今日も訓練はなしということで」


ユーリアは結界と封印の状態を見ている。へんなのが近づいてきたから影響が出ていないとも限らない。と思ったけど問題なかったようですぐにチェックは終わった。そのあとお墓に祈りを捧げて今日のお勤めは終わりだ。


「さあ、帰ろうか」


クレイトさんも会話が終わったようで、こちらにきた。


「なぜ女性型の義体なんですか?」


「ああ、それは常にユーリアの近くにいても自然な義体があればいいかな、と思ってね」


なるほど。それにユーリア程度の大きさの子なら相手も油断するということか。義体を任せるのだから能力のある人だろうし。ドゥーアさんやケリスさんを見ていればそう思う。



小屋に戻ったあと顔を洗って、面接に備える。さすがに体を拭いている時間はない。


屋敷に三人で転移門を使って移動する。


ちょっと外で声が聞こえる。これもう人が待ってそうだ。

一階の玄関からつながってる広間に腰掛けを並べる。

あんまり中に入れるのもあれだし、内装まだ全然だからここでいいか、と。

クレイトさんとユーリアには座って待っているように言って、玄関をあけると子供たちが何人かと少しばかりの大人が見えた。その大人の中にジャービスさんがいたので声をかける。


「こんにちは。お待たせしました」


「おう、リュウトさんや、待ってたぜ。子供と大人、どっちからにする?」


「……どっちからの方が都合いいですかね?」


「大人からの方がクレイトさんの都合よくないかね。どんな人材がいるか分かったら子供も扱いやすいかもしれない」


大人の方を見てみると見知った顔が多かった。黄昏の漂流者の面々がいるじゃないか。え? 冒険者やめてうちにくるの? とその場で聞きたくなったが、こっちは一応面接する側だし、自重した。



「それでは大人の方から面接させていただきます。順番にここに到着した方からお入りください」


そういって、玄関の扉を開けっ放しにして戻った。真ん中にクレイトさんが腰掛け、その左にユーリアが腰掛けていたので右側に腰掛ける。


すぐに一番手が入ってきた。黄昏の漂流者の四人だった。


「おや、あなた達は」


クレイトさんが黄昏の漂流者の四人に声を掛ける。


「ご無沙汰しておりました、クレイトさん。本日はこちらで孤児院を開かれるということでお役に立てないかと来させていただきました」


「ええ、あなた方が来てくださるのはたいへんありがたいのですが、せっかく名声のある冒険者ですのによろしいのですか?」


「はい、そのへんについても説明させてください。まずご存知の通り、冒険者は一生出来るものではありません。いつか引退しなければならないものです。ただ冒険者はごろつきと変わらないという風評がありますし、確かにそう思われても仕方ない面もあります。そこに私達を知るクレイトさんがまっとうな職に携わる人を募集している、と知り決断のときだと」


「なるほど、筋は通ってます。が、まっとうな職と言ってくださっていますがつぶしは効かないですよ?」


「いえ、クレイトさんが考えている以上に意義のある職だと私は考えています。幸い私達には冒険者としての名声もある状態です。このまま孤児院の関係者になれれば名声は更に上がるものと考えています。幸い蓄えもそれなりにありますので、名声を維持できればつぶしは効くことでしょう」


「なるほど、将来も見据えていらっしゃる、と。しかしまだ弱い気もします。実際まだまだ冒険者として稼げるでしょう?」



「はい、そこなんです。実は冒険者を続けるには難しい事態になっておりまして……」


「お聞かせいただいてよろしいですか?」


「実は、ここのロメイが私の子を授かっていることが分かりまして……」


おやおや、そうなのか。これは仕方ないし、力になってあげたい気もする。


「是非とも雇っていただきたいのは私一人なのです。ロメイは妊娠しておりますので、しばらく後どうしても休まないといけないでしょうし、ビルデアとモーガンはまだ冒険者を続ける道もあります。しかし私は、我が子を見る前に冒険で命を落とすのは避けたいのです」


「なるほど、納得しました。親として当然の考えかと思います。ちなみにアレックスさんは警備をお望みですか?」


「はい、私ができそうなことは今は警備だと思います。が将来的には運営にも携わりたいです。ジャービスさんを尊敬しておりましたし」


ほう、確かにパーティーの交渉役だったというアレックスさんなら運営とか出来るようになりそうだ。それにジャービスさんについていくというのは今後もやりやすそうだし。


『リュウトはアレックス殿を雇うのに賛成のようだね』


はい、そうですね、今の所断る理由もないですしね。


『ユーリアはもちろん賛成だしね。参考にするよ。他に何か聞いておきたいことがあったら言ってくれ』


特にないですね。他の三人が気になります。



「アレックスさんは分かりました。ロメイさんとビルデアさん、モーガンさんはどうでしょうか?」


まずロメイさんが答えた。


「はい、私は魔法使いですので雑事が出来ると思います。また魔法教師の免状も持っておりますので孤児たちの魔法関連を見ることも他の魔法教師に頼むより楽かと思います。ただ妊娠しておりますので力仕事などはなかなか手伝えないかもですし、生む時しばらくは動けなくなると思います。もしよければ生んだ後はその子をここで一緒に育てたいです」


おお、魔法教師! これはポイント高いのでは? それに職場で育てることが出来るところとか他にはないだろうし、これ断ったらロメイさん孤独になりそうだ。

確かにしばらく動けなくなるのはマイナスかもしれないけど、そんな事言いだしたら女性雇えなくなるしな。俺の元の世界にも産休とかあったんだし。

それにアレックスさんを採用してロメイさんを落とすとかしたらアレックスさんのモチベーションがやばそうだ。逆にセットで採用したら爆上げ間違いなしだろう。


『僕もだいたい同意見だね』



次はビルデアさんだ。


「はっきり言うと俺はどっちでもいい。アレックスとロメイがいるならやりやすそうだなってところだ。しかもクレイトさんのところだしな。俺を雇ってくれるならまあ警備と、あと料理番ぐらいかな。もし数が足りなかったらってところかな」


かなり謙遜してるけどビルデアさんはだいぶと役立つと思う。それに子供の扱いとかうまそうだし。



続けてモーガンさん。


「僕もどっちでもいい。でもたぶん僕はあまり役に立てない。もし怪我をしたら治せるけど。他に得意なことは町ではあまり役に立たない」


ここでビルデアさんが補足を入れてきた。


「あ、すまねぇが俺とモーガンはセットで考えてほしい。モーガンはここがだめだったら冒険者を続ける気でいるみたいだからさ。俺もついていってやりたい」



ビルデアさんは本当に仲間思いだな。……まあそれだけじゃないだろうけど。

鈍感と言われた俺でも気づくわこんなの。

しかしこれは少々悩むな。

自分で言ってるけどモーガンさんに売りがあまりない。

けど黄昏の漂流者が全員揃うのもプラスだと思うし。うーん。



『何に気づいたのかわからないけど、確かにこの二人は悩むね。他の候補者を見てからかな、判断は』


そうですね、決して悪くはないと思いますが。


「わかりました。ありがとうございました。結果については一週間以内に伝令で伝えさせてもらいますので、その期間はこの町にいてください」


「はい、分かりました。まあしばらくこの町から出る気はありませんので。よろしくご検討お願いいたします」


そういって黄昏の漂流者たちは屋敷を出ていった。


あ、椅子をすすめるの忘れてた。でもまあ椅子は二つしかないのに四人いたしな。

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